地震保険17%増収

震災後、関心高まる

損保26社 4〜6月

(日経新聞201110月4日13版 経済2面)

【記事抜粋】

国内損害保険26社(外資系除く)の4〜6月期の地震保険の収入保険料が前年同期と比べ17.1%増の381億円に急拡大した。

東日本大震災後に地震保険への関心が高まったため。

火災保険の収入保険料も3384億円と2.1%増となり、同時期としては6年ぶりにプラスに転じた。

(以下略)

 

【コメント】

 

地震保険は、補償の対象が建物であること、そして代表的な保険引受が損害保険会社であることから、火災保険によく似たもの、さらには、火災保険の延長と考え「特約」の一種であるという誤解が広く浸透しているようです。

ところが、細かい点に注目すれば、火災保険と地震保険は全くの別物であるといえます。

まず、そもそもの目的が異なることはご存知でしょうか?

火災保険の目的は、(主に)火災で消滅した「建物を元どおり復元するために必要なお金」を提供することが目的です。

これに対し地震保険の目的は、地震で被害を受けた家庭の「当分の生活を維持するために必要なお金」を提供することが目的です。

こうした目的の違いが、補償の範囲や保険料の決め方など、さまざまなルールにも違いを与えることになります。

補償の範囲については、火災保険の場合、それぞれの火災つまり一つ一つの建物に対して、被害の程度に応じて保険金額を査定していきます。

これに対して地震保険では、各建物についてではなく、一定のエリアでまとめて被害の区分を一括して査定します。

そして、被害の程度も「全壊」「半壊」「一部損壊」と3つの区分に限定されています。

これは、火災保険は厳密に建物再建のために引受保険機関が責任を負うべき範囲を決めていくため、ある程度の時間を犠牲にしても金額の公正化を優先させるのに対し、地震保険はとにかく生活再建を優先させるため、保険金支払いまでの過程を単純化することに眼目を置いたことに違いがあります。

さらに、火災保険は全損の場合、建物をもう一度建築するために必要なお金の全額が補償されるのに対し、地震保険は全損であっても、火災保険の最高補償額の50%が上限となっています。

ちなみに、火災による建物損害を補償するのが火災保険ですが、地震が原因で発生した火災については、補償の対象外となってしまいます。

地震による火災は地震保険でのみ補償されることは注意すべきポイントとなります。

なお、生命保険にしろ損害保険にしろ、保険というものの特性は「軍事兵器」に似ているといえます。

つまり、あらゆるリスクに備えようとするあまり、いろいろな特約をくっつけて、すべてを1つの保険でまかなおうとすれば、コスト(保険料)が跳ね上がるのに比べて、パフォーマンス(万が一の保障額)はそれほど比例してカバーしてはくれません。

世帯主の死亡に備える、子どものいたずらによる損害賠償に備える、など、特定の目的に特化した保険を組み合わせていく方が、手間がかかってもトータルの支払額は節約できます。

 

【今日のポイント】

契約から支払い完了までの保険料の累計掛金を考えれば、保険は人生で2番目に大きな買い物。

「我が家にとって経済的なダメージの大きな出来事は何か」を考え、それに備えた保険を設計することを考えよう。

前回             目次へ             次回