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『 自閉症ガイドブック シリーズ 2 学齢期編

社団法人 日本自閉症協会 定価:700円


自閉症協会発行のガイドブックシリーズの、「乳幼児編」に続く2巻目です。

「乳幼児編」が、初めて自閉症と告知を受けたお母さんたちに対して、Q&Aの形式で、一からわかりやすくサポートしようとしているのに対し、本書はもうちょっと上の子を持つ親の方向けに、「みんなでがんばって育てていこうよ」というエールがつまった本だと言えるでしょう。

これが、一般の専門書でしたら、乳幼児期には乳幼児期なりの、学齢期には学齢期なりの、そして青年期、成人期・・と同様のウェイトで、問題点と対応策を書いていくのでしょうが、さすが自閉症協会のシリーズです。読者・対象者が親であることを意識して、書き方をがらりと変えています。

学齢期になれば、親もある意味覚悟ができてきます。自閉症児・障害児を持った親として、これからどう育てでいけばいいのか、自らがどう生きていくべきか・・はっきり考えはじめる時期ですね。
その指針として、もっとも役にたつのは、専門家の方の助言とともに、その時期を乗り越えてこられた先輩の親の方からの経験談でしょう。
励みになる、という点ではもしろこちらの方が大きいかもしれません。

このガイドブックを企画・編集された編集委員や自閉症協会出版部の方も同じ思いだったと思います。
専門家の方の書かれた解説の部分と、親たちが体験談を語るコラムの部分が、うまく反応しあって、元気の出る本に仕上がっています。
中には、森口奈緒美さんたち本人の書いた部分や、問題提起に対してそれぞれの分野から解決をかかろうとする座談会の部分もあって興味深いものとなっています。

ただ、ガイドブックというだけあって、それぞれの項目が2〜3ページで終っている箇所もあり、もう少し詳しく・具体的に教えてほしいな、というようなページもありました。でもそれは、それぞれの方の書かれた専門書を、改めて紐解くことにして・・・今は、この本から元気をもらいましょう。
なんといっても、大変な時期を乗り越えられてきたお母さんたちの話は、道しるべとして頼りになりますし、なによりみなさん明るいのがこれからの自閉症児の子育てにとって励みになります。

みなさんにお薦めしたい本の一冊です。

なお本の販売は、一般の書店では扱っていませんので、
直接 日本自閉症協会本部 メールアドレス 
asj@mub.biglobe.ne.jp FAX 03−5273−8438 か
各県支部あてに申しこんでください。

(2003.6)


  目次

はじめに

1.自閉症の特徴

自閉症とは

学齢期における自閉症の障害特性

コラム 学校生活は教師の人間性によって左右される

高機能自閉症とアスペルガー症候群

自閉症と関連障害について

コラム 人への信頼感で育つ


2.就学にあたって

就学にあたって親の心がまえ

コラム 手づくり絵本でコミュニケーション

学校を選ぶにあたって

学校が決まるまで ― 就学相談の流れ

コラム 私がこの学校を選んだ理由


3.学齢期における指導と支援

学齢期を通して求められるもの

  (1) 障害の特性に応じて
  (2) 一人ひとりのニーズに応じて
        ― 能力をどう評価し、把握すればよいか

コラム 親も先生方と協力して

小学校期

  (1) 小学校期にめざすもの

コラム 自立への一歩、自力通学
コラム 挑戦してよかった一人通学
コラム 娘に一番良い方法を考えてくれた相談室

  (2) 小学校期にはここを伸ばそう

コラム 息子は、こうして字を覚えた

  (3) 子育てを振り返って
  (4) 重要な余暇への取り組み

コラム 息子のためのサポートブック
コラム 親たちの手で余暇活動サークルをつくって

中学校期

  (1) 中学校期にめざすもの
  (2) 中学校期にはここを伸ばそう
  (3) 学校での取りくみを家庭につなげるために

コラム わかることなら頑張るよ

  (4) 地域での生活をめざして

コラム 地域の仲間とともに
コラム 理解の一助に「缶バッジ」をつくる

  (5) 高機能自閉症およびアスペルガー症候群の子どもには

コラム アスペルガー症候群の子どもを育てて

  (6) 将来の生活に向けて ― 社会自立のための指導・支援など

コラム 息子のおつかい

成人期から学齢期を見て大切にしたいこと

  (1) 大切な四つの柱と親子関係の再構築
  (2) 大切だった小学校高学年から中学校時代

コラム いろいろな体験をさせよう

偏食、健康、不適応行動への対応

  (1) 偏食をなおすには

コラム ひどい偏食だった息子

  (2) 健康面で気をつけたいこと
  (3) 年齢相応の対応の必要性
  (4) 学齢期、青年期の自閉症と性行動
  (5) 学童期、青年期の問題行動の理解と対応

コラム なわとびに挑戦して

家族 ― きょうだい、近隣への対応

コラム 父親の役割
コラム やっちゃん叔父ちゃんと5人の姪たち
コラム 地域、近隣にとけこむために


4.本人・保護者と学校の連携

本人から

  学校教育に望むこと ― 環境調整の重要性
  私が望む学校教育

保護者から

  「親と学校」の良い関係づくりのために
  親も共にIEPに取りくんで

コラム 学校で助けられたこと
コラム 走れた! 一番になりたい!

教師から

  自閉症の子どもを受け持って
  個別指導計画と保護者との連携
     ― 北海道教育大学附属養護学校での実践を通して
  障害児学級と通常学級の連携

コラム 数を覚える
コラム 色彩を覚える


5.学校・学級の実際

通常学級で ― 障害を抱えた子どもたちとともに

コラム 通常学級にA君を受け入れて

通級学級から

自閉症に焦点をあてた学級経営

海外の学校

イギリスの自閉症教育と援助の基本
デンマークの自閉症学校
アメリカの特殊教育 ― 将来の地域生活を念頭において

学校見学記

東京都目黒区立五本木小学校 ゆりのき学級
               (小学校情緒障害通級指導学級)
東京都文京区立柳町小学校 どんぐり学級
               (小学校情緒障害学級固定制)
東京都目黒区立第6中学校 しいの木学級
               (中学校情緒障害学級固定制)
香川大学教育学部附属養護学校 (小・中)
鳴門教育大学学校教育学部附属養護学校 (小・中)

親から見たそれぞれの学校・学級の特徴


6.座談会「これからの自閉症教育をめぐって」 ― その課題と展望

これからの自閉症教育のあり方
学校、教師の役割
学校と保護者の連携
他機関との連携
専門家との連携
卒業後の生活をめざして
情報の伝達と一貫性のある指導
教員の専門性向上のために
これからの自閉症教育 ― 座談会のまとめにかえて


7.思春期への対応

思春期とは

コラム 思春期 ― 息子の場合

不適応行動への対応

不適応行動に対する医療的ケア

コラム 息子の思春期
コラム 生理への対応


8.地域の社会資源を活用するために

社会資源の利用

コラム みんなで協力して

地域資源を確認する

子どもの情報の伝達をはかる

社会資源のネットワークを作る

コラム 余暇


付録 子どもノート・社会資源ネットワーク

・ 自閉症専門の相談・療育機関
・ 療育手帳について
・ 日本自閉症協会とは
・ 日本自閉症協会支部(事務局)名簿
・ 自閉症関係施設一覧
・ 執筆者・座談会出席者一覧

あとがき


監修 石井 哲夫・須田 初枝・山崎 晃資・宮崎 英憲

企画・編集委員 市川 裕二・小山 裕子・松本 英夫・三苫 由紀雄・山田 政利
    日本自閉症協会 出版部 古屋 道夫・阿部 叔子・市村 千紗・姜 春子
                    国岡 妙子・白井 和子・藤原 幸子

編集協力 中山 幸夫


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