日米欧 景気後退に警鐘

OECDが12年「悲観シナリオ」

欧州危機が深刻化

米が過度の緊縮策

マイナス成長も

(日経新聞2011112914版 総合面)

【記事抜粋】

【パリ=古谷茂久】

経済協力開発機構(OECD)は28日、日米欧などの経済見通し(エコノミック・アウトルック)を公表、2012年の加盟国全体の実質経済成長率は1.6%と予測した。

ただ今回の見通しでは欧州債務危機の深刻化などを想定した異例の「悲観シナリオ」を発表。

その場合は日米欧ともマイナス成長になるとの見方を示し、主要先進国が景気後退局面入りしかねないと警鐘を鳴らした。

(以下略)

 

【コメント】

OECDは途上国支援や自由貿易拡大などを目的として活動する組織で、現在34カ国が加盟しています。

加盟国の経済規模や国民総所得が高いため、「先進国クラブ」と呼ばれることもあります。

 

記事によれば、債務不安を抱えるユーロ圏諸国が当面持ちこたえる「標準シナリオ」でプラス成長が予測される一方、ユーロ圏の混乱と米国景気の後退を想定した「悲観シナリオ」では、OECD全体(世界経済の約7割)もマイナス成長になると予測しています。

特に目を引くのは、「標準シナリオ」では米国の成長率がプラス2%程度と予測されたのに対し、「悲観シナリオ」ではマイナス2%と大きな下振れが懸念されていることです。

そして、日本については同じくマイナス成長が想定されていますが、欧米に比べると「微減」にとどまると考えられている点も注目されます。

 

最近の国内外で発表される景気や経済に関する多くの統計は、OECDの「標準シナリオ」と「悲観シナリオ」のいずれにも説得力を与える材料となっているように感じられます。

この一見矛盾するような情報ととらえられるのは、以前から指摘されてきた「実体経済」と「マネー経済」との世界観が、特にかけ離れてきたことに起因するのではないかと考えられます。

モノの動きが見えやすい実体経済に関する景気指標は、ユーロ圏も含めて比較的堅調な成果を伝えるものが少なくありません。

その一方で、為替相場に代表されるマネーの動きは、「過剰反応」と思われるほどの規模とスピードでリスクから遠ざかろうとしています。

つまり、足元の景気(現状)は日本の震災復興や中国、インドなどの所得底上げなどの需要拡大を反映したプラスの方向性を示している一方、先行きを示す為替市場や株式市場ではユーロ危機というよりも「ユーロ危機の影」におびえ、不安の連鎖とレバレッジ(過度の増幅)が相場の下押し圧力となり、結果として実体経済の足も引っ張っているという様子が見られます。

 

不安をあおるようなオピニオン情報が目立ちますが、一度冷静にデータ情報を吟味して、ビジネスや生活、資産運用の方向性を考える必要があるでしょう。

 

【今日のポイント】

過度の楽観は足元をすくわれるが、根拠のない悲観論を鵜呑みにすることも危険が伴う。

数字やデータの裏づけが得やすいファクト情報を分析すれば、今は闇雲に動き回ることが損を拡大する側面もあることを考慮しよう。

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