小売り「SNS出店」拡大
ローソン、ハンズなど27社
口コミの広がり方も分析
(日経新聞2012年2月1日13版 企業2面)
シニア、通販はラジオで
なじみの声”信頼”
実物見なくても「つい買っちゃう」
(日経新聞2012年2月1日12版 消費面)
【コメント】
通信販売に関する2つの記事が気になったので、ご紹介します。
1つめはフェイスブックに出店する形式です。
東京のビルコム社が開発したソフト「リバイ」を組み込むと、商品を紹介するページに「欲しい」「かわいい」などフェイスブックの「いいね」以外のボタンを設定することができ、閲覧者や購入者が評価やコメントを投稿しやすくできるそうです。
また、フェイスブックらしく購入や決済が確認できれば、リアルタイムで「○○さんが購入しました」と情報が掲載されます。
一方、今ではかなりアナログ感の漂うラジオ放送の通販を紹介したのが2つめの記事です。
テレビでもインターネットでもなく、音声情報のみのラジオですから、形や大きさなど商品を見ることは不可能です。
購入の意思決定に必要な情報は、すべて商品を紹介するパーソナリティーの説明に依存します。
記事によれば、ラジオ通販の特徴は商品の変更が柔軟にできることのほか、視覚的にイメージしにくいからこそ商品の仕様を説明するのではなく、その商品を使っている場面の例を紹介することが多いそうです。
さて、この2つの記事に共通するのは、「なじみの人からの口コミ」が購買に大きな影響を及ぼすということです。
折しも先日グルメ情報サイトの「やらせ投稿」が話題となりましたが、これはサイトに投稿された「口コミ情報」が集客を大きく左右する事実を裏付けていることでもあります。
フェイスブックなどソーシャルネットワークに出店した店舗の口コミ情報では、コメントを投稿したり商品を購入した人の中に「友達」登録した人がいれば、通常のコメントよりも信頼するでしょう。
この信頼感はラジオのパーソナリティーにも類似の感情を抱くといえます。
ラジオの放送コンテンツでは、テレビ以上に強い「常連性」が働きます。
テレビの番組は通常3か月を1つの区切りとして制作、放送されます。
これに対してラジオでは数年あるいは10年以上放送が続く「長寿番組」も少なくありません。
聴取者の側にもずっと聴いている「ヘビーリスナー」が少なからずいることになります。
こうした情報の「出し手」と「受け手」の間には強い信頼関係ができあがっており、「この人が評価しているなら悪いものではない」という判断に傾きやすくなるといえます。
1つめのビジネスモデル(記事によれば「ソーシャルコマース」)も、2つめのラジオ通販も、システムやツールに大きな違いはあっても、
「信頼している人のコメントだから信頼できる」
という口コミ情報の原則的な効果を改めて認識させられるものです。
そして、スマートフォンの普及やソーシャルメディアの利用が飛躍的に伸びている現代であっても、必ずしも全員が新技術に移ってしまうわけではなく、従来技術を経験し、また慣れている、その時代の「シニア層」などを中心に、情報発信、情報交流のツールも活用の余地があることも忘れるべきでないでしょう。
【今日のポイント】
選択肢も情報も手に負えないほど多すぎる現在、口コミへの依存度、求められる信頼度も大きくなる。
そして口コミを広げる手段も、最新技術だけでなく従来技術でなければ接触できない場面もあることを活用していこう。