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『自閉症児のための 絵で見る構造化』

佐々木 正美:監修・指導・文 宮原 一郎:画 学研 定価:1900円 + 税
ISBN4-05-402186-7 C3337 ¥1900E


耳から入る言葉だけの刺激には弱くて、一方で目からの情報には優れたものをもつ子が多いのが我が子たち。イマジネーション機能に少し違ったところがあるからかもしれません。

でも、考えてみたら、私たちも同じですね。昔から「百聞は一見に如かず」と言われてきたように、ことばでいくら説明されても迷ってしまう道順でも、略図を書いてもらえばパッと分かります。パンダを知らない子どもに実物や写真を見せないで、ことばで説明しろと言われたら・・頭を抱えてしまいます。「熊のようで、目のまわりが黒くて・・あれ?白かったかな?」聞いている方も、とんでもない物をイメージしてしまうかも知れません。

「構造化」についても、もしかしたら同じような誤解が生まれているかも・・

例えば場所の構造化の紹介では、たしかにこれまでも説明の図はありましたが、その多くは部屋の平面図・見取り図で示され、ちょっと家の設計図みたいで、そこで過ごす子どもたちのイメージがわきにくいこともありました。

その点、本書は子どもたちの姿もいきいきと描かれ、「アッ、こんな風に使えばいいのか」と改めて腑に落ちる所も多かったです。

描かれているのは、現実の家庭や学校現場、作業所のワンシーンです。
説明の方も実際に指導にあたられている坂井聡先生や中山清司先生があたられているので、とてもわかりやすい一冊になっています。

ただ、学校のシーンでは、協力・執筆されているのが、香川大学教育学部附属養護学校、北海道教育大学教育学部附属養護学校、石川県立明和養護学校と、いずれも養護学校の先生方なので、普通学級では物理的には少し難しい構造化もあるかもしれません。でもスケジュールの提示の仕方など、その考え方、取り組み方などには参考にできることは十分にあると思います。

一方、養護学校や個別学級などでは、場所の構造化から始めて、即、取り入れられるものばかりです。ぜひ、学校の図書館・・・というよりできれば、教室の後ろの本棚に備えておいていただきたい一冊です。

(「育てる会会報 71号」 2004.3)


  目次

序文 視覚的構造化 ・・・・・ 佐々木 正美

第1章 学校内の構造化

教室内で活動に応じた場所を用意する
校内を再構造化して使いやすい空間に
校内の限られた空間を効率よく利用する

解説 ・・・・ 佐々木 正美

第2章 学校内の作業や活動の構造化

中等部の作業学習に主体的に参加できる
自立活動の内容をシンボルカードで伝える
教室で行き先や着替えの手順カードを利用する
高等部の陶芸のワークシステム
分かりやすく参加しやすい学校行事に

解説 ・・・・ 佐々木 正美

第3章 家庭・社会生活を育む構造化

学校で歯磨き、入浴の生活スキルを練習する
学校で洗濯物などの家事スキルを練習する
家の中や歯科医院で見通しがもてる工夫
家庭生活でのアイディア
家庭と連携しながら分かりやすく
地域に密着した家庭での買い物の工夫

解説 ・・・・ 佐々木 正美

第4章 就労・職場の構造化

一人ひとりが活動しやすい作業スペースを
見通しのよい1日にするスケジュール管理
自立した作業のための手順・方法の工夫
視覚的手がかりの職場
興味・関心を生かし、本人の意思を確認する
社会性をはぐくむ取り組み

解説 ・・・・ 佐々木 正美

まとめ TEACCHと構造化 ・・・・ 佐々木 正美

  著者一覧

猪熊 優子 (香川大学教育学部附属養護学校教諭)
梅崎 誠 (北海道教育大学教育学部附属養護学校教諭)
大路 典子 (香川大学教育学部附属養護学校教諭)
太田 千佳子 (北海道教育大学教育学部附属養護学校教諭)
河野 俊寛 (石川県立明和養護学校教諭)
坂井 聡 (香川大学教育学部附属養護学校教諭)
辻 剛一 (北海道教育大学教育学部附属養護学校教諭)
中村 由里 (石川県立明和養護学校教諭)
中山 清司 (社会福祉法人 横浜やまびこの里)
林 徳恵 (香川大学教育学部附属養護学校教諭)
星野 英子 (北海道教育大学教育学部附属養護学校教諭)


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