大豆、1年1ヵ月ぶり安値
国際価格 中国の買い付け鈍る
トウモロコシ・小麦も軟調
(日経新聞2011年11月23日12版 商品面)
【記事抜粋】
大豆の国際価格が下落している。
指標となるシカゴ先物は21日、1年1カ月ぶりの安値で引けた。
中国の買い付けの鈍化を受けた手じまい売りに加え、米国債の格下げ懸念などで投資家にリスク資産を圧縮する動きが広がった。
市場には大豆価格は当面軟調に推移するとの見方が目立つ。トウモロコシや小麦も夏までの強気ムードが後退し軟調な値動きとなっている。
(以下略)
【コメント】
中国による大豆の買い付け量の減少が国際的な大豆の先物価格下落につながっており、この傾向がトウモロコシや小麦にも波及していると記事が伝えています。
中国の需要家が大豆やトウモロコシを買い付ける理由には「実需」と「投機」の両面があります。
まず実需の側面として、中国の経済成長による生活水準の向上が挙げられます。
フトコロが豊かになればイイものが食べたくなります。
安い鶏肉ばかりの食生活から牛肉を食べる機会を増やす人々が増えます。
食肉用家畜の飼料効率に関する一種の方程式として、1個体あたりの重量が大きい家畜ほど、家畜重量を1kg増加させるために必要な飼料を多く必要とすることがよく知られています。
具体的には、ニワトリの体重を1kg増やすために必要なエサが2〜3kgであるのに対し、牛の体重を1kg増やすために必要なエサは8〜10kgになってしまいます。
つまり、食肉習慣が高級化すれば、家畜のエサとなる大豆やトウモロコシの消費量が加速度的に増大することになります。
一方、投機の側面としても中国の存在感がドンドン大きくなっています。
個人も企業も所得が増大し、いわゆるカネ余りの環境になれば、有利な運用を求めるのは当然の流れです。
投資対象として株式、債券、為替、不動産、資源などが挙げられますが、欧米の債務不安を主な要因として、株式や債券、為替では不安(リスク)が高まって収益獲得が期待しづらい状況です。
また、不動産は同じく世界的な信用不安から希望通りの価格やタイミングで売却しにくく、投資対象の切り替えに難点が生じています。
そこで将来の人口増加と生活向上から資源の需要増加が期待できるとの思惑から、資金が商品市場に流れ込む状態が続いています。
記事では最近の商品市況の右肩上がり一辺倒に一服感が出たことを報じています。
ただし、中長期的な傾向としては当面需要増大が続くことが想定され、「資源インフレ」の様相が濃いと思われます。
我々の身近にあるさまざまな製品は、元をたどれば何かの原材料から作られています。
世界的な日用品の多くに関わる資源といえば原油が代表的なものですが、世界中の食料の元といえるもののひとつは間違いなく大豆やトウモロコシが挙げられます。
したがって、大豆やトウモロコシは直接食べる量や機会が限られているにもかかわらず、これらの市況価格が大きく変動すれば、めぐり巡って我々がもっと身近に食べている他の食品の価格にも影響を与えることは、今後意識すべきことかもしれません。
【今日のポイント】
流通過程や製造工程が世界中でつながっていることが当たり前となった現在は、むしろこれらを意識しなくなってきている。
だからこそ一見自分には縁遠いニュースもどこかで自分の仕事や生活に影響があるかどうかを考えることも必要となっている。