sorry,Japanese only
『 コミック会話 』
自閉症など発達障害のある子どものためのコミュニケーション支援法
キャロル・グレイ:著 門 眞一郎:訳 明石書店 定価:800円+税
ISBN4-7503-2120-6 C0037 ¥800E
ソーシャル・ストーリーについての著書でもおなじみのキャロル・グレイ女史の紹介するコミック会話の使い方の本です。
すでにご存知の方もおられると思いますが、コミック会話とは人物を線画で描いて、それに漫画でよく使われる「吹き出し」の中に言葉を入れていくものです。
描くのはあくまで子どもの側で、大人は最初に話ながら描いてみせて後は子どもに会話で誘導しながら(例えば「あなたはどこにいるの?」とか「他に誰がいるの?」とか)絵を描かせ、その時話したことばや思ったことを吹き出しの中に書いていくよう促します。
それによって子どもは会話のもつ意味や、相手の気持ちを改めて整理することができ、コミュニケーションを明確にしていくことができます。
また、コミュニケーションがうまくとれなかったことに対する解決策を自分でみつけることができるかもしれません。もしうまく見つからないようなら、大人がコミック会話の中でヒントを示してあげることもできます。
このコミック会話がすぐに使えるように、本書の中でグレイ女史が「シンボル辞書」として開発した8つのシンボルが付録として付いていますので、これをコピー&ラミネートしてカードのように示すことで、子どもたちの助けとすることができるようになっています。
感情を示す色の例もついていますので、これもそのまま使えると思います。
ただ、先に書いたように、簡単に描ける線画といいながらも自分で絵を描き、それに自分で言葉を書いていくことが前提ですので、このコミック会話が使えるのは自閉症の中でもある程度高機能の子どもたちや、アスペルガー症候群の子ども達ということになるでしょう。
また、本としては付録を入れても40ページほどの薄いものですので、内容を「読む」だけでしたら立ち読みでもすぐに読んでしまえるほどの分量です。そのため、手ごろの値段(800円+税)とはいえちょっと割高に感じられるかもしれません。それに対しては、この本は実際に「使って」こそ価値があるものだと思います。
これによって、子どもがコミュニケーションの持つ意味について学んで、次の会話に生かし、ソーシャルスキルを高めていくようになれば、充分以上に価値のある本になると思います。
ですから、本書はお母さん方個人にお薦めするというよりは、学校の先生方や療育にあたっている方に特にお薦めしたい一冊です。普通学級で、コミュニケーションがギクシャクして、うまくクラスメートと感情の交流がもてないという生徒を担任している先生などには、ぜひ一度試していただきたい技法だと思います。
使う道具、ホワイトボードや黒板、紙などについての長所や短所も書いてありますので、その場に一番適した道具を選んで、最初はコミック会話を使っての世間話からはいってみてください。
その後の情報の引き出し方や、流れの構成についても具体的に書かれていますのですぐに使っていただけるはずです。
このコミック会話を使って、少しでも子どもたちが暮らしやすくなることを願って本書を「道具」としてお薦めします。
(「会報 89号」 2005. 9)
目次
謝辞
コミック会話(Comic Strip Conversation)とはなにか?
理論的根拠
道具
ラミネート・マーカー・ボード
紙
黒板
手順
子どもにコミック会話を紹介する
コミック会話シンボル辞書
〈 世間話 〉を描くこと
ある場面について絵を描くこと
これから起こることについて描くこと
感情と色
要約
参考文献
付録 A:コミック会話シンボル辞書
会話シンボル辞書 & 個人用シンボル辞書
付録 B:会話シンボルと実用的定義学習用カード
付録 C:色の表
訳者あとがき
(本書には目次がありませんでしたので、それぞれの見出しを目次として紹介しています)
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