自炊の寮、自立心に火?

消費の現場

(日経新聞2011111512版 消費面)

【記事抜粋】

入居者自らが食事を調理できる厨房設備を整えた“自炊寮”が静かな人気だ。

東京と大阪で同施設を運営する共立メンテナンスでは「自炊を通じて自立する力を養うことにもつながる」と呼びかけており、学生や若い社会人の利用が増えている。

(以下略)

 

【コメント】

寮といえば食と住を提供してくれるのが「常識」です。

女性管理人=寮母さんの作る食事が一人暮らしの若者にとって「おふくろの味」となるという話も少なくないでしょう。

 

記事にある共立メンテナンスの「シェアハウス・ドーミー」では、管理人の仕事といえば清掃や郵便物等の取次ぎ、病院への連絡など緊急時の対応に限り、食事は基本的に入居者自身で調理するというシステムです。

いわばホテルの「素泊まりプラン」のようなもので、食事代がかからない分月額賃料は割安に設定されています。

供給側である事業者にとって、管理人に調理技術を必要としないので人員の幅が広がり、人件費コストの軽減につながります。

また入居者にとっては賃料が安くなるとともに、事業者でもアピールしている調理技術の習得向上や自立心の向上、あるいは入居者同士が協力して調理することでコミュニケーションが深まるという効果も期待できるでしょう。

 

寮といえば住居と食事を提供する「フル・パッケージ・サービス」が当たり前と思われていたところ、食事の部分を切り離して提供することで、別のサービスメニューとして整備した点が今回のポイントです。

生命保険や自動車保険など保険商品も、従来は幅広く保障してくれるフルラインアップ型が好まれていましたが、現在は各契約者が自分の必要とする保障を選択するカフェテリア型に移行しています。

寮の食事を自炊=自己責任とすることで口に合わない食事を押し付けられるという潜在的不満を解消するように、特約を取捨選択することでムダな掛け金を払わされるという潜在的不満を解消することにつながっています。

 

【今日のポイント】

フル・ラインアップを目指して付け加えていくだけが付加価値ではない。

商品やサービスそのものはあえて減らして、必要か否かを選択する「権利」を増やしていくことも付加価値と考えよう。

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