『ぼくのアスペルガー症候群』
もっと知ってよ ぼくらのことを
ケネス・ホール:著 東京書籍 1300円+税
ISBN4−487−79682−2 C0037 ¥1300E
嬉しいことに、近頃では高機能自閉症の方やアスペルガー症候群の方が自ら書かれた本を書店でよく見かけるようになりました。自閉症児を持つ親にとって、子ども達の気持ちや感じ方を理解する手助けになるだけでなく、一般の方にも自閉症の事を知ってもらう機会が増えるということですね。ドナ・ウイリアムズ、テンプル・グランディン、グニラ・ガーランド、ウェンディ・ローソン、森口奈緒美さん・・こうしてみると、なぜか女性の方が多いですね。この本は、違います。男性、それも10歳の少年が書いた本です。そういえば、自閉症児は圧倒的に男の子たちが多いのに、これまで男性の自叙伝が少なかったのは不思議ですね。
本の内容は、ほほえましい、というか、とにかくユニークで楽しい本です。
どのページにもAS(アスペルガー)ならではの感じ方が、本人のかわいい言葉で綴られています。たとえば・・と、少し紹介しましょう。
『集中』 ぼくは一度に、二つ以上のことには集中できないことに気づいている。それから、やっていることをやめて、次にやらなくちゃいけないことにうつるのも大変。何かに集中しているとき、別のことをたのまれるのは好きじゃない。なかなか集中できなかったり、自分がたにまれたことをうまく思い出せないときもある。
ママは毎晩のように「パジャマを着なさい」って言うけど、ぼくはその十分後に「何をしなきゃいけないんだっけ!」と、ママに聞きにいかなくちゃならない。
どうです、思い当たるエピソードをお持ちの方も多いのでは?
彼がこの本を書いてくれたのは、仲間へのメッセージと、少数派としてのASを代表して私達にもメーセージを送るため・・
ASがあると大変だってことを、みんなは理解するべきだよ。小さなことが、今でもときどきぼくを動揺させる。先日、サングラスが見つからなかったときみたいに。
ぼくがあばれだしたせいで、みんなにずいぶんめいわくをかけた。しまいには、ものすごくひどくなって、ぼくはとなりの車の前に飛び出したい気分だった。どうなってもよかった。そのあと、自分がどんな行動をしたのかを考えて、ほんとに悲しくなった。
読みやすい書体でフリガナもついていますので、高機能な子ども達には同じ仲間からのメッセージとして、ぜひ本人にも読んでいただきたい本です。きっと、この本の中に友達が見つかると思います。
なお、この本の中でケネスくんが「行動のしかたを学ぶのに役にたった」と、みんなにもおおいに勧めているABA(応用行動分析)については、育てる会の「自閉症児への指導・支援講座」でお世話になった吉備国際大学の奥田健次先生から詳しく教えていただけます。
奥田先生のホームページ http://www.kiui.ac.jp/~k2okuda/index.html
( 「会報45号」 より ) 2002.02
「目次」
日本の読者のみなさんに ケネス・ホール
序文 ケン・P・カー
序文 ギル・ローリー
第1章 ぼくのこと
はじめに
ぼくとアスペルガー症候群
ぼくの生活について
住んでいるところ
今までの思いで
ぼくが生まれる前
赤ちゃんだったころ
メリーゴーラウンド保育園
小学校
ルドルフ・シュタイナー学校
家でのスクーリング
夢・こわい夢
ぼくの大好きなもの
世界一好きな動物 - サンデー
ぼくの大すきなところ − 静かなところ
休暇
ぼくの大好きなこと
読書/遊ぶこと/コンピューター
第2章 ぼくがちがっているところ
ぼくにむずかしいこと
おおぜいの人
集中
がまんすること、ほかの人を理解すること
関心
グループの仲間になること
ぐるぐる回ったり飛びはねたりしないで、じっとしていること
決めることと変えること
ぼくがどう感じているか
感覚
痛み
音
髪の毛
味と食べ物
感触
ひとりでいるのが好き
ぼくのアイデア
ぼくの心配ごと
学校には行かない
ぼくの勉強方法
言葉と読書
算数
ちがっていることを、ぼくがどう感じているか
第3章 ぼくの長所
正直さ
性格
ABA(応用行動分析)
にこにこマークがもらえそうなこと
ぼくの課題と役に立ったこと
怒り
怒りのセラピー(療法)
言われたとおりにすること
権威を受け入れる
まちがいをすること
はっきりと話すことと、人のじゃまをしないこと
関心を引きたい
感じよくしていること
リラックスすること
水泳
音楽
アート
ちゃんとすること
この本ができるまで
「あのちぢんでいく感じ」
第4章 ぼくが信じていること
贈り物
頭がいいこと
自然
動物
教会と戦い
メディア
ニュース
引力と次元
ASの人たちを理解すること
ASの子どもたちを助けること
タイタニック号
ルール
ASと自閉症
ぼくの将来
本書を読んで 鈴木正子
本書を読んで 高橋和子
本書を読んで ニキ・リンコ
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