sorry,Japanese only
『 ぼくらの発達障害者支援法 』
カイパパ:編著 ぶどう社 定価:1600円+税
ISBN4-89240-180-3 C0036 \1600E
自閉症の関係者で、ネットに親しんでおられる方ならよくご存知のカイパパさんの活動が本になりました。
「自閉症スペクタル」(注:自閉症スペクトラムではありません、念のため)のブログ上で、「発達障害者支援法」が法案の頃から成立にいたるまで、カイパパさんや多くの方たち、その関わってきた経過がリアルタイムで綴られています。
この法案を「ぼくら」のものにするために、発達障害児 (カイパパさんの「自閉症スペクタル」というブログなので、おもに自閉症児の親の方が多かったのですが)を持つ親の方や、自閉症スペクトラムのご本人の方たちが多くの意見を書き込み、それをカイパパさんが発達障害者支援法を審議している国会議員の方に届けるという形をとっています。
一人ひとりの声は小さくても、また個人的な思いのものであっても、それが集まれば大きな流れとなって人を動かすような大河となります。
「発達障害者支援法の成立を願う120人の当事者の意見書」 カイパパさんがブログで行なったキャンペーンに応えて寄せられた意見をまとめて、日本自閉症協会の氏田副会長を介して議員の方たちに届けられた意見書です。
これまではどちらかというと、ネットの世界での発言はその匿名性のため、現実の政治と関わることは少なかった、あるいは軽視されたり認められなかった・・という傾向にあったと思います。
しかし、寄せられた120人もの方たちの意見は、当事者だからこその真剣さ、切実さ、そして願いがこもっていて、それが真実の声であることはこれを受け取られた議員のみなさんにも間違いなく伝わったことと思います。そしてその声に後押しされる形で、待望の発達障害支援法が成立しました。
「死ぬつもりだった」 ゆっくり、妻は話し始めました。
「息子の背が伸びるたび、大きいサイズの服を買うたび、無事で成長してくれたことは嬉しい。でも、反面、すごく不安になる。私よりも、背が高くなったとき、力が強くなったとき、どう対処していいのかわからない。子どもが、成長するのが怖い。自分がこんなに弱い母親であることが、一番いけないことのような気がする。私がいないほうが、この子のために良いような気がする」
玄関に置いてあった、息子の写真を持って、車ごと海に飛び込もう、または岸壁におもいきりぶつかろう、そう思っていたようです。
「でも、できなかったよ・・・・」 泣き崩れる妻の姿に、自分が情けなく感じました。
父親として、夫として、支えてやれなかった。こんなにまで思い詰めていた妻の、普段の様子をもっとよくみてやりたい。私は職場で「異動願い」を出し、もう少し家庭に寄り添いたいと思いました。
(「120人の意見書」より Posted by “家庭を守りたい普通の父親です”)
その“普通の父親”さんも、「“こどもの成長”が喜びではなく、不安の方が大きいという今の私たちには、やはりなんらかの公的な支えがあれば、とても心強いものになるでしょう」とこの法律の成立を願っておられます。
思いはみんな同じだったのではないでしょうか。
でもその思いをまとめて、核となって、届けていただけたのは、カイパパさんの行動力があったからだと思います。
そしてそのポジティブな活動により、この法律がまさに「ぼくらの発達障害支援法」となったわけですね。
発達障害支援法については、その後成立した障害者自立支援法と比較されて、実効性をもたない理念法の段階にあるという意見もあります。
それに対しては、本書のカイパパさんと、この法律の設立に尽力された福島豊議員(私たちと同じく、自閉症児をお持ちのお父さんでもあります)との対談の中にその答えがあるように思います。
もう一つ(最初の話題は発達障害者支援センター)は、それぞれの自治体が何をしなくてはいけないかということを規定したわけですから。やるかやらないかという話にしても、それぞれの議会で、この法律を受けて市当局に迫ることができるようになったわけです。
また市当局にしても、こういうことになぜ予算を付けるのかという話になった時、ちゃんと法律があるじゃないですかと説明できるわけです。これは何もないところで予算を付けるよりも、はるかに説明しやすくなったと思います。
ですから、それぞれの地域で、この法律をバックに、いろいろやっていただければいいなと思っています。
(福島 豊 衆議院議員)
この法律を、本当の意味で「ぼくらの発達障害支援法」とするのは、これからの私たちの活動にかかっているということでしょう。
単に「理念法」に終わらすのか、本人にとって実りのある法律とすることができるのか、全ては私たちが決めることになるのですね。
いっしょにがんがりましょう。
(「会報95号」 2006.3)
目次
はじめまして
カイパパって、なに?
〈 カイパパ通信 〉って、なに?
『 ぼくらの発達障害者支援法 』のコンセプト
第1章 ぼくらの思いが法をつくる
〜発達障害者支援法ができるまで〜
1章 〈 カイパパ通信 〉を舞台に
− 声は届いた!
* 仲間との励ましあいや国に対するアクションを、ブログ記事を通して、一緒に追体験してみませんか?
きっと、感動と勇気がわいてきます。
1 小さな記事から
2 発達障害者支援法の成立キャンペーン開始!
3 「マイ施策提案会議」のススメ
4 いよいよ国会へ
5 当事者の意見書と法の成立
6 すべての涙が乾くとき
2章 耳をすませば
− 「発達障害者支援法の成立を願う 120人の当事者の意見書」
* すべての人に読んでもらいたい・・・切実な生の声は、立場を超えて、それぞれの心に届くはず。
そして、、この声は国会にも届きました。
1 親からの意見 〔 幼児期 〕
2 親からの意見 〔 学齢期 〕
3 親からの意見 〔 青年・成人期 〕
4 本人からの意見 〔 高機能自閉症・アスペルガー症候群 〕
第2部 ぼくらの発達障害者支援法
〜「7つの支援」をキーワードに〜
3章 発達障害者支援法ツリー
− ぼくらが使える法律へ
* とにかく、この法律を、やさしく早く理解したい人は必読です。
あなたは、人生のどのステージの支援を必要としていますか?
また、どんな立場から支援を考えていますか?
さっそく、発達障害者支援法ツリーに飛び込んでみてください。
1 安心してしあわせに暮らしていくための「7つの支援」
2 発達障害者支援法ツリー
7つの支援ツリー
7つの支援根ッコワーク
3 一緒に「7つの支援」を完成させていくプロセス
4章 「うちの子」から 日本中の人のしあわせのために
− 福島豊議員へのインタビュー
* 発達障害者支援法の生みの親である福島議員は、発達障害をもつお子さんの親でもあります。
この法律の根底に流れる「当事者の視点」に、納得の解説です。
法律の誕生と経緯と込められた思いを知りたい方に。
5章 発達障害者支援法がもつポジティブな可能性
− 大塚晃障害福祉専門官へのインタビュー
* 発達障害者って、どうとらえていくの? 障害福祉の未来は?
発達障害者支援法のめざすビジョンから、この法律の「現在」と「これから」が見えてきます。
国や行政の考えを知りたい方にも、オススメ。
第3部 ぼくらのまちの発達障害者支援法
〜「ぼくらの」ものにする試み〜
6章 一緒につくろう! マイ施策提案会議
− 発達障害者支援法を具体化するアイデア会議マニュアル
* いざ何からとりかかったらいいのかわからない・・・と二の足を踏んでいる、あらゆる立場の皆さんに!
楽しく、パートナーシップを育みながら、必要な支援を見つけるノウハウを紹介します。
1 マイ施策提案会議をやってみよう!
2 会議の進め方マニュアル
3 マイ施策提案会議のイミ
7章 ぼくらの発達障害者支援センターづくり
− 名古屋発ぼくらの実践レポート
* マイ施策ができたら、次はアクションです!
一足早く始まった、名古屋市の当事者からのマイ施策実践レポートです。
是非、皆さんの地域での参考にしてください。
1 ある日突然、「名古屋市発達障害者支援センター」
2 NASプロジェクト
3 名古屋市に、ぼくらの発達障害者支援センターを
− NASプロジェクトリーダー、ジョーさんへのインタビュー
4 マイ支援センター提案会議
5 当事者からの提案書ができた!
6 ともにつくる「ぼくらの発達障害者支援センター」
資料 通達 「発達障害者支援法の施行について」
あとがき
「お薦めの一冊」目次へ