発毛剤にイメージ戦略

人こと

大正製薬 上原会長兼社長

(日経新聞201111月1日13版 企業総合面)

【記事抜粋】

「女性の心理を読めていなかった」。

31日開いた大正製薬の女性向け発毛剤の新製品発表会で、上原明会長兼社長から反省の弁がもれた。

2005年に女性向け発毛剤の第1弾として「リアップレディ」を発売したが、販売目標に届かなかった。

「製薬会社として(有効成分の強さなど)科学的根拠ばかりを前面に押し出し、イメージ戦略が下手だった」

(以下略)

 

【コメント】

「リアップ」は第1類医薬品に分類されている発毛剤です。

効能が高い反面、副作用のリスクも高いため、ドラッグストアでも普段は陳列棚に置かれておらず、薬剤師の書面による説明を受けた後で購入できるという厳重な取り扱いが義務づけられている商品です。

したがってセールスポイントも「これだけ効き目が高い」という点がわかりやすく、さらに「すごい」「最高」といった感覚的なものではなく、「有効成分○○を●%配合」といった数字で示せる科学的なもののほうが、医薬品という性質にもマッチするでしょう。

 

ところが、女性向けの「リアップ」ではこの作戦が裏目に出たと上原会長は分析した様子です。

どのような成分がどれだけあるかという論理的情報は、一般的に男性へ訴えかけると効果が高いと考えられています。

一方、女性に同様のアプローチをすると、多くの場合ピンと来ない様子で、むしろ「若返る」など「結果のイメージ」を強調した方が共感を得やすいのではないかと今後の方針を述べています。

 

科学的なデータを示す方法は、製薬会社としてユーザーが求めるニーズを考え、自分のニーズに合うかどうか判断する材料として最適なものと考えた結果と推察されます。

当初のユーザーである男性では、想定した判断基準と判断材料としての情報とが合致したため、購買という成功につながったのでしょう。

ところが次のユーザーである女性では、買うかどうかを決める物差しそのものが違っていたことを経験し、新たな判断基準を想定し、それに合う情報を提供することが大切であることを示しています。

 

【今日のポイント】

消費者のニーズやヒト、モノ、カネの動きなど、今はどんな「物差し」が使われているのか、いろいろな角度から考え、それに合う情報提供を考えよう。

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