みちしるべ

自動車業界の土日操業で苦戦

「持たざる経営」進め飛躍へ

大光社長

金森 武氏

(日経新聞201192112版新興・中小企業面)

【記事抜粋】

▽…「自動車業界の土日操業は当社にはマイナス要因」と苦笑するのは中部圏を地盤に業務用食材スーパー「アミカ」を展開する大光の金森武社長。

土日は弁当を持参する工員が増えて工場給食向けの食材需要が減り、得意先の外食産業も週末の来店客数が振るわないためという。

(以下略)

 

【コメント】

自動車業界の土日操業は、東日本大震災によって東京電力の福島第一原子力発電所が停止し、これによって電力供給量が大幅に減少したことから、ピーク時の電力需要を抑制する手段として、平日の操業を停止した代わりに実施されたものです。

稼動日が平日から週末に移動すれば、電力需要のピークがずれるだけで、その他人間活動の営みに大きな変化はないと思ったところ、この記事の取材対象となった会社にとっては、平日よりも売上の機会が減ってしまったとのことです。

 

この会社も今回のような需要の変動に対応するため、固定費のかかる物流を外注に委託することで「変動費化」することを検討しています。

同様に、この会社の売上に関連の深い取引先も、「持たざる経営」によって環境に対する適応力を強化しています。

たとえば、この会社にとっての「メシの種」は、自動車業界などメーカーの工場などで供給される給食や社員食堂で使用される食材の提供です。

一方、自動車メーカーでは給食や食堂の運営を外注に委託するケースが増えています。

土日操業は「電力使用制限令」という国のルールに基づいたものとはいえ、つまるところ自動車メーカー側の「都合」による変則的な稼動であるため、委託契約によっては給食や食堂運営のコストに「割増料金」が課されることも懸念されます。

そのような場合、生産ラインは稼動させても食堂は開けないことで、平常どおりのコストを維持することが当然の取り組みとなるでしょう。

また、工場周辺の飲食店も、家族経営の小規模店舗ならともかく、社員やパートタイマーを雇用している店舗であれば、これも休日割増手当を支払わなければならず、それならば、残念であっても通常どおり休業した方がマシという考慮も働きます。

食堂も、外のお店も閉まっているとなれば、コンビニで弁当を買ったり、家で作った弁当を持参する機会が増えることになります。

このような要因を挙げて、この会社では「土日操業はマイナス」という冒頭の結論にいたっています。

 

以上の経過をすべて省略して、

「自動車業界の土日操業は食材業者にとってマイナス」

という方程式(?)だけ提示されたとしましょう。

多くの人がピンと来ない、むしろ「意味がわからない」と考え込んでしまうのではないでしょうか。

要するに、ひとつの情報に別の情報を関連づけて、単なる情報に広がりと奥行きを持たせ「知恵」に変えることで、違った視点や発想に到達することがあります。

いわば、「風が吹けば桶屋が儲かる」という連想をどのように展開していくことができるかが、ビジネスはもちろん生活においても少なからず活用できるのではないでしょうか。

 

 

【今日のポイント】

さまざまな情報をインプットし、ストックしていくと、いつかどこかでさまざまな情報がつながり、関連し、別の知恵が生まれる。

「情報」を「知恵」に変える要素は「連想力」にある!

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