平成11年7月31日
第 15 号
岡山県自閉症児を育てる会
目次
さあ、いよいよ夏休みです
「障害のある子の歯を守るために」
7月の勉強会に参加して
夏の研修合宿参加申込のお礼とお詫び
NPO法人設立資金の助成をいただきました
「 私に出来ることは何でもしたい 」
今月のお薦め本
『 自閉症の理解 』
『 社会的自立のための指導プログラム 』
近隣の講演会の御案内
「 ハッピーバースデイ 」
青い空に入道雲がわき上がる季節です。
さあ、いよいよ待望の夏休みに突入しました。
「夏休みが恐怖だわ〜」なんて言っている人はいませんか?
子どもが一日中、家にいるこの1ケ月こそ、親が本気で子どもと関われる時だと考えてみたらどうでしょう。
きっと、実りある夏となるのではないでしょうか。
たとえば、偏食に困っているご家庭なら、本気で1ケ月子どもと向き合って取り組んでみてはどうでしょう。
間食をやめるだけで、以外と食べれるようになるかもしれません。
また、なにかお手伝いを決めて、1ケ月みっちり教えても良いでしょう。お米洗いとか、カレー作りとか、洗濯たたみとか・・きっとどんな事だって、できるようになる気がします。
子どもが家にいて大変、と考えるより、一緒に終日関われる1ケ月、と前向きにかんがえられたら、同じ1ケ月が違ったものになるような気がします。
子どもにとって“ ○年生の夏休み ”、あるいは幼稚園や保育園での“ ○○組の夏休み
”は、結局“一生に一度の夏休み”です。
例えば“小学校6年生の夏休み”は今年だけの夏休み。来年になったらもう中学生、今やっとかなければいけないことも多いはずです。お互い悔いを残さぬよう、みっちり、しっかり、一歩ずつ、やれる事からコツコツと・・・
暑さに負けずに頑張りましょう。
さて、育てる会では「ボランティア 研修会&交流会」も笑いと涙(もちろん真剣な研修もありましたが)、の内に、大成功で終わりました。
当日の詳しい様子や感想は、ボランティアボイスのコーナー に載せています。会場の熱気が伝わってくればと願っています。
6月例会 〜障害のある子の歯を守るために〜
「お口の健康に関する基礎知識」 講演会報告
T.T
6月例会は、新見の歯科医師の佐熊正史先生(同じ自閉症児のお子さんをお持ちの、育てる会会員のお父さんでもあります)にお願いして、虫歯予防週間にあわせて歯についての講演会を開いていただきました。
5月の片倉先生の講演会に比べれば、幾分こじんまりとした会でしたが、その分、みんなからの質問もいっぱいできて、アットホームな会でした。
障害児にとって虫歯の治療は、最大の難関の一つともいえるのではないでしょうか。その克服にむけてみなさん、きっといいヒントを持って帰られたのでは、と思っています。
では講演会の中から、特に印象に残ったお話を・・
まずは、早期発見。
当り前の話ですが、つい油断して遅れてしまうのが、この早期発見。それを防ぐためには、日にちを決めて忘れずに観察すること。例えば、毎月の初日とか、偶数月の月末とか・・見方は器具を使わなくても、あお向けに寝かせて、頭を自分の膝の間にはさんで上から覗き込めば、よく見えるそうです。
次に、早期治療。
これまた、当り前の話ですが、虫歯の痛みというのは、歯の神経が虫歯菌におかされ炎症を起こし、腫れようにも歯の中なので広がるに広がれず・・激痛を生じるそうです。その前なら簡単な治療で、痛みを感じないで治療できるそうです。また入れ歯というのは、あくまで異物なので、自閉症児にとっては慣れるのが大変。出来れば、たとえ虫歯になっても、入れ歯より一歩手前の状態で留めるよう、早期治療につとめましょう。
最後に、噛むことの効用。
正しく噛むということは、脳の刺激、活性化に繋がるということはよく言われていますが、それ以外にも「噛む」という行為は、脳の満腹中枢に働きかけ食べ過ぎ防止にもなるそうです。子どもの太りすぎが気になりだしたお母さん、健康な歯で、ゆっくり正しく噛んで肥満防止にも努めていきましょう。
では続いて、7月の勉強会の報告と感想文が寄せられています。
今月の勉強会より、古元順子先生がアドバイザーとして参加くださることになり、いつもにもまして有意義な勉強会となりました。それではK・Kさんよりの感想文です。
7月の「育てる会」勉強会に参加して
K・K
さる7月16日に小児精神科医の古元順子先生を囲んで「育てる会」の勉強会がありました。
当日は、出席者それぞれが自己紹介と今年の夏休みに向けて抱負などを語り、また古元先生からは、先生がはじめて自閉症のお子さんと出会ってから、医師としてのこれまでの歩みについてお話を伺いました。そのあと、後半は、今実際に子どものことで困っていることについて、先輩格のお母さんの体験談や先生からの具体的なアドバイスをいただくというかたちで進められ、2時間半があっという間に終わってしまいました。
後半の座談会では、鳥羽さんから哲平くんの過去の夏休みの体験談を興味深く伺ったり、また夏休みとは直接は関係ありませんが、子どもの、特に男の子の思春期の迎えるにあたって性の問題などで、盛り上がり、また先生からは的確なアドバイスをいただき、大変勉強になりました。
私にとって、今回の勉強会で特に印象に残ったのは、、、
古元先生が岡大の精神科医としての歩み始めた頃に、はじめて自閉症のお子さんと出会い、そして多動で目が離せないそのお子さんを親御さんから預かり、先生御自身が寝食を共にしながら、そのお子さんのケアーに全力を尽くされたこと。
また当時としては、まだ日本国内では自閉症について、今以上にわからない解明されていないことばかりで、アメリカの自閉症の専門機関で勉強されることを決心され、その後帰国してから、一貫してこどもの精神科医として今日まで歩んでこられたというお話は大変感銘し、印象に残るものでした。
先生は、これまで御自身が培ってこられた知識や経験が、少しでも自閉症児を育てている私達(親)の力になれば、とおっしゃっていただき、今回から「育てる会」の勉強会のアドバイザーを快く引き受けてくださいました。
私たちの子どもが抱えている自閉症という障害は、先生が、当時わからない不思議なことばかりだった・・・という状況と比べれば、今は随分と解明されてきたことも多いわけですが・・・
それでも、私などは日々「なんでこんな反応をするの?」、「どんな対応をしてあげたら、この子の問題を改善してあげられるんだろう?」と、やはり自分の子どものことがよくわからず、そして、もっと、もっと自閉症のことを知りたい、今、医学の最先端はどこまで進んでいるんだろうと、思う親の一人です。
そんな時、お母さん同士の体験談やちまたの口コミ情報だけでなく、長年、実際に臨床医として、数多くの自閉症のお子さんにあたられた古元先生から、過去のお子さんの心温まるエピソードを伺ったり、最近の学会報告(しかも世界の学会報告!)を学ぶことができるなんて、なんと幸運なことでしょう!!
先生は、診察ではいつも、母親として私の中で混乱している気持ちや誰にも言えない苦しみを、おだやかに、そして親身になってじっくり聞いてくださいます。
そしてその時々に応じて子どもの発達や障害に応じた様々なお話を、母親の私にでもよく理解できるようにかみ砕いて説明してくださり、様々なエピソードを交えて、母親の私を勇気づけ、励ましてくださった方です。
「うちの子、今こんなことがすごく困っているの」というお母さんはもちろん、「もっと自閉症のこと勉強したい」というお父さんも、次回からどんどん勉強会に参加されてはいかがでしょう?
きっと、今まで以上の貴重なお話がきける場になると思いますよ。
夏の研修合宿参加申し込みのお礼とお詫び
8月21・22日の合宿の申し込み受付では、開始早々よりみなさんの電話が殺到し(申込第1号は遠方よりSさんで、8時の時報と同時でした)、1時間もしないうちに定員枠がいっぱいとなりました。ありがとうございました。
その後も申し込みが続いたのですが、申し訳ありませんが、お断り(キャンセル待ち)させていただきました。
また、ボランティアの方もたくさん申し出ていただき、とてもありがたかったのですが、宿舎の都合でお断りさせていただく方もでて、申し訳ありませんでした。
傍のキャンプ地にテントを張ってでも、と考えて折衝をしてきたのですが、そちらも満員ということなので、ほんとに申し訳ない結果となりました。参加したいご家族もいて、お手伝いしていただけるボランティアさんもいらっしゃるというのに・・
来年はもっと大勢でも、希望される方がみんな参加できるような行事( 200人規模?)にできればと思っております。
参加者の御家族の方にお願いです。
合宿のしおりは後日郵送いたしますが、事前にプロフィール表と子どもの写真を、担当ボランティアさんにお送りください。
プロフィール表は、子どもとボランティアさんを繋ぐかなめのものです。しっかり書き込んでお送り下さい。
初めてのボランティアさんが子どもを知るための大切な資料ですので、できるだけ具体的に解り易いように書いてください。
また班ごとでボランティアさんを含めて事前の集まりをしてみてもいいでしょう。ボランティアさんと一度会っておくと、お互いとても安心です。
こちらでそれぞれの班長を決めさせていただきましたので、各班長さん、呼びかけてみてください。
なお、合宿のしおりの発送は8月10日前後になる予定です。(その頃に、最終的な施設の使用時間の割り振りの決定許可がでます)
また、何か事前にお手伝いいただける方がありましたら、ぜひ申し出て下さい。仕事はいっぱーいあります。よろしくお願いします。
NPO法人設立資金の助成をいただきました
7月22日、安田火災記念財団より「自閉症児の自立のために、一日も早く法人格を取得できるよう、頑張ってください」と助成金30万円をいただきました。今はまだ、水泳教室や木工教室、講演会や勉強会と、子ども達の療育だけに精一杯の私達の会ですが、将来社会に巣立って行く時の事までを考えると、今からやっておかなければならない課題も山積しています。
就労の場や、生活の場、子ども達がいきいきと楽しめる生きがいを作れる場、それらをみんなで作っていければ・・・と、将来を考えての法人格です。これから勉強会でも、NPOについてその意義や目的、目指す方向など話しあっていきたいと思っています。
また、法人化に向けてのタイムスケジュールは世話人会でつめて行きますので、その都度会報でもお知らせしていきます。
それでは、4月に寄せられたアンケートの中から、今月はS・Iさんの 〜新入学の頃を思い出して〜
です。
同じ思いをしてきたお母さんも多いと思います。これからもみんなで頑張って行きましょう、というエールを添えてご紹介します。
「私に出来ること何でもしたい!」
〜 新入学の頃を思い出して〜
S・I
我が家の場合は、当初は通う小学校になかよし学級がなくて、学級が出来るまでに悲しい想いなどもしました。
けれど、今は担任の先生がとても良くしてくださるし、子どもも先生の事が大好きで、順調に行っていて喜んでいます。
勿論、1年の間にはいろんな事があり、悩んだりもしました。
初めのうちは、親子共々学校に慣れる事で精一杯で、要求などはあまり出来ずにおりました。
安定した頃から、少しずつ交換ノートに書いて行きました。先生は、快く受けてくださる時もありますが、そうでない時は少し時間を置いて、もう一度お願いしたこともありました。
私は、自分ができる事は何でもしたいと思いました。
入学するまで、まったく文字、数字に興味のなかった子が、今では漢字の読み書きが出来るまでになりました。簡単な足し算なら出来るようになりました。そのためには、家で私が足し算や、漢字、カタカナノートなどを作り、子どもは宿題として頑張ってこれをします。それを学校で先生が見て、まるをし、ほめてくださっています。1対1で、先生もとても大変だったと思います。
私にとって嬉しい事は、子どもが子どもなりに学校というものを理解し、苦手な事も少しずつ受け入れていき・・・そして好きな友達を作り、楽しんで学校生活を送ってくれている事です。
保育園などのお友達が一緒だと心強いのですが、ウチは学区外の保育園だったので『1からのスタートだ!』と思って身構えていましたが、子ども達は本当にすんなりと、ありのままのMを受け入れてくれました。
始めのうちは『どうしてMちゃんは一人でしゃべっているの?』などと言う質問がありました。でも、しばらくすると、いつのまにか、そんな質問もなくなってきました。
最近久し振りにされた質問は、『 Mちゃんって何でそんなに背が高いの?』というものでした。何故だかすごく嬉しかったです。
Mが友達を求めている姿を見ると、「やっぱり、普通学級が良かったかナ…」
と思う時もありますが、なかよし学級にいたからこそいろんな事が吸収できたと思っています。
これからも色々事があると思います。その度にまた悩んだり、苦しんだりするとは思いますが、がんばって行こうと思っています。 新入園、新入学のお母さん達一緒に頑張りましょう。
ハッピーバースディ
ペンネムーム 松山 千春
「お誕生日おめでとう」
「プレゼントは、ゲームのソフトだよ」
「さあ、ローソクの火を吹き消して」
1年に1回めぐってくる誕生日。
お祝いの仕方は、様々あることでしょう。
いつもと違う一日。家族での楽しい雰囲気で、過ぎて行く時間です。
でも、誕生日が「プレゼントをあげる日」「ケーキを食べる日」だけになっていませんか。
「いつもと違う一日」、その違いは、プレゼントをもらえるとか、大きなケーキを食べられるということだけではありません。
その違いは、ふだん振り返らないことを振り返らせることであったり、ふだん語れないことを語ってやることだと思うのですが、どうでしょう。
今春、自閉症の子どもさんを育ててこられた親御さんが、子どもの卒業を機にと、作品展を開かれました。その作品、一つひとつを目にしたとき、「15の春」を迎えた A 君の幼い頃からの姿が思い出されました。きっとこの作品展を企画し、準備をすすめられた親御さん御自身も、そんな我が子の姿を思い起こしながら、一つひとつの作品を飾っていかれたことでしょう。子どもの作品を多くの方に見ていただくという目的はもちろんでしょうが、子どもにとっては自分の育ちの節目を感じるイベントだったのでしょうし、親御さんにとっても、子育てを振り返る節目になったことでしょう。
この子が大きくなるには、どれだけ多くの人からの思いを受けてきたかを親御さんが感じ、そのことを我が子へ語る。「15の春」を迎える我が子は、これから進む学校生活に向けての自覚をうながすことばをかけ、親としての願いを伝える。そんなこともきっとこの作品展を開くにあたり子どもに語られたに違いありません。
日常と違う節目だからこそ、子どもにできることは案外たくさんあるようです。
ことばで自分の思いをまだうまく伝えられない子どもであっても、「日常と違うある日」には、そんなことばをかけていかなくてはいけないと思います。
5才の子には5年の年月を、10才の子には10才の自覚を、15才の子には15才の夢を。
今の日常を見つめながら、日常と違う節目にはそんな語りかけをしてあげてください。
子どもへの思いをことばにして語ることは、出来ているようで出来ていないもの。親になってまだ数年間、ちょっと恥ずかしいような気もするし、子どもの心にちゃんと届いているのか不安も感じる。
子どもを育てるということは、子どもの姿をそのまま受け止めることでもあるけれど、かく育てという親の願いを伝えることでもあるのでしょう。
ハッピイバースデイ、トゥー、ユー。
子どもに伝えることばを添えて、「お誕生日、おめでとう。」
これまで「育てる会会報」はHPに全文をUPしていましたが、容量等の事情により一部抜粋とさせていただいています。
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詳細は「育てる会 HP」に記載しています。