来年度新設へ法改正方針

消費者事故調

(日経新聞201111月7日14版 経済面)

【記事抜粋】

政府は消費者庁に家電製品や食品などに関する消費者事故の再発防止を目的とした調査機関を12年度中にも新設する。

(以下略)

 

【コメント】

記事によれば調査機関は運輸関係以外の全分野が対象となるようです。

つまり、この組織は運輸安全委員会の「運輸以外版」が業務となりそうです。

モデルと考えられる安全委は、航空、船舶、鉄道の事故について原因を調査し、報告書を作成して再発防止に必要な情報を蓄積していく機関です。

事故調査報告書の概要は、何が起きたかという「事実情報」、どうなったかという「分析」、なぜ起きたかという「原因」を3つの柱として構成されており、記述内容も責任追及のためではなく、客観情報の記録と蓄積に特化しています。

ただし、責任追及そのものはしませんが、再発防止に必要な勧告は実施する権限を持っており、無視した場合氏名や名称が公表されます。

 

規模の大小を問わず、事業者は昔とは比べものにならないほど消費者保護や法令遵守、社会的責任について高い意識が求められています。

「今まで大丈夫だったから」と意識改革を怠っていると、万が一事故やトラブル、クレームが発生した場合、情報の把握が遅れ、その後の対応がすべて後手に回り、火に油を注ぐ結果を招くことになります。

消費者安全法の制定から消費者庁の設置を経て、今回の消費者事故の調査機関が設置されれば、消費者保護制度は一定の区切りとなるでしょう。

事故調査報告書そのものは責任追及をしないとはいえ、民事や刑事の訴訟においては責任の有無を示す有力な証拠のひとつとなる可能性は十分にあります。

したがって、今から潜在的な事故原因となりそうな要素が社内にないかどうか、万が一事故等発生した場合、客観性と正確性と説得力のある情報開示はどうあるべきかを想定し、備えておくことはリスク管理として十分意義あるシミュレーションだといえるでしょう。

 

【今日のポイント】

消費者保護体制の強化は短期的にコストも手間もかかる変革であることは確実。

しかし長期的に見れば事故の予防は対処よりも必ずコストも手間も少なくて済む。

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