sorry,Japanese only

平成11年9月30日

第 17 号

岡山県自閉症児を育てる会


目次

 月見に行きました 

 マンドリン コンサート の お知らせ

 療育的山登り & 絵画教室

 10月の勉強会

 自閉症児のための水泳教室 会員募集

 近隣の講演会等のご案内

 「かくたつグループ」の講演会に参加して

 「有限会社 かくたつグループ 講演会」 雑感

 長月の残暑見舞い

 自閉と向き合う 〜 7 〜


月見に行きました。

18号台風が去った25日の夜、仲秋の名月に後楽園が夜間開放されると聞いて、友人の家族と誘い合って月見の宴です。お弁当やお菓子、それにお酒もはいって心浮き立つ夜でした。
 大人達がにぎやかに話していても、子ども達は靜かです。友人の息子も我が家の息子も自閉症。並んで座っていても、お互いまったくの没交渉。静かに食事をしたり、ホーッと池の上に浮かぶ月を眺めたりしておりました。
 独特の雰囲気を持った二人は月見の宴にはぴったりで、静かで品格さえただよわせておりました。
 シートの上でゆっくり寝転んで月を見上げると、台風の後を追っかけるように、雲が飛ぶがごとく月のまわりを走り過ぎて行きました。琴の音が遠くから響いてなかなか風雅な夜でした。
 さて、いよいよ10月です、自閉症の小学生や園児には厳しかった運動会もそろそろ終わりをつげて充実の2学期です。いかがお過ごしですか?
 今月は台風の襲来で中止になった山のぼりを、10月10日に行うこともあって、例会が二つ重なる忙しい月とあいなりました。
 どうかせっかくの企画です。よりよい経験を子ども達にと願って考えた例会です。
できるだけ大勢の方の参加をお待ちいたしております。

マンドリン コンサート

 日 時:平成11年10月23日(土) 14:00 〜 15:30
  場 所:岡山大学ギターマンドリンクラブ 部室
     (岡山市鹿田町 岡大附属病院の正門を入って右手側、レンガ造りの建物 3階) 
  参加費:1家族 1,000円
  申込先:事務局 
 おしゃれをして、シンフォニーホールへクラシックの演奏会を聴きに行く。
 ホテルの最上階のレストランで、家族の記念日にフルコースのディナーを食べる。
 落ち着いた日本旅館に泊まりながら、ゆっくり家族で旅行をする。
 自閉症の子どもを持った家族である私達は、そんな当たり前の日常や、楽しみをはなからあきらめていないでしょうか?
 なにしろ名うての自閉症児たちです。初めての場所、知らない人達、初めての経験は子どもを混乱させてしまうでしょう。
パニックを恐れるあまり、人への迷惑を考えるあまり・・・私達自閉症児を育てている家族は、ついつい人並みな生活の喜びをあきらめているのではないでしょうか。
 でも、我が子たちもせっかくこの世に生まれてきたのです。
初めての場所、初めてのシチュエーションで、楽しい経験、初めての体験をいっぱいいっぱい経験させてあげたい。そう思います。
私達はもっともっと子どもを街へ連れてでるべきなんでしょう。
それが、これからの子ども達の成長の糧となるのだと信じています。
 けれど、最初からシンフォニーホールは無理でしょう。まわりの人達の迷惑顔も気になるところです。なにしろ、みなさん安くない入場料を払ってコンサートを聞きにきていらっしゃいます。親にも子にも訓練の場が必要です。
 少しずつでも、スモールステップで慣らしてあげたい。
そんな私達親の願いを理解してくださって、岡山大学のギターマンドリンクラブの方達が子ども達のためにコンサートを開いてくださることになりました。感謝です。
 あたたかい善意に包まれたコンサートです。自閉症児のためのコンサートです。
家族、兄弟でそろってご参加ください。何人来られても一家族 1,000円です。大勢の人がお手本になって、子どもにきちんと着席すること、静かに聴くこと、そして心から音楽を楽しむ事を伝えられたら・・・そう願っています。
 従ってボランティアの方、賛助会員の方は参加費は無料です。どうぞ大勢ご参加ください。
秋風とともに、やさしいマンドリンやギターの音色が、子ども達の心の中に響いてくれると思っています。

長月の残暑見舞い

 ペンネーム 松山 千春

 「残暑きびしい毎日ですが、こちらではすでに稲刈りが始まり、秋本番を迎えました。ごぶさたしております。」
以前教えた子どもの親御さんからお手紙をいただきました。
小さい頃にことばがなかなかでなかった子ども。クラスの中で「ワーワー」言っていた子ども。進路に不安がある親。様々なことが、新しい出会いを生み出してくれます。指導者は、その場で出来ることを行い、親との話も真摯にやっていきます。そんな出会いを経て、何年かともに過ごした子どもの、その後の成長がうかがえる便りはうれしいものです。
 その子は、初対面の時に、「私は病院に行かないとダメなんです。だからここには来たくないんです。」と私の教室にくることを拒否しました。
「担任の先生が(この教室に)行けって言うんです。(学校では)私は(どうしても)怒ってしまうんです。」
その子は、毎日学校でうまくいかないことをたくさんかかえ、自分ではその行動を抑制し、落ち着いた生活を取り戻すすべを見つけられないようでした。
その子のことばは続きます。「イヤだ! もうイヤ!。先生は山賊だ。」「学校もやめたい。」

人は、ことばを相手に伝えるために使います。しかし、ことばは「伝える」ということだけが役割ではありません。
「ワーワー言う」というのは、
「イヤだよー。」
「助けてくれー。」
「おしっこ、おしっこ。」
「私はこんなとこイヤなんです。帰ります。」
「絶対、しない!」
といったたぐいのことばであることが多いようです。それを「伝えることば」ととらえ、そのまま受け取ると、「この子は、ほんとにこれがいやなんだ。かわいそうに。」という解釈になります。
その解釈だけで対応すると、「いいよ。それじゃあ やめておこうね。」「帰ろうね。」ということばを返すことになりますね。もちろん、そういう助け舟を出してあげることも多いと思うのですが、そうでない場面もたくさんあるように思います。
ことばには、「自分を律する」働きもあります。お化け屋敷に入るときに
「こわくない、こわくない。」といいながら入ることはありませんか。
「タバコはやめる。」と口にするのも律する働きに期待してのことばです。
「ワーワー」言う子は、ことばを駆使してマイペースを続け、新たなチャレンジを上手に回避します。また、うまくできないことを「こんなのしたくない。」、「絶対、いやー!」「やめろー! やめてくれー!」としゃべることで、自分をヒートアップさせている、と感じることがよくあります。自分を律することばではなく、自分を混乱させることばを発しつづけるのです。
 
あの子には、こう声をかけました。
「本当は学校辞めたくないよね。」
『だって、怒ってしまうんです。』
「怒ってしまうってことがなくなれば、やめなくてもいいわけだ。怒ってしまうってことがなくなるように練習すれば、学校にも行けるし、友達とも仲良くできるし、勉強もできるね。」
『うーん。もし、また怒ってしまったら?』
「あなたが一人でできないことは、先生がいっしょにしてあげる。」
『ウン。』
『でも、途中でグループと別行動してしまうんです。それが原因なんです。』
「そこを抜け出さずにやれるようになると、楽になるんだ。さっき、一緒にゲームをやった時は、抜けずにできたよね。」
『ウン、わかりました。』
 ことばの影には、がんばってやりたい、落ち着いて過ごしたい、という気持ちが必ずあるはずです。幼い子どもで、まだそういう気持ちが育っていないのならば、その気持ちこそこれから育てなければならない気持ちです。
 ことばが落ち着いた暮らしから離れていく方向に向いているとき、そのことばは静かに打ち消し、混乱をきれいに切り替え、難所はしっかり支え、自信をもたせる。そこから初めて、自発性とか興味関心とかが広がっていくのではないでしょうか。ことばに操られる子どもでなく、親でなく。
 学校で,ワーワー言っていたどころではなかったあの子も、もう中学2年生。
「運動会の実行委員に立候補し、毎日帰宅が夕方6時頃になるほど、はりきってやってます。今年は、みんなの前でラジオ体操をするのだそうです。私の方がドキドキします。今、(我が子は)生き生きとしています。」
「では、時節柄、お体、ご自愛ください。」
この原稿を書き上げたら、運動会を終えたあの子へ手紙を書こうと思います。

これまで「育てる会会報」はHPに全文をUPしていましたが、容量等の事情により、一部抜粋にさせていただいています。

今後は、会報は会員の方への郵送でお届いたしますので、ご希望の方は賛助会員に申し込みをお願いします。
詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

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