sorry,Japanese only

平成18年3月31日

 

 第95号 

NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会

 春休みに・・
 18年度 支援者養成セミナー 日時決定!
 支援者養成講座報告 & 即★実践講座!参加者募集
 総会 & ボランティア研修会 について
 TEACCH実践報告会に参加して
 すすむっちreport from Lincoln,USA
       〜 「さんぱつ」の巻 〜 
 会員対象 事業 (AAO説明会、サッカークラブ、水泳教室)
 オススメ本 紹介
         「ぼくらの発達障害支援法」
 近隣の講演会のご案内
 掲示板・子育てコラム・事務局だより

暖かい日が続いたと思うと、急に寒さがぶり返し3月の末というのに、今夜は自動車のフロントガラスが凍りました。
それでも日差しが暖かいのは、やっぱり春がそこまで来ている証拠です。
桜の開花も待たれる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
春休みでもゆったりと過ごされているような家はありますか?
自閉症の子ども達がいる家庭では、一日中子どもに付き合って、「精も根も尽き果てた・・・。早く学校が始まって欲しい」というのが、本音ではないでしょうか?
お会いする学齢期のお母さんたちが、口をそろえてそのように言われます。
昔は私もそうでした。
でも、我が家ではそんな休みは、哲平が小学校5年の時に、終わりを告げました。
長期の休みを利用して、前向きに哲平と関わっていこうと決心をしたからです。
当時はまだ多動で、目を離すとどこかへ行ってしまう哲平を何とかしたくて、目を離さない為には、一緒にいればいいのだ。
一緒にいるためには、家事を一緒にするしかない。
それでついでなら、家事を教えて私も楽がしたい。「一石三鳥」を狙っての取り組みでした。
それ以降、学校が始まってからもお手伝いが大好きな人になって、社会人となった現在も続けてくれています。大変、たいへんと思うより、一緒にやればいいのです。
子育ての後追いではなく、前向きに子どもと一緒にできることを取り組んでみたら、生活も楽しくなります。
教育を、学校だけに任せているのは、もったいないと思います。
学校は大切な教育の場ですが、家庭も子どもにとっての大切な学ぶ場であると、私は思います。学校は自閉症の子に、集団や人に合わせることを学ぶ場所にはなります。また、適切な個別支援のもと、学習スキルを身につけていく場であることは、当然です。
でも、社会のルールや、コミュニケーションスキルなど、時間をかけてじっくり取り組んでいかなければならないことを教える場としては、無理があるようにも思います。カリキュラムが決まっていて、時間が限られている学校では、長い期間を経なければ身に付かないこういったスキルを身につけていくことには、適さないのではないでしょうか。担任が変われば引継ぎ等に時間がかかり、またイチからの取り組みになることもしばしばです。そういう意味で、親が教えることは、一貫した継続性という意味からもとてもいいと思います。
また一日中一緒にいられる子ども時代に、自立へ向けての様々なスキルを身につけるための時間を持つことが、親子の関係を作っていくということを、経験から学びました。
教えてくれる人(親)と、教えられる人(子)という位置づけが、社会性を学ぶ上でもとても大切なことに思えます。当然そこでは、家事スキルの向上もあるわけです。
おまけに、時間を持て余すことはないので、問題行動も少なくなります。
家事をすることで褒められ、しかも我が家はその対価を支払いますので、お小遣いもたまります。そして、そのお小遣いを持って買いものにいくという勉強もできます。そこではお金の計算や、実際の場での適切な買い物のルールが学べます。
そして買いたいものがあることで、お手伝いをもっとしたいという、将来における働くことへの動機づけに繋がります。
それが、就労へ向けての本人なりの目的意識を育てました。哲平のお手伝いの動機は、「お金儲け」です。お給料をもらって、好きな映画のビデオやDVDを買いたいというのが、哲平の就労に向けての意欲となりました。そのための「お仕事がんばります!」です。
このようにとんとん拍子にうまくいくようになったきっかけは、あの10歳の時の決心からでした。
皆さんも、子どもの夏休み支援計画を立ててみませんか?
お手伝いをしますよ。
さて、この3月は大忙しでした。
育てる会に関しては、児童デイサービス赤磐ぐんぐんの一年のまとめの時期です。
個別支援計画の評価と新たな計画作りの時期でもあります。
そして、療育実施日数を増やすことに伴い、新規の利用の方の為の構造化準備とスタッフの増員。担当者の変更に伴う引継ぎ作業。新スタッフ研修。
事業拡大に伴う事務の増大。それに加えて障害者自立支援法への対応・・・などなど と。
全く忙しい中、私一人、年のせいか、少々(?)ボケが進んで、忘れっぽい状態です。
みんなの力を借りて、代表の役割を、なんとかこなしている状態です。
哲平に関することでは、
・・・東備養護学校高等部を卒業しました。
・・・その10日後、NTNテクニカルサービス株式会社に就職をしました。
・・・その間を利用して、4泊5日の卒業旅行に家族で九州へ行ってきました。
・・・また、アートリンクの取り組みで、初めてNHKテレビに出していただきました。
会報でおしゃべりしたいことは、山のようにありますが、お父さんがブログでいろいろ書いているので、詳しいことは見てやってください。
その中で、我が家にとって一番大きな出来事である哲平の就労についての部分を、以下に引用したいと思います。私が書くより早く、お父さんが書いてくれました。夫婦の思いは同じです。長い間、待ちに待った息子の就労です。この日を迎えられる喜びは、言葉では表せないものです。「この日の為に私は生きてきたような気がする」なんて思ったりして、涙が止まらなくなって困りました。
育てる会 代表  鳥羽 美千子

 2006年03月28日

 夢工房 開所式・・・

昨日27日、哲平の就職の決まった職場で「開所式」が行なわれました。先週の月曜日、20日から勤め始めていたのですが、本格的なセレモニーということで、私たちも招待されて参加しました。
会社に着いてみると、入り口横には三菱の新型車が「夢工房」のロゴがついて駐車してあります。工場に入ると、実習の時にはパーテーションで仕切られていた
(それだけでも感激したのですが)工場の一画に立派な部屋ができあがっています。中は作業スペースに事務スペース、休憩場所も大きく取ってあり、それぞれの場所はパーテーションや書棚で仕切られていて、自閉症の哲平にとってわかりやすくなっています。もっとも、このような構造化は効率を上げるため、一般の会社では当然のことなのでしょうか (^.^)
作業スペースも広くて、これなら5人でも10人でも作業できそうです。着いた時は、まだ式の開始時には間があり、哲平と指導員の方お二人が作業されていました。哲平一人に、指導の方お二人の3人でチームを組んでの作業です。小学校時代の、先生と完全マンツーマンの2人の教室以上に手厚い指導で、感謝です。
哲平が慣れてきたら、順次、次の方を採用して、次第に人数を増やしていかれる予定とのことです。それまではジグや教え方のノウハウを蓄積して・・・なにしろ、哲平が第1期生、それを祝っての「夢工房開所式」です。ある意味、哲平の責任重大ですね (^_^;)
やがて、大阪から社長も到着され、NTN岡山工場からも所長や工場長、テクニカルサービスの営業所長の方々も参列していただいて、いよいよ式の始まりです。
20名ほどの大人の皆さんに囲まれ、今日の主役の哲平・・・のはずですが、哲平は相変わらずのマイペースで、大きなあくびを連発です。仕事の間は、やることもわかってきているので集中して取り組めるのですが、こんな式典、何が始まるのかもわからず、ただ並んで社長のお話を聞いている・・・となると、あくびもでるのでしょう(^_^;)
そういえば、式の始まる前に、お祝いにかけつけていただいた養護学校の校長先生とこんな話をしました。 
「卒業式はなんどもリハーサルできるので、流れもわかっていたと思うのですが、こんな開所式は生まれて初めて・・ぶっつけ本番で、うまくいってくれるといいのですけど・・・」
式次第もいただいたのですが、会社のみなさん方に次々にお礼の挨拶をしているうちに、式が始まり哲平には伝えられませんでした。
予想通り、大あくびやひとり言が出かかって・・・、式の最中、隣で注意もできず、冷や汗の連続・・・となるはずが、実は、・・・では、なかったです。
ホントなら、ハラハラドキドキとなるはずのところが、哲平のあくびにも 「まだまだ、だな」とクスッと微笑んで見ていられました。それほど、参列しているみなさんの視線が暖かかったです。
哲平の後ろから、そっとサポートしていただいている西山さん「息子のつもりで・・」、花束を渡してくれた満面の笑みの今村さん、一緒に写真を撮ってと、肩を抱いていただいた高津さん、素晴らしい皆さんに囲まれて、親としてとても幸せな開所式でした。
式が終わって、全員での記念撮影が終わったあとも、花束を持った哲平の周りに代わる代わるみなさんが集まってポーズをとって写真撮影です。
でも、真ん中の哲平ひとり・・・相変わらずのポーカーフェイスで (^_^;)
忙しい中、集まっていただいた会社のみなさん、おそらくこの部屋を一歩出て日常の業務につかれれば、生産性の向上やラインの効率化など、会社の利益維持・増大のために、また全力で取り組まれる方々だと思います。
でも一方では、現在、退職されたあと、ボランティアとして力を注いでいただける方も増えています。人は誰しも、会社のためや、自分のため家族のために全力を注がれる一方、他の人のために無償で何かをするということに、同じ人間として喜びを感じていただける存在なのかもしれませんね。
開所式の中、哲平を見守ってくださるみなさんの瞳の奥にそんな優しさを感じました。
人間まだまだ捨てたもんじゃない・・・殺伐としたニュースや、私たちをとりまく環境には厳しいものもありますが、人の温かさに触れ、改めて人というものを信じる喜びを感じた一日でした。
(ブログ「自閉の北斗星」http://blog.livedoor.jp/tochitaro/より)

支援者養成講座 報告 

自閉症の子の担任になったけれどどんな風に関わって行けば良いのか、困っていらっしゃる先生。この講座はそんな先生方のための勉強会です。
第6回の講座では、3月3日(金)大阪府立藤井寺養護学校の重松孝治先生をおまねきして、「引継ぎについて」の講義をしていただきました。赤磐ぐんぐんでの資料を元にしながら、チームで仕事をする中で、何故情報を共有化する必要があるのか。どのようにすれば、客観的で誰でも見て分かるわかり易い資料が作れるのかなどのお話を具体例を挙げながら教えていただきました。
最後である第7回の講座は、3月31日(金)に「児童デイサービスセンター赤磐ぐんぐん」の取り組みについて発表しました。
赤磐ぐんぐんは、「子どもの将来の自立を見据えた支援を、幼児期から継続的に行いたい」と願っての療育の場です。そのために指針として、TEACCHモデルを参考にしています。まだまだ未熟ではありますが、一年間の取り組みをお話させていただきました。今後とも2年目3年目に向けて、一層頑張っていきたいと思っております。実際の療育の部屋も見学していただいて、参加者の質問に答えたり、構造化の工夫について説明させていただきました。

 第3期 支援者養成講座 案内

18年度は 重松孝治先生による「自閉症児への支援:実践編」を講義と演習のセットでお願いしています。
即!実践につなげることのできる先生対象の講座です。

 現場の先生のための 即★戦力講座

学校現場で先生方が悩まれることは色々あると思います。
例えば・・・
初めて担任することになった自閉症の子どもへの関わり方
実際に今悩んでいる問題への対処方法
その子にあった構造化のやり方
その子にあった教材作り     などなど・・・。
「知りたいことはいっぱいあるけど、そういうことを系統立てて、学ぶチャンスがない」
「講演会だけではよく分からない。実際に目の前にいる子どもにどう生かしていいか分からない」
そんな現場からの「こんな講座があったらなぁ」の夢が 重松孝治先生プロデュースで実現します!!
全10回で講義&演習を毎回取り入れていただき、質問などにもしっかり答えていただきます。
1回2時間で、各回のテーマは以下の通りです。
T  5月:自閉症の特性について
U  6月:評価について
V  7月:観察のポイント
W  9月:構造化のアイデア
X 10月:子どもにあった教材作り
Y 11月:コミュニケーション
Z 12月:コミュニケーション・プログラムの演習
[  1月:余暇について
\  2月:問題行動の理解と支援
]  3月:構造化の組立てと教え方の技術

  毎月 金曜日の夜19:00〜21:00(4・8月を除く全10回)


第1回 支援者養成講座

日 時 : 平成18年5月12日(金) 19:00〜21:00
場 所 : きらめきプラザ(岡山市南方)
テーマ : 自閉症の特性について
講 師 : 重松 孝治 先生 (藤井寺養護学校)
対 象 : 学校教職員・保育士やそれを志す人対象。
       施設・福祉関係職員も可。
       (申し訳ありませんが、保護者対象ではありません)
       ※育てる会 賛助会員限定(当日入会も可)
参加費 : 16,000円(一括) 
       やむをえず欠席の回がある場合は、ビデオをお送りします。
申込先 : 育てる会事務局(086-955-6758) 4月28日まで
      参加費は5月の第一回目の際、会場にて受け取ります。
       5月を欠席される方は、振込み先をお伝えしますので、ご連絡ください。

ボランティア研修会のご案内

ボランティア研修会を今年も下記の日程で行います。
「自閉症」「ボランティア」「経験」などのキーワードが気になる方、ぜひご参加ください!
【日 時】 平成18年5月20日(土)
【場 所】 岡山県生涯学習センター
【参加費】 無料
【内 容】 「自閉症とその支援方法について」講師:岸本和美先生(養護学校教諭)
      自閉症を取り上げた映画やドラマの上映
      ビデオによる育てる会活動紹介  など(内容は変更する場合があります)
【申込先】 育てる会事務局
詳しくは次回会報にて再掲します。
研修会には参加できないけれど、ボランティアに興味のある方も、事務局までお問い合わせください。


TEACCH実践報告会

3月25日・26日と、川崎医療福祉大学で開催された「2006年度TEACCHモデル実践報告会」に2日間、参加してきました。
全国各地における自閉症への支援の現状について、実際に支援をしている方々からのお話です。
発達支援センターの話、施設の話、学校現場での話、療育機関での話など、本当にたくさんの情報と刺激で、頭も胸もいっぱいです。
その中の様子を少しだけ皆様に紹介します。
言葉足らずで、分かりづらい部分もあるかと思いますがご容赦ください。

「ライフサポートここはうす 3年間の歩み 〜家庭との連携の中で〜」

(ライフサポートここはうす:桑原綾子氏)

愛媛県にある「ライフサポートここはうす」での実践報告です。
「ライフサポートここはうす」は、個別相談 自立生活支援 タイム・ナイトケア 訪問相談 スタッフ派遣 などの事業を行っておられます。
1.個別相談では、子どもたちの発達や支援について検査を実施したり、個別的な相談を受けたり。
  そこでの内容は、子どもたちが受ける支援の内容などに反映されます。
2.自立生活支援では、将来の自立的な生活を目指して、様々なスキルアップのための支援を行っておられます。
  新しいスキルの獲得を目指す、身につけたスキルの般化を目指すための支援も含みます。
3.タイム・ナイトケアでは、余暇活動を中心に、安全に過ごしてもらうための事業です。
4.訪問相談では、家庭・学校・幼稚園などに出向き、その場で相談を受けます。
5.スタッフ派遣では、市町村が実施しているデイサービスや施設に出向き、相談を受けたり学習会の講師などをしたりしておられるそうです。
その中で、私が特に興味をひかれたものを紹介します。
「お出かけしよう企画 〜リベンジ〜」についてのお話がありました。
ご家庭の中で一度はある「もう二度と行きたくないほど大失敗してしまった場所」へスタッフと保護者が、しっかり綿密な準備をして「リベンジ」するそうです。
混乱が大きかった分だけ、リベンジは大変。そして、保護者の協力が絶対必要です。
まず、「どういった点でつまずいたか」をしっかり分析します。次に普段本人が使用しているスケジュールや手順書などを使い、どうやったら本人に分かるように伝えられるかを考えます。そして公共の場や施設・お店など、現地の人と相談し、打合せをしっかり行います。
これらの点を充分に行った後、本人への情報提供し、分かるように再構造化を行ないます。
もしリベンジが成功すれば、本人が行ける場は増えますし、本人も保護者も「できた」という達成感と自信が生まれます。新しい場所へ行くことを恐れるのではなく、かといって何も支援策を考えずに連れていくのでもなく、綿密な準備と打ち合わせ、そして実際に本人への適切な支援と臨機応変なフォローアップ。これができてこそ、新しく行ける場所はどんどん増えるのではないでしょうか?
また余暇支援については、他にも最近の子がよく行く場所などをボランティアさんから聞いて、ゲームセンターやカラオケ、ボウリング場などへも挑戦しているそうです。
カラオケでは、本人が好きな曲を予めリストにしておいて、その中から本人に選んでもらうことで、自立して唄う練習をしています。
ボウリングでは、数が分からない子どものために、1つ投げるごとにビー玉を缶に入れていき、「全部なくなったらおしまい」を示したり、順番が待てない子どものためには、一緒に行く子どもの写真リストを作成して「今○○くんが投げてるね」と投げるべき子どもの横にマークをつけて、移動させることによって、自分がいつ投げられるのかを見通しをつけてあげたりする工夫が見られました。
プールで帽子をかぶるのが嫌なお子さんがいて、市営プールの場合「必ずかぶりましょう」のルールがあったため、苦情が出た際、スタッフがプールの管理人さんへ向けて「今この子がどういう状態で、なぜ帽子がかぶれないか」という点を説明し、「今どういう取り組みを行って、この子に帽子をかぶることを伝えているのか」という点まで説明することで、周囲の方々が理解してくださり、その中で実際にかぶれるようになったエピソードなども紹介されました。
他にも身体を動かす教室や料理に取り組む教室、買い物に行ったり、外食したり・・・。たくさんのサービスを提供しておられる様子をスライド中心に紹介していただきました。
様々なお出かけ企画などの原点には、
「子ども達の普段の力を育てておくこと」
「保護者としっかり話し合いをもてる関係作りをすること」
そして「地域の力と理解を得る努力をすること」
があると感じました。
今後は、実態に合わせた事業の展開を目指し、「自分の人生には価値があるんだ」と子ども・保護者・スタッフ皆が思えるように支援していきたい、とまとめられました。
多くの実践をしておられる様子に、「育てる会での事業」についても活かせる部分があり、とても参考になりました。
 ★ライフサポートここはうすのHP  http://www.comiken.net/ ★

「診療所での実践 〜絵カードを利用して〜」

(京都市児童福祉センター:北村佳世子氏)

「京都市児童福祉センター」で実際に使用しておられる絵カードについてのお話でした。
絵カードを使用するかどうかは、普段の生活で見ている人は勿論のこと、チラっとでも見てくれるのであれば、使用できると判断しているそうです。知的障害の有無やIQの高低に関わらず、自閉症の特性として「見通しを持たせてあげる」ために、何が起こるかを伝えているそうです。
★絵カードを使う際のポイント
*声かけは少なめで、言葉は短く、どうするのかを伝える
*見通しが持てるようにする
*静かな場所で説明する
絵カード以外の工夫としては
「写真や実物を見せたり、お手本(モデル)を示す」
「文字が読める子には文字を添える」
「事前の説明・場所の見学・リハーサルなどをする」
「ご褒美として、頑張ったら何か本人の嬉しいことを準備する」
「保護者としっかり打ち合わせをしておく」
などがあるそうです。
子ども達が苦手とする耳鼻科やCT検査・脳波検査などが、安全にしっかり診てもらえている様子がビデオで紹介されていました。
絵カードが全ての子どもに有効な訳ではありませんし、時にはビデオ学習が有効かもしれません。実際に治療している方を隣で見て、次に自分が行った方が理解しやすい子どももいるでしょう。
このような「自閉症に特化した」支援を医療機関が工夫して考えてくださっていることが、とてもありがたいことだと感じました。
 ★医療用絵カード http://web.kyoto-inet.or.jp/org/atoz3/ask/card/card.html ★

2日間で、多くの実践が紹介されていて、本当にここには紹介しきれません。
つたない文章で申し訳ないのですが、参加されていない方にも、ぜひこの感動をお伝えしたいと思います。次回の会報でも、続きを掲載いたします。
7月に育てる会でお招きする新澤伸子先生のお話も、次回紹介したいと思います。

日本各地で頑張っている実践者の方々のお話に触れることができ、また色々なアイディア・エネルギーをいただきました。
今後とも育てる会の活動につなげていきたいと思いました。

(育てる会事務局 鳥羽紗代)

  子育てコラム

前回・前々回のコラムで、「チェリーママ」さんから、障害告知についての投稿をいただきました。今回はいよいよ告知についてのお話です。どうぞお読みください。


「 伝えられた日 」  (チェリーママさんより)

私の密かな決断から3ヶ月が経ち、3年生の新学期を迎えていました。
一番気になるのは、担任の先生。どんな方であるかは公表の中で欠かせない条件です。娘にはあの12月の事件から支援の先生が、国・数・体の時間についてもらえるようになり、以前よりも落ち着きを取り戻していましたが、クラスも担任も変わって娘にとっては辛い季節の始まりでもあるため、なるべく娘の障害を理解し支援の方法を一緒に考え歩んでくださる方だったらいいなと、ちょっと贅沢かもしれませんが、そんな気持ちでした。
そして始業式。担任の先生は、以前兄の担任もしていただいたことのあるS先生。実をいうとS先生だったらいいなと思っていたので、3年生のうちに、他の条件も整えば公表へと結び付けられると確信しました。もちろんT.Tという形で支援の先生もついてくださり、環境も整ってきたという安心感も感じ取れたからです。
1学期の娘は、小さなトラブルも繰り返しながらではありますが、先生方に娘の思いを相手に代弁してもらいながら、どうにか友達と過ごすことができ、見通しの効かないことに対し、事前に行事内容や変更内容を確認し、担任や母親の方から伝えるなどし、苦手なことは、ビデオに撮ったり、家で練習したりして娘も頑張ってくれました。
そして迎えた2学期。運動会に備え夏休み中からダンスやリズム体操をビデオで把握させたり、スケジュール表を作成し、学校と家庭と連携して、スムーズに活動できるよう対応するなど、運動会も無事参加することができました。が、しかし。運動会1週間前から少しずつ娘の状態は不安定になりつつあり、心の変化が表面化してきていました。
友達と会話中、話の内容が前後して嘘をついていると言われたり、初めは一緒にふざけていて途中から嫌と言えずトラブルになったり、以前のトラブルを思い出して叩いたり、友達の給食の食べ方が気に入らない・帰りの会で騒いでいる人が許せないと叩く、前日のトラブルを思い出し椅子を投げるなど。今までの直接的に嫌なことを言われた・されたことでのトラブルではなく、自分から仕掛けていく、イライラ感を処理しきれず爆発・フラッシュバックで苦しむようになりました。
すぐに学校と話し合い、T.Tの先生との1対1授業に切り替えてもらいましたが、朝「学校へ行きたくない。友達とうまくやれないもん。
私はダメな子だから」と訴えたり、周りの人を拒否する言動が見受けられるようになりました。
そのため登下校は、私が毎日付き添い、学校の門やピロティーで先生が迎えてもらったり、授業の内容も、娘の得意なことを中心に、嫌がることは無理にさせない、クラスの中に入れそうな場合は短時間でもよいこととする。そうして少しずつではありますが、娘も落ち着きを取り戻して行きました。
私の心中では、いよいよチャンスが巡ってきたという思いでした。娘が他人との違いに気付き始めていること、友達も障害を理解できる年齢に達してきていることや、娘の言動に不信感・先生の対応に疑問を持ち始めていること、そしてクラスの中で過ごす際に子ども達レベルで娘に対応できるスキルを身につけてもらうことにより、トラブルを回避できる可能性が高くなるし、周りの環境を整えなければ同じことの繰り返しになると考えました。
そして鳥羽代表に再び相談し、具体的に進めていくことになったのですが、その秘策として、発達障害支援センターの先生に学校で公表をするために相談に乗ってもらい一緒に話をしてもらえるようにすることでした。
学校からセンターに連絡を取ってもらい、学年の先生・校長先生・教頭先生・T.Tの先生・保護者を含めての研修と話し合いをしながら公表につなげるために活動をしました。ただ、公表をセンターの先生にしていただくことは叶えられませんでした。12月1日のクラス懇談会の時、A・Bクラス合同としてもらい、事前に配布される学年通信にたくさんの保護者の方に集まってもらえるように工夫して記載していただき、また子ども達には人権週間の時期に、視覚障害を持たれた元教師の方の講演後に時間を取ってもらい話をすることにしました。
10月中旬から12月上旬にかけ、娘が何度も「クラスに戻ろうかな?」と言ってきましたが、授業で戻れることはありませんでした。私自身も無理に戻ることはないよ、と娘に言い続け、心のリハビリ期間にし、ただ毎日学校でなるべく安定して過ごすことに目標を置くことにしたのです。
いよいよ迎えたクラス懇談会、教頭先生・学年担任2名が見守る中、クラス役員の司会のもと、話をしようとしたのですが、溢れる涙で言葉が出ず、記載したものを教頭先生に代弁してもらう形で始まりました。
「今日はたくさんの方に集まっていただきありがとうございます。
非常に個人的な問題ではありますが、皆様もお気付きのことと思います。今回皆様に娘のことをお話し、ご理解いただきたいと思っています。
娘は保育園の年長の時に『高機能自閉症』と診断を受けました。
入学の際、普通クラスか個別クラスかと迷いましたが、本人の『皆と同じクラスに行きたい』という言葉、気持ちを大切にし、普通クラスに入学いたしました。その後、パニックやトラブルを繰り返しながらも友達や先生方に助けられ、やってまいりました。
しかし運動会直前よりやや不安定となり、パニック・トラブルも頻繁になり、本人が友達とうまくやれない、友達と自分は違う、私は悪い子と悩み始め、学校へも行きたくないと訴えるようになったため、学校と話し合い、T.Tの先生と1対1の授業で対応していただいて1ヶ月半が経ちました。
決していじめがあったとかではありません。現在随分落ち着き、授業以外の時には時折クラスに入り、友達と話したり、遊んで過ごすことも見受けられるようになりました。
これからクラスに戻す作業に取り掛かるのですが、私は同じ環境に戻してもまた同じことの繰り返しになると考えるようになりました。ここできちんと周りの方に娘のことを公表し、理解してもらい、地域で娘を育てるためには、隠すよりも皆さんに認めてもらうことで生きていくことが大切だと思ったからです。
ただ、今まで公表できなかった理由として、公表は本人への告知にもつながるため、変な形で障害を認識してほしくなかったことと、兄弟児のことも考え、できれば普通の子どもとして育てたいと思っていたためです。
今まで娘の言動にてご迷惑をおかけした皆様申し訳ありませんでした。今後も娘は、同じ学年の児童として活動していきますが、何かありましたらご連絡ください。よろしくお願いします」
途中から先生と交代し、話をしました。やっとの思いでたどり着いた場所でした。
その時「うちの子は○○ちゃんが、大好きですよ」「きっと良い方に行くよ」と言ってくれたお母さん達、たくさんの人に支えられ、感謝した日になりました。
そして一週間後、子ども達へ。
私が話をする前に視覚障害者の元教師の方の公演があり、世の中には色々な人が頑張っていきているということを受け、感想や話を取り入れつつ話し始めました。
「今日は○○ちゃんの話をするために皆さんに集まってもらいました。少しの間聞いてください。さっき聞いたT先生の目の見えない人は600人に1人ですと言われていましたね。○○ちゃんは、今皆とは別の部屋で先生と授業をしていますが、○○ちゃんは今皆といると落ち着かなかったり、イライラして勉強が頭に入りにくくなっているからです。これはなぜかというと、○○ちゃんは、皆とはちょっと違うタイプの子どもとして生まれてきました。それは100人に1人のタイプとして、です。
どんな感じかというと、電球の球を思い浮かべてください。電球にはスイッチを入れたらすぐに明るくなるタイプ、少しずつ明るくなるタイプ、しばらく経って明るくなるタイプとあると思います。○○ちゃんの場合は、しばらく経ってから明るくなるタイプだと思ってください。
皆は、すぐに明るくなるタイプか、少しずつ明るくなるタイプで、先生やお友達に言われたことが理解できるし、行動に移せますが、○○ちゃんは、なかなか行動に移せなかったり、2つのことを言われても1つのことで頭がいっぱいになってしまって、2つ目のことができなかったりします。そのため、イライラしたり怒ったり泣いたりするのです。
きっと皆も「どうしてかな」と思うことも多いと思います。でもそれは○○ちゃんが悪いのではなく、そのスイッチの入り方がゆっくりだからなのです。そのために、皆に嫌な思いをさせたこともあったと思います。ごめんなさいね。
○○ちゃんとどんな風に付き合えばいいのかですが、○○ちゃんができていないことや、分からないことがある場合は、すぐに手を出さずどんな風にするのかをやってみせてあげてください。
そして少し待っててあげてください。それでもダメな時は先生にSOSしてくださいね。
休み時間など、トラブルが起きそうな時は、一緒になって怒り出すと大きな喧嘩になってしまうので、皆少し落ち着いて、○○ちゃんはよく分かっていないのかもと考えて行動してもらうと、うまくいく可能性が高いと思いますし、皆がほんの少しの時間や優しい気持ちを持ってもらうと、○○ちゃんはこの学校で楽しく生活できます。今話した内容を、昨日○○ちゃんにも話しました。そして『大変だけど、頑張って生きていくから』と言ってくれました。
最後に、先ほどT先生のお話の内容で、立派な人や優しい人とは、自分以外の人にほんの少しの時間を使ってあげられる人だと言われたと思いますが、私もそう思います。
長くなりましたが、話を最後まで聞いてくれてありがとう。これからも○○ちゃんのことをよろしくお願いします」
皆じっときちんとした態度で聞いてくれました。一人一人受け止め方は違うだろうと思いますが、目を潤ませた子どもたちもいました。私の投げた石がどんな反応を示したかは、また次回に書きます。
ただ、今は本当に公表して良かったと心から思います。          (・・・次号に続く・・・)

チェリーママさん、ありがとうございました。ついに公表したチェリーママさん。次号では、その公表によって、周りがどう変わったかを教えていただきます。チェリーママさん、次回も続きを楽しみに待っています。

 事務局だより
今年は「暖冬」とは程遠い、とても寒い冬でしたが、4月になると随分と日差しも暖かくなり、桜の蕾もほころんできました。
事務局では、4月から施行される「障害者自立支援法」対応のため、色々な資料や行政との連絡などで大忙しです。私は児童デイサービス事業の「赤磐ぐんぐん」の事務作業も育てる会事務と同時進行で行っているため、契約やら書類作成やらでテンヤワンヤです。会報発送遅れてしまって申し訳ありませんでした。
思い返せば去年の4月、準備期間として1年間、様々な研修や勉強を続けていたとは言え、初めての児童デイサービスが始まりました。
私達が療育事業を1年間行えたことは、多くの会員や教えを受けた方々のご支援、来てくださるお母さん達の協力と、通ってくれる子ども達に支えられたおかげだったと思います。3月末に「支援者養成講座」にて、赤磐ぐんぐんの報告をするにあたり、以前の資料や研修ファイルを見て思いましたが、本当に「よくもまあ無事に一年が過ぎたもんだ」「子ども達もよく頑張って成長してくれたもんだ」というのが率直な感想です。
私達が誰かに誇れることがあるとすれば、「子どもが出来ることを少しでもお母さんと一緒に喜びたいと一生懸命探したこと」だと思います。
私達は、もちろんそんなに経験豊富な大先生ではありません。ボランティアや子どもとの触れ合いの中で「もっと知りたい」「もっと関わりたい」「もっと伸ばしていきたい」という思いだけから始めた療育スタッフへの道です。
出来ることは少しずつかもしれませんが、その中でも精一杯のことをしていきたいと願っています。
掲示板でも紹介しましたが、新しいスタッフの方も増え、ますます療育事業も広がりを見せていくことと思います。ですが、初心にある「子どもと保護者のために何かがしたい」「自閉症の子ども達が好き」という思いをこれからも大切に、2年目を歩んでいきたいと思っています。
どうぞ今後ともご支援・ご声援をよろしくお願いいたします。
(事務局:鳥羽 紗代)

以前は「育てる会会報」はHPにも全文をUPしていましたが、容量等の事情により、現在は一部抜粋にさせていただいています。(今月号は久しぶりに全文UPしてみました。)
会の行事の予定は育てる会の「
今月の予定」に、近隣の講演会等の案内は「近隣の講演会等の案内板」に、また特にみなさんにお伝えしたい記事などは「育てる会ライブラリー」に載せるようにしています。
容量は小さくなりましたが、ご覧いただければ幸いです。
なお会報は正会員・賛助会員の方へは郵送でお届けしています。
もしご希望の方がおられましたら、ぜひ賛助会員に申し込みをお願いします。年会費 3000円です。
応援よろしくお願いします。
申込み方法の詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

   会報一覧   育てる会HPへ   てっちゃん通信HPへ