sorry,Japanese only
平成21年3月31日
第131号
NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会
131号 目次
春の日差しに
21年度 育てる会総会
支援者セミナー 報告
赤磐ぐんぐん 見学会
育てる会勉強会
「18歳の春を目指す親子療育クラブ」
「母の想いを語る会」
支援者養成講座
サッカークラブ・水泳教室のお知らせ
私のお薦め本コーナー
「TEACCHとは何か」
卒業論文(抄録)
「母親による我が子の障がい受容 〜自閉症児とダウン症児での検討〜」
「自閉症のある子どもの発育に伴って起こる困難さとその対処法 〜親の視点から〜」
春の穏やかな日差しが嬉しい今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
今年の桜はいつもの年より開花が早いそうです。
昨日、後楽園の東の堤防沿いの桜が3分咲きぐらいでした。
岡山市内では、桜が満開になっている木もあるようですが、ここ赤磐市では、桜のつぼみはまだ固く、やっと一輪、二輪と咲き始めたところです。
我が家のある赤磐市から岡山市内の中心部までは、車で20分くらいですから、それほど距離があるとも思えないのですが、赤磐市は岡山市中心部より2度ほど気温が低いそうです。おかげで、岡山の桜が散った後でも赤磐の桜は咲き続けます。排気ガスも少なく、桜にとっては、いい環境なのでしょうね。
さて、今月は大変な事がありました。
実は、哲平が倉敷市のある病院で手術を受けたのです。
とある病気にかかりまして(ここで病名を言うのは哲平のお許しをもらっていないのでいえないので控えますが)手術を受けました。
経過は順調で、3日間の入院だけで退院することになりました。
初めての入院や手術です。
哲平の不安を出来るだけ軽減したいと思い、看護師さんから事前に聞いていた、入院から手術までのスケジュールを示す絵カードを用意しました。それを一つひとつ示しながら受診しました。
入院の為の基本的な検診から、手術まで私も付き添わせてもらいました。特別に手術室まで入らせてくださいました。哲平にとって何よりの心配事は「注射はいつされるか」です。手術なんて初めて受けるのですから、どんなことかわからない哲平にとっては、手術よりも注射の方が重要なことなのでしょう。
注射をされるのは、血液検査・手術の前の点滴・そして腰椎麻酔です。
注射の時の手順をしめす絵カードを順次めくり式のカードにして示しました。特に、痛いらしいと噂に聞く腰椎麻酔が難関かなと思い、点滴に少し麻酔薬を入れて、ボーっとしたところを腰椎に麻酔をしょうということになりました。
ところが、哲平は、緊張しているからだと思うのですが、いつまでもカッと目を見開いています。予定変更。仕方なく腰椎麻酔は起きている状態ですることになってしまいました。痛がって動いてしまうのではないかと、心配しましたが、哲平は「動かないで!」というとちゃんと動きません。体をえびのように丸くするところでは、前を向いて膝を抱えます。注射針を入れられた時も「ムッ」と声が出ましたが、我慢できました。すごい頑張りです。後は、麻酔が利いて痛くはないようです。
でも、緊張感は取れません。普通なら先ほどの麻酔が利いてきて、寝てしまうところらしいのですが、相変わらず起きています。
結局最後まで意識は保たれたまま、それになんと手術直後に足が動くのには、先生もびっくりされていました。普通足は動かないものだそうです。哲平には腰椎麻酔すら利きにくいのでしょうか。自閉症ってこんな事も違うのでしょうか?そんな話、誰か聞かれたことありますか?やっぱり哲平は特別不思議な子です。
手術中、面白いなと思った事があります。
腰椎麻酔の時に、看護師さんが、もっと背中を丸くさせるために「おへそを見て!」といわれました。哲平は服を着ていておへそが見えないので見ることができません。自閉症の人には、「ここを見て」と具体的な場所を言う方がきっといいでしょうね。「手を上げて!」と言われた時も、うつ伏せでの「手を上げて!」はどうすればいいのかわからない哲平に、「万歳して!」というほうが解りやすいようでした。
先生や看護師さんの言われる言葉を、私が哲平のわかる言葉に通訳していきながら、順調に手術を受けることも出来ました。初めてでこんな特別な場面なのに、混乱もせずに指示が通る事に、驚くと同時に哲平の成長を感じました。
『母さん、感激!!言うことなし。哲平は、立派でした』
その後の経過は、順調で7日間の入院予定でしたが、3日だけの入院で退院の運びとなりました。退院直後に私がうっかりしていると、いつものように5.5キロを走っていてびっくりしました。まあ〜大丈夫なのでしょう。なんにしても、これで一安心です。一年余りの悩みから開放されて、がんがんスポーツもやれそうです。
どんな病気か聞いてみたいと思われるでしょうが、「それはヒ・ミ・ツ」です。
さて、お話変わります。
皆さん自閉症啓発デーというのをご存知でしょうか?
平成19年12月18日の国連総会において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とすることが決議されました。
世界各地においてこの日一斉に自閉症に関する啓発の取り組みが行われています。
私たちもこれに賛同して、ここ岡山でもたくさんの方に自閉症を知っていただきたいと願い、4月2日に先駆け、先日3月20日には、自閉症支援者養成セミナーを行うことになりました。ラジオや新聞でも取り上げていただいたおかげで、会場はほぼ満席。たくさんの方が、来てくださいました。
育てる会として、今年度最後の講演会でした。
山口大学教育学部付属教育実践センターの木谷秀勝准教授と高機能自閉症者として「MYフェアリーハート」の著者でもある成廣ワタルさん(ペンネーム成澤達也さん)をお招きして、お話を伺いました。
午前中は、「高機能広汎性発達障害児・者への支援」と題して、木谷先生が支援されている自閉症児者のたくさんの事例をお話いただきながら、具体的な支援についてお話を伺いました。先生のお話は、事例に基づいている為、非常に具体的でした。支援することでお子さんが伸びていくことが、解りやすく参加者にも伝わったようでした。
午後は、成廣さんのお話がありました。成廣さんには、4年前にも講演いただきました。
4年前、成廣さんは、とても辛いお気持ちを抱えていらして、不安定な状態のときだったそうです。それを押して講演をしてくださっていた事を、後で知りました。申し訳ないことでした。
けれど、その講演会をきっかけに 自分自身の生きていく意味を見つけていかれたということが、成廣さんご自身のホームページに書いてありました。読ませていただいて、ご無理をお願いしたけれど、成廣さんにとっても、プラスになったことを知り、とても嬉しく思ったものでした。
今回は、あれから4年後の成廣さんのお話です。
成廣さんのお話は、小さい頃のことから現在のお仕事のことまで、お話がすすんでいきました。どんなに苦労をして大人になっていかれたのか、言葉の端々にしっかりと感じることが出来ました。
自閉症という障害が、私たちが思っている以上に、本人にとって苦しいものです。私たちからは、見えない病であることを参加者は、それぞれに実感したのではないでしょうか。成廣さんは丁寧に原稿をまとめてきてくださって、大変さを感じる内容とは裏腹に、時にはユーモアを交えながらお話されるので、会場は笑いに包まれました。笑いの中に苦しさが垣間見えて、私たちは、泣きながら笑っていました。
それにしても思うのは、4年前の講演会の時の成廣さんと、現在の成廣さんの違いでした。4年前と違いとても落ち着いて、当時を振り返ってお話をされました。
会場に集まった聴衆は、成廣さんのお話に、それぞれ今支援している子どもの将来を成廣さんに重ね合わせたり、保護者はこれからの子育てを考えました。成廣さんは、しっかりと自立し、自分の道を自分自身で築いておられます。そんな成廣さんは自閉症を持つ子どもの親にとっては、希望です。今後のご活躍を応援させていただきたいと、会場中の親や支援者を代表して、ここに書かせていただきましょう。「成廣さんがんばって!!」「これからも、自閉症者の想いを、話せない人たちに代わって伝えてください」
講演会の後の質疑応答にも、しっかりお答えいただいて、感謝でした。
成廣さんのお母さんにも登壇いただいて、たくさんの質問を受けていただくことが出来たのは、ありがたいことでした。
さて、育てる会では、4月25日(土)に「総会」の後に、川崎医療福祉大学TEACCH部の重松孝治先生の講演会を行います。同封の案内をご覧ください。日にちが迫っていますので、急ぎ申し込みをくださるとありがたいです。会場は「くらしき健康福祉プラザ」です。
どうかお誘い合わせの上、ぜひいらしてくださいね。
私たちの会の講演会は、専門家の先生を招いて専門的なお話を伺うことが多いのですが、今回は、少し趣を変えて、超初心者向けの講演会を行います。
重松先生は、とても優しい語り口で、優しく丁寧に自閉症を一から説明してくださいます。
「恥ずかしくって、『そんな事も知らないの?』なんて言われそうでいまさら聞けないわ」そんな方にもお勧めの講演会です。
保護者やはじめて自閉症の子を担任したばかりの学校の先生や、保育士の方にもお勧めのお話です。
また、先生と保護者がうまく付き合っていくコツも、お話いただきたいと思っております。先生と保護者が子どもを真ん中にして、対決状態になっているようなことはありませんか?そんな事にならないためのノウハウも学んでいただけたらと思い企画いたしました。ぜひ、大勢の参加をお待ちいたしております。
ここで少し私自身の苦い経験をお話しましょう。
私も哲平が小学校へ入ったばかりの時には、当時の担任の先生と気持ちの行き違いができて、うまくコミュニケーションがとれず、最後には先生は私が朝の挨拶をしても、無視されるような状態にまでなってしまいました。一年生に入学したばかりの時には、「何でもお母さんの言われる通りにしますから」と言ってくださっていたのに、教室の構造化にも協力的にしてくださっていたのに、ある日を境に一気に先生の対応は、変わってしまいました。哲平のためのその構造化も取り払われてしまいました。
朝学校へ行くと、何の予告もなく哲平の為の配慮が、全て取り払われていました。
「哲平君だけのために教室があるわけではありませんからね」とおっしゃる先生でした。
とてもとても厳しい対応で、今でも忘れる事が出来ません。
当時の岡山では「TEACCHでの・・・」と書いても、「お母さん、少し綴りが違っていますよ、TEACHですよ」と指摘される時代でした。
我が家からの「自閉症の特性に配慮しての」とのお願いも、親からの理不尽な要求と、反発されたのかもしれませんね。
JRの切符を用意して、大阪での自閉症の講演会にお誘いしたのも先生からみると余計なお世話で、今でいうモンスターペアレントのように思われ、かえって感情的な齟齬が深まってしまったようです。
その先生は、それからも最後まで、こちらから挨拶しても、答えていただけませんでした。
人との関係でここまでの悪い体験した事は、一生のうちでこの時以外ありません。子どもをはさんで、親と先生の関係が悪くなってしまっては、一番辛い思いをするのは、間にはいっている子ども、哲平であるのは間違いありません。
そのことを改めて肝に銘じ、2年生を迎える前に、自分の先生に対する気持ちの持ちようを考えました。
たとえ先生が子どもに対して、いい対応をしてくださらないとしても、不満を持つのではなく、まず先生の気持ちを考えようと思いました。
私だって、自閉症の子との暮らしは、その頃は辛くしんどいこともありましたから、増して他人の先生に、この子を理解して欲しいということは、難しいに違いありません。
これからは先生を理解しよう。まず、先生の立場で考えよう・・・そんな事を思いながら2年生を迎えました。
けれど、そんな決心は、実はまったく必要ありませんでした。当時の教頭先生が、配慮してくださって、個別学級での2年の担任は変わっていました。2年生から、自閉症の特性に配慮していただいて、新たに哲平一人でしたが、情緒障害児学級を別に作っていただけました。
その情緒障害児学級の担任の先生は、とても素敵な若い先生でした。前向きで意欲的で、「何でも哲平君のために取り組みたい」そんな風に言ってくださる先生でした。私は不満を持つどころか、先生のことが大好きになっていました。一年間辛く長い日々を過ごした後だけに、余計に幸せな毎日でした。
哲平を真ん中にして、先生と互いにフランクにお話が出来るといういい関係の毎日に、哲平も安定して、勉強の方もすばらしく伸びることができました。
その後も小学校3年から6年生まで、そして養護学校の中学部・高等部と様々な先生との出会いがありましたが、どの先生ともいい関係を持つ事が出来たのは、小学一年生のときのお互い感情的な齟齬をきたした苦しい体験があったおかげかもしれないと、今は思えるのです。
それは前向きに考えれば、どんな経験にも大切な意味があるという事かもしれませんね。けれども、出来ればこんなに辛い経験は、できれば皆さんにしてほしくありません。その方がなにより子どもたちにとっては救われると思います。
そのためにも4月25日の講演会が、保護者と先生方のいい橋渡しになる事を願っております。
さて、お話変わって、来年度の育てる会についてです。
先月号で正会員の方には、アンケートをお送りしました。
アンケートで会員の親御さんが、困られている事が多い内容は、相談したり話をする人がいないことでした。お子さんが大きい方にその傾向が多かったです。まだお子さんが小さい方については、療育機関などで、話し相手や勉強の機会が出来て、少しずつ元気になっていかれます。
けれど、大きくなってこられたお子さんの場合が、一番大変そうです。特に学校へ行けなくなって来たお子さんを抱えてお母さんが困っておられるというのが、多いようでした。それを受けて、新しい企画を考えています。
まず、お子さんが出てこられるかどうかは分かりませんが、大きいお子さんの為の余暇支援の為の定期的な活動を考えています。
わくわくクラブ(仮称)という活動です。これはまだ考え中の段階で、皆さんからの意見を頂きながら、実現を考えていく段階です。
子どもたちは、大きくなるとニーズも一人ひとり違ってきますから、行事を企画しても、その子に合うとは限りません。そこで、一年間色々な活動を行っていこうと思います。「これなら行きたい」というものに参加していただいて、楽しい時間を過ごせたら、それをきっかけにその子の余暇が広がるかもしれません。
例えば、今考えているのは、ボーリング・カラオケ・絵画教室・備前焼・太鼓・料理教室・パソコン教室・バスツアーに参加しての旅行・手品など自分でやれるものを学んでみるなんてどうでしょう。色々楽しい企画を考えています。一家族では、出来なくても何人か寄れば子どもに色々な経験をさせてやれます。家に閉じこもりがちな年長の子どもたちが多い事が気がかりです。わくわくクラブの活動を通して、余暇が広がって、楽しい事が見つかるといいなと思っております。
基本は、親子での参加です。企画も学生さんたちには手伝ってもらいたいと思いますが、参加する親たちで考えます。参加希望の方が少ないと出来ませんので、ご意見お寄せください。育てる会の鳥羽美千子にお電話ください。事務局086−955−6758です。合わせてボランティアの方も募集しておりますのでよろしくお願いしますね。
もう一つの新しい企画は、高機能のお子さんをお持ちのお母さんのための座談会です。アンケートから見えるのは、一番悩みが深いのは、高機能で大きい年齢のお子さんの場合のようでした。
お子さんが育てる会の活動には参加しようとしない場合、育てる会は、何が提供できるでしょう。学校にもいけず、周りからの支援も限られている子どもたちです。困っておられるお母さん達の顔が浮かびます。育てる会として何が出来るでしょう。お母さん達の意見を聞く意味でも座談会は、必要だろうなと思いました。座談会もただ親同士が話をするだけではなく、アドバイザーが、必要と思います。ただいま準備中です。
そんなことを今考えています。育てる会のモットーは「ないものは自分たちの手で作る」です。21年度の育てる会にご期待ください。
さて、最後にいつもの日常生活の中での哲平君のお話です。
ある日のことです。誰かが鼻歌を唄っています。
「何の曲かしら?」と、耳を澄まして聴いていると、ポールモーリアの「恋は水色」です。あら上手、でも誰かしら?鼻歌は声がわかりにくいのですよ。お父さんは、強烈なオンチですから、もちろん対象外です。
お姉ちゃんかしら?でもいつ来たのかしら・・・。そう思いながら聴いていると、アイロンを掛ける場所の2階の踊り場のところから聴こえてきます。
そっと覗いてみると、機嫌よく哲平君がアイロンを掛けながら「フーン・フーン・フフーン♪」と歌っているのです。それが、とっても上手なのです。
小さい頃は歌が上手だった哲平は、大きくなるにしたがって、なぜかオンチになっていて、歌を唄うと少し音が外れます。
でもその時は、とても上手だったのです。まるで哲平じゃないみたいに上手です。歌を唄うと音が外れるのに、ハミングだと音が外れないのはなぜでしょう?
そこで考えてみました。もしかしたら、ハミングだから上手に歌えるのではないかと思いました。
自閉症は、二つの事を同時にする事が苦手な障害ですよね。
歌詞を唄いながらメロディを追うのは難しいのかもしれません。
ハミングは、メロディだけでいいから上手なのかもしれないなぁ〜なんて思いながら、楽しく歌う哲平の声を階段の下から、そっと聞いている母さんでした。
さあ〜、春は始まったばかりです。4月からも、皆さんにワクワクと楽しい事がいっぱいあるといいなぁ〜なんて、祈りつつ、今日は筆を置きましょう。また来月お会いしましょう。お元気で・・・。
鳥羽 美千子
平成21年度 育てる会総会
【講演会】
講師 川崎医療福祉大学 TEACCH部 重松 孝治 先生
演題 家庭と学校 一緒に取り組む自閉症支援
〜子どもたち一人ひとりが健やかに育つために〜
日 時:平成21年4月25日(土)
場 所:くらしき健康福祉プラザ(倉敷市笹沖180)
9:30 総会受付
10:00 育てる会総会(301研修室にて) ※正会員のみ
11:30 昼食休憩(お弁当などは各自でお持ちください)
12:30 移動・受付準備
13:10 重松先生講演会 受付(プラザホール前にて)
13:30 第一部 「まずは知ろうよ、自閉症」
15:00 途中休憩
15:15 第二部 「みんなで育てる自閉症の子どもたち」
16:45 終了・片付け
※正会員の方は、同封の「出欠票」にて総会の出欠の返信を、4月10日(金)までに必ずお願いします!
(プロフィール・重松先生講演会参加申込書と一緒に返信封筒で返送ください)
総会を記念して、川崎医療福祉大学TEACCH部の重松孝治先生の講演会を行います。
お忙しい時期だと思いますが、万障お繰り合わせの上、ご参加ください。
申し訳ありませんが、託児はございません。
講演会について、詳しくは同封のチラシをご覧ください。
また、正会員の方へは、各学校の校長・教頭・園長先生にお渡しする無料の「招待状」を同封しております。所属する学校・園のトップの方が自閉症理解をしてくださることは、学校・園全体の理解に欠かせないものだと思います。来ていただけるかどうかは先生方の判断にお任せする、ぐらいの気持ちで皆さまぜひ招待券をお渡ししてみてください。
なお、特別支援学校へは、育てる会から直接「招待状」を送付しますので、同封しておりません。ご了承ください。
支援者養成セミナー報告
先日の3月20日(金・祝日)、岡山西ふれあいセンターふれあいホールにて、自閉症当事者である成廣ワタルさん(ペンネーム:成澤達哉さん)と山口大学教育学部付属教育実践総合センターの木谷秀勝先生による「第5回 自閉症児の自立を果たすための支援者養成セミナー」が開催されました。
当日の感想が参加された保護者から寄せられましたのでご紹介します。
高機能自閉症の3年生の子どもを持つ母親です。
午前中は、「高機能広汎性発達障害児者への支援〜自分らしく生きるために〜」と題して、山口大学教育学部付属教育実践総合センターの木谷秀勝先生のご講演でした。
広汎性発達障害児者の支援のために、まさに「東奔西走」。お車の走行距離はなんと10万Kmであるということが、そのことを証明しています。本当に頭が下がる思いがいたしました。
レジメの中で、私自身が印象に残った部分を、参加できなかった方のために、記載させていただきます。(☆は、我が家の感想です)
小学校年代の対応・10才の壁→8・9才から出現しやすい
・コミュニケーション能力→自己モニター能力が重要
・「何でも言いなさい」→黙ったままでいいこともあるんだよ
・いい点を取りましょう→でも。100点はとらなくていいよ
☆我が家の場合は、自分のことを自分で感じる力を身につけさせてやりたいと思いました。
中学校時代の対応・スタートは3つの混乱から:身体・認知・五感
心身の変化→心に気づいていても過敏に反応する身体に気づかない
・9教科の学習→得意科目を作ろう(苦手科目があることが普通)
・一進一退の変化
・環境の安定化(家族・兄弟支援・移行支援の重要性)
・高校進学は第二の告知
☆第二の告知は、第一の告知よりもっと大事で、本人にとっては、きつい告知になる。
「あなたの現実的な力はこれだけです」と言われることのきつさを思うと、本当にそうだろうなあと思いました。だからこそ、我が家も第二の告知に向けて、今から、何を伸ばして、何を余暇支援にもっていくか。しっかり、考えていきたいと思いました。
高校時代の対応・入学後からの支援→入学式からの支援
・真面目な高校生→「変わった高校生」で十分
・青春を楽しむ→通学時間・空間を楽しむ(寄り道のススメ)
・異性関係に注意→同性関係のほうに注意
・「守られる」環境→「自分でやってみたくなる」環境(学校環境の重要性)
☆支援を通すことで、「自分でやってみたくなる」環境がでてくるのなら、支援を通し続ける環境を与えてやれるよう、親として努力し続けようと強く思いました。
大学・短大・専門学校時代の対応・学校生活→普段の生活リズムやバイトが大切
・授業に出よう→講義への情報収集が重要
・大学に行く→休講や暇な時間の過ごせる場所を見つける
・真面目な学生→ちょっと変わった学生で大丈夫
・就職活動を一人で頑張る→就職活動を支援してもらう
本人が「自分らしく」生きるためのスキル
・自分の身体感覚のモニター能力をもつ
・国語辞典を丹念に調べる
・鏡をみる練習
・「自分を安全に守る」性を学ぶ
・Long−Term Partnership
大人になること・自分の趣味の世界を楽しむ
・他者とのコミュニケーションを楽しむ
・金銭感覚を育てる(貯めることより使い方)
・疲れを覚える
☆木谷先生のお話をお聞きして、我が子が、高機能自閉症者として自分らしく生きていく大人になるためには、今から何を大切にしながら子育てをしていけばいいのかのポイントを、明確に教えていただけたように思いました。木谷先生、本当に有り難うございました。
午後からは、成廣ワタルさん(ペンネーム:成澤達哉さん)のお話をお聞きしました。
私は、成廣さんのお話をお聞きしながら、実は涙がでてしかたがなかったです。
全く診断されることも、理解されることも、支援されることもなかった時代に、生きるということが、どれだけ生きづらい苦しいものであったか。成廣さんの前半でのお話から想像できました。私達親子が、その時代だったとしたら?本当に、その時代を生き抜いた、生き続けた成廣さんとご両親はすごいなと思い、ただただ涙がでました。
小・中・高校時代は、今でも消したい歴史であると語られていました。そんな成廣さんを救ってくれたものは、バイクと地図を見ることが好きということ。今現在のお仕事であるバイク便ライダーにつながったのですから。苦しい状況の中から、選んだお仕事。成廣さんのお話をお聞きして、本当に、好きなことは大切にしないといけないことなんだと確信しました。好きなことは、自分を助けてくれる。我が子にも、好きなことは、それが、例え、親や大人からみて意味がないように思えても、好きなことがあるということに大きな価値があることを思い、絶対それを子どもから取り上げたり、やめさせたりすることのないように大切に伸ばしていってやりたいなあと強く思いました。
また、成廣さんは、「自分を支えてくれた人は、自分を否定しなかった。ありのままを受け入れてくれた」と言われていました。私も、我が子を支える人間として、そういう人間であるように努力したいと思いました。
成廣さんのお話は、本当に感動しました。何に感動したのかと、少し時間がたった今思うことは、やはりあれだけの理解と支援の全くない時代に、相当きつい経験をして生きてこられたにもかかわらず、常に自分と向き合うことを忘れず、客観的に自分の長所と短所を見つめてこられて職を選んでこられたことのすごさに、私は感動したのだと思いました。自己認知の弱い我が子をみていて、成廣さんの自己認知のレベルが、なぜこんなに高いのかを知りたいとも思いました。
成廣さんは、偽りなく成廣さんらしく生きておられると、お話をお聞きしていて私は感じられ、とても好感をもてました。私と同じように、「成廣さんのお話、よかったねぇ。私、泣いちゃった」と言いながら、会場を後にされた方は多かったように感じました。私は、お話をお聞きしながら、いい涙を流させていただけたなあと思いました。本当に、成廣さんありがとうございました。これからも、成廣さんを応援しています。これからも、成廣さんらしく頑張ってください。ありがとうございました。
(Nママ)
【保護者からのアンケート】
・ アスペルガーの世界と言葉の通訳といわれたことが良かった。こちらからアスペルガーの世界を尊重して、学ばせてもらうという姿勢が大切という言葉に目からウロコでした。今までの講師の方と全く違う切り口のお話が良かった。うなずける!と感じました。
・ 成廣さんのお母様の話を通じて、発達障害児の保護者としての支援の重要性を教わった気がします。お母様の話から、成廣さんの幼少期と今の我が子がとても重なって見えました。大変参考になりました。参加できてよかったです。
・ 子ども自身の困っていることや、将来に向けて気をつけること、支援の具体的内容が少し理解できたこと。親として、頑張っている本人だけではなく、マイペースに過ごすことができた時も褒めようと思います。
・ 今回と4年前の成廣さんのご講演を拝聴し、ご自身が色々な困難を乗り越え、そしてその困難を緩和する術を獲得なさったのだなと感じました。それは、想像を絶する辛さの中で得られたものであることや、そして自己分析(自己モニター能力)の正確さの上にあると思い、強く生きている成廣さんに感銘を受けました。ありがとうございました。
・ 木谷先生のように長いスパンで子どもを見てくださって、小・中・高・大学の間の橋渡しをしてくださる方が岡山にもおられたらなと思いました。親だけではそこまで学校側を説得するのは難しいです。山口県の方がうらやましいです。全国的にそのようなシステムができたら理想的ですね。そして、以前から当事者のお話を聞いてみたかったので、成廣さんのお話を聞けてとても嬉しかったです。とても辛かった「黒の歴史」を乗り越えて、今一生懸命に生きておられる姿を見て、自分の子どもも大人になったらどんなだろうかと思いをめぐらせましたが、今、子どもと接するのについ自分の感情で怒ってしまったりすることが多いので、私より生きにくい世の中を生きている子どもにもっともっと理解を深めて、子どもが安心できる環境を作ってあげなければと思いました。大好きな「競艇」のお話をされている時の成廣さんのキラキラした表情がとても印象的でした。ありがとうございました。
・ 「自分を信じてくれている人もいると信じる」と、我が子にも思ってもらえるような環境を整えてやりたいと思います。
・ 息子に対して、人の心の機微が全く分からないわけではなかったため、木谷先生の話がすごくよく分かりました。また、少しずつ「がんばれがんばれ」と言い続けるようになっていたため、ハッとさせられました。大切なことに気づかせてもらえてよかったです。成廣さんのお話では、支援を受けにくい中で、当事者がどんな風に感じておられるか分かり、周囲の支援者はそれを肝に銘じておかなくてはいけないのだなと思いました。
・ 木谷先生の講演では、長い期間の流れを教えていただけてよかったです。一時期のことだけでなく、次の時期とのつながりを考えさせられて良かったです。木谷先生の今回の講演内容は私の最も知りたいところでした。もっと詳しくいろんな話が聞きたいと思いました。ぜひ次回も期待しています!!
・ 初めて講演会に参加させてもらいましたが、私は今、子どものことで詳しく話し合える人がいないので、今日のお話を聞けてこんなにもたくさんの方が自閉症の事について考えている…ということが分かり、自分は一人ではないような気持ちになれました。
・ 木谷先生のお話はとても分かりやすかったです。具体例を交えながら、小学校〜思春期〜青年期とお話くださったことが良かった。岡山にも先生のような方がいてくれたら…、先生のように気軽に相談できる方がいてくれたら…と思いました。これから先を見通しての支援の大切さを改めて感じました。また、当事者の方からの生のお話を聞くことができ、今まで本当に大変な苦労があったんだと感じました。子どもはまだ小学生ですが、本人に寄り添いながら支援していきたいと思いました。ありがとうございました。
・ 初めて参加した講演でしたが、全体的に良かったです。成廣さんの話を聞き、そうだったと同じようなところがたくさんありました。わが子は22歳で障害が分かって、今24歳。何とか仕事をしています。周りの理解は得ていますが、時々不安になるようです。
・ 実例をもとに、分かりやすく話をしてくださってうれしいです。子どもが成長し、なかなか理解されない中でも、子どもへのバランスよい支援や、その支援の大切さと、それで人として自分らしくいられるすばらしさを感じています。
・ 子どもたちの抱える奥在の部分、絵や物語の示す思いを知ることができてよかった。一番理解してあげられる自閉症通訳者になりたいと、心からそう思いました。
【教育関係者からのアンケート】
・ 成廣さんの前回の講演で、それまで想像でしかなかったフラッシュバックの苦しさとともに、ご本人のそれまでの生きづらさを目の当たりにして心がしめつけられる思いがしました。今回、それを乗り越えられ、ご自分の生きる方向性を自ら見つけ出されたお姿に感動を覚えるとともに、周囲の方々への感謝の気持ちを率直に表現されるその謙虚な人柄に触れることができ、本当にすばらしい内容でした。発達障害の児童の支援に携わっているものとして、困難を乗り越え、希望あるお話をしてくださった成廣さんに感謝しています。ありがとうございました。
・ 質問に色々答えていただいて、日々の生活の中、学校生活の中での、具体的な話しが聞けて本当によかったです。成廣さんのお話は、特に、すぐに現場の仲間に伝えたいこと(おだやかな口調やありのままの自分を受け入れてもらうこと)があり、その大切を改めて感じました。また、木谷先生の自閉症の子への接し方のポイント(主語をつける・結論を先に・ありがとう、ごめんなさい)も、日々の生活にすぐに生かしていきたいと思いました。
・ 二次障害を生まない支援をするために、肯定的な指導や本人の快い状態を知っておくことの大切さ、尊敬の念をもって支援にあたる姿勢の大切さを学びました。ありがとうございました。
・ 成廣さんの講演を何度も聞かせていただきましたが、毎回成長されている姿を見せてもらえて嬉しいです。仕事上、高機能自閉症の児童に接することが多いので、未来に希望を与えてもらっています。ありがとうございます。木谷先生のお話も楽しくて分かりやすくてよかったです。中学・高校・大学生のことはあまり教えていただいたことがなかったので良かったです。
・ 保育士なので、保育園で支援の必要な子に対して活かせる保育の方法を、これから先の続いていく進路、何十年ものスパンで考えていくものなのだと改めて感じました。
・ 小学校から中学校、中学校から高校への、移行支援の方法について詳しくお話いただいたことが良かったです。とても楽しい雰囲気でご講演いただき、内容も分かりやすく、役立ちそうなことを教えていただけて、充実した1日になりました。
・ 思春期・青年期の事例についてお聞きできたことがよかったです。成廣さんの体験に基づくお話、お母様のお話にも本当に感動しました。ありがとうございました。
・ 自閉症者ご本人の講演を聞けたのが初めてで、とても参考になった。中学校教師をしているが、お話をうかがいながら「あの子の場面と一緒だ」などと思える話しが多々あり、身近に感じられる内容だった。
【その他様々な立場の方からのアンケート】
・ 成廣さんの内面的な話が良かった。成廣さんのお母さんが、ご本人の小さいころや学生時代の経験談を話していただいた内容が、非常に参考になりました。
・ 今とても気になっている子のことをよく理解することができ、明日からの支援や関わり方に役立てることができると思うことが多かったです。
・ 病名診断と支援について2つの関連と重要性が分かりやすかった。また。本人の方の思いを聞く機会は初めてだったので、一生懸命な生き様やお話の内容に、接し方を考えていこうと思えた。
赤磐ぐんぐん見学会
新規利用者対象に赤磐ぐんぐん見学会を開催します。
赤磐ぐんぐんは、自閉症や発達障害をお持ちの幼児さんを対象に週1回の療育を介護給付費(保護者1割・国県市町村から9割補助)で行っている児童デイサービスです。
日 時 平成21年4月17日(金)11:00〜12:00
場 所 児童デイサービスセンター赤磐ぐんぐん(赤磐市和田194-1)
対 象 平成21年4月の段階の就学前(幼児)のお子さんをお持ちの保護者
(見学会はお子さんを連れての参加はできません。ご了承ください)
申込先 育てる会事務局(086-955-6758)
ぜひお友達・お知り合いにお声かけお願いします。
なお、今後も開催しますので、興味のある方はご連絡ください。
育て会 勉強会
「18歳の春を目指す親子療育クラブ」
20年度の18歳の春の最後の会で、来年度は、どんなことをしていきたいか?についてみんなで話し合いました。
その中で「日常生活を大事にしたい」「子どもの様子にあわせて作りたい」「その場で支援グッズを作って持って帰りたい」「担当グループを決めてみんなで進めていこう」等々、たくさんの意見と会の進め方の案をいただくことができました。それを受けて平成21年度の活動内容を計画いたしました。
定例会として、5月から毎月テーマを決めて行います。「スケジュール作り」「サポートブック作り」「ソーシャルストーリーを学ぶ」など様々な勉強会を行います。また不定期でパソコン教室・親子料理教室なども行って行く予定です。
年会費は5000円。正会員のみ対象です。正会員の方は、同封のチラシをご覧ください。
皆さんと共にわが子の支援を考えていける、そんなクラブを目指しています。ご質問などある方は育てる会事務局へお気軽にお電話ください。
「母の想いを語る会」
なかなか他の人に話せない子育ての不安や悩み。母親としての想いを同じ立場の人同士で語りあって、明日からまた頑張っていく活力を得るための会です。辛い話を吐き出してもよし、嬉しかった話を聞いてもらうもよし。泣いたり笑ったり勉強になったり。お母さんたちだけで思いっきり話せる場です。
日 時 平成21年4月27日(月)9:30〜12:00
場 所 育てる会事務局(赤磐市和田194-1)
申込先 4月17日(金)までに育てる会事務局(086-955-6758)へお申し込みください。
支援者養成講座
先日3月6日(金)、20年度最後の支援者養成講座が行われました。
「今日初めての人がいるかもしれないから・・・」と毎回同じ話で半分ぐらいの時間が取られてしまう講演会や勉強会が多く、「その話もいいけど、もっと深い部分の話を聞きたいのに!」と嘆く先生たちの声を聞いて始まった連続講座です。
昨年度もスタートのときから変わらないメンバー(新しいメンバーは昔のビデオなどを見て勉強してもらう形)での、全10回の連続した学校や園の先生対象の講座でした。
「自閉症とは何か」「どういう支援が必要なのか」を最初にしっかり伝えていただいた上で、構造化・コミュニケーションや余暇支援・問題行動への対処方法など、一つ一つ丁寧に教えていただける連続講座でした。
最初の頃は初めて担任した生徒を前にして、どう対応していったらいいのか自信のなさそうに見受けられた先生方も、一年を通してこの連続講座で勉強を続けることで、自閉症の理解と支援にしっかりと力をつけられてきたことを感じます。この一年間は、子ども達にとっても、先生方にとっても、大きく伸びられてた有意義な一年であったのではないでしょうか。
この連続講座の強みは、講座で学んだことを、自分の学校や園の子どもたちにすぐ実践できたということだと思います。自閉症児の支援は「こうすればこうなる」というものではなく、一人ひとりに合わせた工夫や支援が必要です。けれど「自閉症への正しい知識と理解」があれば、自閉症の特性+本人の特性に合わせた支援を先生たちが生み出していけたのだと思います。
重松先生の暖かく丁寧な支援の実際、弛まぬ努力の必要性、保護者への寄り添いと協力、そして子どもたちの幸せな将来への展望・・・それら一つ一つが、参加者一人ひとりの心にしっかり伝わった講座になったことと思います。重松先生、本当にありがとうございました。
また、金曜日の夜という大変忙しい日程にも関わらず、毎回大勢の先生方が参加してくださいました。学校からそのまま高速道路で駆け付けた、なんて先生もいらっしゃいました。
多くの先生の「子どもたちをもっと支援したい」「もっと学びたい」という熱い思いに感謝の気持ちでいっぱいでした。参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。岡山の先生方がこんなに真剣に子どもたちのことを考えてくださっていること、心強く思います。
多くの方のリクエストにお答えして、新年度も重松先生にご無理をお願いして「即実践講座」を行います。
20年度は保育園・幼稚園・学校・養護学校の先生、福祉・療育・医療機関の職員、学生さんで将来福祉関係への道を志している方など、なんと100名もの方が参加されました。毎年、100人もの自閉症を本当に理解する先生方が岡山県に増えて広がっていくことの喜びを感じています。
21年度もたくさんの先生方に参加していただき、岡山の地にますます理解者・支援者の輪を広げていきたいと思います。
現場で同じ視点で学んだ仲間がいることは、心強いことと思います。どうぞチームの方々と一緒に参加していただければと思います。
今年度も、重松孝治先生に「自閉症児への支援・実践編」を講義と演習のセットでお願いしています。
即!実践につなげることのできる先生対象の講座です。
日 時 : 5〜3月の、毎月一度金曜の夜19:00〜21:00(8月はお休み)
場 所 : きらめきプラザ(岡山市南方)・生涯学習センター(岡山市伊島)など
☆第一回☆ 平成21年5月 8日(金)19:00〜20:45
☆第二回☆ 平成21年6月12日(金)19:00〜20:45
岡山県生涯学習センター 大研修室
(第3回以降の日時と会場は随時お知らせいたします)
対 象 : 教職員・保育士やそれを志す人対象。ただし施設・福祉関係職員も可。
(申し訳ありませんが、保護者対象ではありません)
参加費 : 全10回分 賛助会員17,000円 ・ 一般20,000円
申込先 : 育てる会事務局(086-955-6758)
昨年度参加された方でも参加していただけます。
毎回演習と講義がギッシリで、即実践力作りに最適です。
どうぞお知り合いの方や担任の先生などへのご紹介をよろしくお願いいたします。
サッカークラブのお知らせ
日 時:平成21年4月29日(水・祝)10:00〜12:00(9:45集合)
場 所:旧岡山中央南小学校グラウンド(岡山市中山下)
持ち物:マイボール、ゼッケン(ボラさんの分も)、ハチマキと名札、お茶(ボラさんの分も)、個人ノート、出席カード
親リーダーはグループノート、スーパーの袋(ゴミ拾い用)
学校などの年間スケジュールの分かるもの(今後練習日を決める参考にします)
* 今回は体育館が使用できないため、雨が降った場合は中止となります。
中止の場合は、当日朝8時までに連絡させていただきます。
* 出欠が変わる方は分かり次第サッカークラブ担当までご連絡ください。
* 月当番、当番補助の方は9:30に門の扉を開けて、準備をお願いします。
* 集合してから練習開始までの間、時間があれば清掃活動(ゴミ拾い)を行おうと思いますので、ゴミ袋をご持参ください。
* 今後の日程調整のため、年間の学校行事あるいは他の行事の予定表があれば提出していただけると助かります。よろしくお願いします。
☆メンバー募集中☆
サッカークラブでは、現在5歳から21歳までの11名が個々のペースにあわせて、楽しく活動を行っています。ランニングやリレー、ダッシュの練習や、ボールのパスやドリブルの練習などの基礎的な練習が主です。
原則として、1人につき1名ボランティアの方がついてくれます。何か運動をさせたいと思われている方はぜひサッカークラブの見学、または体験にいらしてくださいね。兄弟児の参加も検討中です。
見学・体験希望の方は担当までご連絡ください。
(サッカークラブ担当:M.T)
水泳教室のお知らせ
日 時: 平成21年4月19日(日) 15:30〜17:30
場 所: 岡山OSKプール(貸切プールで行います)
連絡先: 育てる会事務局
★新たに参加されたい方、体験されたい方は事務局までお問い合わせください。
今年度から始められる方のみ4月分参加費2,000円を当日ご持参ください。
★欠席される方、ボランティアさんが必要な方は必ず4月6日(月)までに事務局に連絡してください。
★当日の急なキャンセルなどは水泳教室担当者に直接ご連絡ください。
(水泳担当:M &I )
卒業論文
以前、会員の皆様にご協力いただいた学生さんの卒業論文の抄録を二ついただきましたのでご紹介いたします。
ご協力くださった皆さま、ありがとうございました。
母親による我が子の障がい受容 −自閉症児とダウン症児での検討−(抄録)
吉備国際大学保健科学部作業療法学科 下地加奈 古屋香菜子
1.はじめに
発達に障がいのある我が子を母親はどのように受け止めるのかを検討するために、自閉症児の母親を対象にアンケート調査を実施した。さらに、文献抄読からダウン症児をもつ母親との比較検討を行った。
2.対象
A県の養護学校に通う自閉症児(広汎性発達障がい・自閉症・アスペルガー症候群)・ダウン症児の母親、児童デイサービス、岡山県内の育成会の自閉症児の母親を対象とした。子どもの年齢は3歳〜18歳までとした。
3.方法
神園の先行研究をもとにアンケート用紙を作成し、調査を行なった。
4.結果
アンケート調査を行った結果,配布数は195で、回収数38(19%)であった。アンケート結果を表1に示す。
5.考察
アンケートの項目より、自閉症についての告知・障がい児を出産したことに対する責任・育児ストレスに関して・あきらめ・生活のはりを障がい受容過程として捉えた。以下では、障がい受容・障がい受容における心理的変化考察し、ダウン症の特徴を述べ、自閉症との比較を交え考察を行う。
1)障がい受容の枠組み
障がい受容過程の大きな枠組みは、「ショック→否認→悲しみ・怒り→適応→再起」の過程を辿ると考える。しかし、それは一様ではなく繰り返し感じるものであると考える。
アンケートの項目から母親が我が子と他の子との違いに気づいた時期、告知を受けた時期、障がい児を出産したことに対して責任を感じた時期、あきらめの感情を抱いた時期、 生活のはりを感じた時期についてどの順番で経験したかについてアンケート結果をもとに検討した。この結果からも障がい受容は母親一人ひとり違いがあること、全員が同じではないと考えられた。
アンケート内容 人数(%)告知に関して
ショックを受けた母親 23(92)
ショックを受けなかった母親 2(8)告知を受けた時期
0〜12ヶ月 0( 0)
1歳1ヶ月〜2歳 6(24)
2歳1ヶ月〜3歳 7(28)
3歳1ヶ月〜4歳 8(32)
4歳1ヶ月〜5歳 1( 4)
5歳1ヶ月〜6歳 3(12)母親に告知した人物
医師 23(92)
夫 0( 0)
祖父母 0( 0)
その他(児童相談所、母親自身) 2( 8)障がい児を出産して
責任を感じた母親 12(48)
他に責任があると感じた母親 7(28)
誰にも責任はないと感じた母親 5(20)
無回答 1( 4)子どもの療育で心配だったこと
どう育ててよいかわからない 22(88)
しっかりと育てられた 1( 4)
不安はなくふつうである 2( 8)子育ての時間
ほとんど終日かかりきり 10(40)
時間をとられない 13(52)
世話をする余裕がないから放っておく 1(4)
かかりきりではないが子ども第一に考えている 1(4)「あきらめ」の気持ちを持ったことがあるか
持ったことがある母親 13(52)
持ったことがない母親 11(44)
持ったり持たなかったりしたことがある母親 1(4)子どもの存在で「生活のはり」を感じるか
感じる母親 22(88)
感じない母親 3(12)※「生活のはり」とは,子育てをすることによって得られ,将来に対する向上心を含む感情とする.(神園2),1982)
2)自閉症児の母親の障がい受容における心理的変化のまとめ
不安やあきらめの感情を抱いているのは告知の時期に多く見られ,母親にとって一番辛い時期だと研究を通して感じた.子どもの障がいに気づきや責任,あきらめといった感情を抱いた後に告知を受けるという受容の流れがあった.上記に述べた受容過程を経ている母親は早期に診断されないために葛藤する時間が長くジレンマを感じ,辛い時期を辿ることが明確になった.
また,告知のときには「どう育てて言いか分からずパニックになった.」「将来を悲観した.」「大人になったときどう育っているのか全く想像できなかった.」という意見が見られた.しかし,生活のはりを感じたという意見の中には,「子育てを楽しみ一生懸命やっている」「自閉症について深く勉強するようになってから,我が子の性格や思いに寄り添えるようになった.一番大変で困っているのは子どもだと親が気付いた.」という意見があり,明らかに気持ちの変化が見られた. 告知から生活のはりを感じる期間は一様ではない.子どもの成長があるからこそ,母親の心理的変化が見られると考える.それは, 「子どもの成長していく姿を見ることができた.」「子どもの成長とともに楽しみと責任感が出来てきた.」といった意見からも推測することができる.さらに,その時々に,話を聞いてくれる人の存在があったことが関係している. 「夫が子どもの障がいのことを理解し,今では自分と同じ目線で子どもと接している.夫婦で協力し合うこと,支えあうことで子どもの小さな一歩が私達両親の大きな喜びとなり,また頑張れる.」という意見から,夫の存在は母親にとってはとても大事な存在であることが明らかになった.母親の悩みを夫と共有できたことで,子どもだけでなく母親自身が認められると感じることが出来たのだと考える.そして,家族以外の医療従事者や同じ障がいをもつ親と交流を深めることもきっかけになり受容へと繋がっていくと考える. その際に,医療従事者は子どもの成長に関して母親が納得するように説明することが必要である.さらに,母親の要望や不安に感じていることに関して,母親の思いを汲み取って伝えていくことも必要であると考える.
3)ダウン症児の特徴と自閉症児との比較
ダウン症児は療育することによって成長するため子どもの生活の質も向上するが,それに伴い母親も同様に生活の質が向上していくと考える.つまり,母親は同時に生活のはりを感じているとも考えられる.
先行研究より,ダウン症児の母親は,「診断」以後,約18ヶ月の間に「現実否認」「育児不安」「劣等感」「葛藤・混乱」「育児に焦る」「健常児との違いが気になる」「育児困難」といったネガティブな心理状態を経験するのに対して,自閉症児の母親では,「障がいの疑い」から「診断」までの期間に同様の反応が集中していたと述べている.このことから,自閉症児の母親もダウン症児の母親も同様の過程を辿ることは明確である.しかし,感じる受容過程は同様であっても時期や期間が異なると考える.自閉症児をもつ母親が一様の受容過程を辿らないことが明らかになったようにダウン症児の母親も同様であると考える.これは障がいの種類によるものではなく,母親の特性や障がいの程度など様々なことが起因していると考えられる.
また,今回のアンケート結果からもわかるように,障がいの告知と認識の時期が同じでも,必ずしも障がいを受容したわけではないことが自閉症児の母親とも共通していると考える。
6.今後の展望
医療従事者が親の問題意識に共感することで、不安感と不満感が交差することを防ぐ必要があると考える。また、子どもと子どもを取り巻く環境、特に母親と関わることで,医療従事者への信頼感をもつのだと考える。そして母親が感じている気持ちを伝え、母親が冷静に判断できない部分や、気付かない部分へのアドバイスもできるようにする必要があると考える。
7.謝辞
今回、文献を執筆するにあたり、アンケートにご協力くださった皆様、A県の養護学校、児童デイサービ、,A県内の育成会の関係者の方々に深く感謝致します。
自閉症のある子どもの発育に伴って起こる困難さとその対処法 〜親の視点から〜(抄録)
吉備国際大学保健科学部作業療法学科 池田洋一 角田奈央 真鍋史織
1.はじめに
1970年以降、障がい児者の家族に関する実態調査や障がい児者を家族にもつ親自身の記録、親の会の活動等によって障がい児者の家族へ関心が向けられるようになった。障がい児者の家族に関する研究では、障がい児者の発育に伴って、本人とその家族がどのような困難に直面するのか、それを改善するためにはどのような支援に意味があるのかを明確にしていく必要性を述べている。発達障がいの一つである自閉症は特有の症状と知的障がいの程度によって子どもの障がい像は様々となる。そのため家族が抱える困難さやその解決方法も多様であると考える。自閉症のある子ども・者の家族に対する理解を深め、支援策を検討していくため、家族が直面する困難に着目し、解決を要する問題や課題、家族のニーズを知る必要があると考えた。本研究では、自閉症のある子ども・者の家族に対しアンケート調査を実施し、子どもを療育する上で生じる困難さとその対処方法を明らかにし、自閉症のある子どもとその家族のニーズに沿った支援を検討することにした。
2.方法
自閉症のある子ども・者を家族に持つ親の会や養護学校、デイサービスの責任者にアンケートの趣旨を説明し、同意を得た上で団体・施設の利用者にアンケート用紙を配布した。用紙は195通配布し回答が得られた48通(回収率24.6%)のうち有効回答41通を対象とした。
アンケートの内容は乳幼児期「乳幼児期に家庭での療育で一番大変だったと思われる時期・理由」「行動で困ったこと」「療育についての相談相手で頼りになった人と理由」「必要性の高いと思われる社会資源」などについて尋ねた。
3.結果
1) 他の子と違うと思った気づきの時期と診断時期
どこか他の子と違うと思った時期は生後0歳から8歳6ヶ月(平均2歳4ヶ月)で、診断された時期は1歳6ヶ月から13歳(平均4歳0ヶ月)だった。
2) 乳幼児期に家庭での療育で一番大変だったと思われる時期・理由
大変だった時期は3歳代が10例で、次いで4歳代と6歳代が各7例であった。大変だった理由で多かったのは「パニック・癇癪」や「多動・迷子」「不適応行動」「こだわり」「学校選択で迷った」だった。
3) 行動で困ったこと
多かった回答は「パニック・癇癪」が29人(71%)、次いで「固執・変化への抵抗」が27人(66%)、「公共の場での不適切な行動」が26人(63%)だった。
4) 療育についての相談相手で頼りになった人と理由
最も多かったのは自閉症のある子どもを持つ親同士で、理由は「子どもを育てる上での困難さを共感し合える」「具体的な療育のアドバイスを貰うことができる」「情報交換」であった。次は利用施設の職員で、理由は「専門的知識を持って子どもを療育してくれる。その子に合わせた療育のアドバイスをくれる」「子どもを理解してくれ、共に成長を喜んでくれる」「保育園や学校との連携を取ってくれる」であった。また配偶者や配偶者以外の家族も多く、「相談することができ、気が楽になる」「子どもの面倒をみてくれる」「一番相談しやすく、頼りになる」といった理由が挙げられていた。
5) 必要性の高いと思われる社会資源
周囲の理解(36人)が最も多く、次いで成人期の就労支援(32人)、専門家の育成(30人)、一般企業での就労の場(29人)、療育に関する情報(28人)だった。
4.考察
乳幼児期の困難さは、3歳頃から子どもの障がいの受容や自閉症特有の症状が現れ始め、子どもの育て方・接し方に不安を感じることであると考えられた。就学時の困難さは、子どもに適した就学先の選択での悩みや学校側の受け入れ体勢の問題があると考えられた。学童期の困難さでは、子どものさらなる身体的・精神的成長から起こる問題と学校側の理解の不十分さからおこる問題があった。乳幼児期と比べ、対応する母親の疲労が増すことや友人との関係の構築・維持の難しさが表面化・深刻化することが考えられた。学校側の問題として、自閉症に対する理解の不十分さによって起こる教育内容の不満や、母親と他の児童の親・先生との関係で多くの悩みを抱えていると考えた。
困難さの解決方法ではアンケート結果より困難さを解決していく上で同じ自閉症のある子どもを持つ母親の存在が大きな支えとなっていることが明らかになった。障がいについてよく知り共感できること、専門的で具体的なアドバイスや療育を知ることが、母親の精神的負担を軽減し困難さの解決へと繋がっていた。その他、母親が子どもを育てていく上で、利用施設の職員や配偶者などの家族の存在も重要であることが示された。このような相談先に、困難さを共感してもらうこと、専門的で具体的なアドバイスを受けること、協力して療育していくことで困難さを軽減・解決していると考えた。
アンケート結果より診断された日から子どもの将来に不安を感じている母親が多く、社会資源への必要性として成人後についての支援も重要視されていることが明らかになった。私達は子どもや家族の生涯まで考えた、見通しのある支援が母親の不安の軽減に繋がるのではないかと考えた。乳幼児期から成人後までを見据え、一貫した療育を専門家や教育機関といった各機関が連携しながら自閉症のある子ども・者とその家族を支援していくことが望まれる。多くの障がい児者の抱える問題について知り、先々起こってくる問題に早期に対応していける専門的知識や技術、各機関同士の連携が必要とされると考えた。また子どもの支援を行うにあたって、子どもや家族の気持ちに寄り添った支援を行うことが最も大切である。
謝辞
本研究におけるアンケート調査にご協力頂きました保護者の皆様方には、多くの質問に答えて頂き、深く感謝致します。皆様方の貴重なご意見によって、卒業論文・学内発表を行うことができました。ご協力頂き、本当にありがとうございました。
以前は「育てる会会報」はHPにも全文をUPしていましたが、容量等の事情により、現在は一部抜粋にさせていただいています。
なお会報は正会員・賛助会員の方へは郵送でお届けしています。
もしご希望の方がおられましたら、ぜひ賛助会員に申し込みをお願いします。年会費 3000円です。
応援よろしくお願いします。
申込み方法の詳細は「育てる会 HP」に記載しています。