借地権設定の土地に投資

年金マネー狙いファンド

東急リバブル

日本商業開発

(日経新聞201112月1日13版 企業2面)

【記事抜粋】

東急リバブルと日本商業開発は、建物を建てる際に借地権が設定された「底地」と呼ばれる土地に投資する不動産ファンドを来年3月末をメドに組成する。

初年度60億円程度の資産規模となる見通し。

継続的な賃料収入が見込める底地への投資で長期の安定した運用成績を求める年金マネーの取り込みを目指す。

(以下略)

 

【コメント】

日本商業開発のホームページによれば、この記事のスキームを同社で「JINUSHIビジネス」と名づけて展開しているそうです。

 

一般的な不動産投資信託では、ファンド資金で全国各地のテナントビルや商業施設を取得、保有し、賃料や売却益を投資家に分配するという運用スタイルをとっています。

この場合の投資物件は、「建物」が主眼であり、敷地も所有することになりますが、それは付随的なものという位置づけです。

なぜなら、収益の源泉は「建物」を賃貸することによって得られる「家賃」であり、物件の売却益も土地そのものの評価ではなく建物の「収益性」に影響されるものだからです。

 

今回紹介されているファンドのスキームは、土地のみを取得、保有し、事業用定期借地権を設定して運用するというものです。

建物は土地の借主が所有することになり、ファンドの収益源は地代と土地売却益になります。

地代収入は建物賃料に比べて少なくなりますが、建物の維持管理コストや空室リスクを回避することができます。

すなわち、建物主体のファンドに比べて「ローリスク・ローリターン」の運用手法といえます。

 

また、定期借地権であるため賃貸借期間満了後は借主の責任において建物を取り壊し、更地にして返還する取り決めとなっています。

つまり土地の評価として最高の状態で返還されることになり、売却による投資資金回収や新たなテナント誘致に伴う負担も最小限となります。

 

そして、定期借地権での運用という点は、一般の借地権に比べて借主の都合による中途解約を一定の範囲で制限する効果があります。

すなわち、契約で設定された賃貸借期間の地代収入を受け取る安定性、継続性は高いと期待されます。

つまり、「JINUSHIビジネス」とは、投資物件の組み換え=売却益ではなく、契約期間中の地代を収益源とすることに特化したものと考えて差し支えありません。

言い換えれば、高収益だがリスクもあり、一発勝負の「キャピタルゲイン」ではなく、それほど高額ではないがリスクも限定され、継続的かつ安定的な収入が期待できる「インカムゲイン」を重視したビジネスモデルです。

今までの不動産ファンドビジネスにおける「常識」から考えると新鮮な発想の転換といえるでしょう。

そして、個人の資産運用の考え方としては、長期投資、リスクコントロールの視点から、参考とするものが多いビジネスモデルということもできます。

 

【今日のポイント】

先行き不透明な時代、資産運用に関する知識も情報も、使える時間も制限される個人レベルでは、短期売買の繰り返しによる資産組み換えよりも、インカムゲインを重視した長期投資の姿勢がリスク回避の効果を得られると考えよう。

前回へ             目次へ             次回へ