sorry,Japanese only

『 自閉症への親の支援 TEACCH入門

E.ショプラー:編著 田川元康:監訳 梅永雄二・新澤伸子・安倍陽子・中山清司:訳
黎明書房 定価:3000円 + 税 
ISBN4−654−02076-4 C3047 ¥3000E


最初にこの本のタイトルを見た時、「自閉症の親への支援」と見間違えてしまいました (^_^;)
なにしろ、自閉症児を抱えて、つい支援が欲しくなる私です。

でも、この本はそんな私たちがいかに子どもたちを支援していくか、そして先輩の親の方がどんなふうに支援を行なってきたかということに焦点をあてて書かれています。

具体的に、子どもたちの行動にどのように対応してきたのかをカテゴリー別に集めて、その一つ一つに専門家の方がその元になる自閉症の特性を解説して、支援のあり方を方法づけてくれます。氷山モデルでいえば、水面上にあらわれた子どもたちの行動に対応しているのが親たち、水面下に隠れたその問題行動の元となる特性をとらえて支援の方法を考えようとするのが専門家の役割です。

各章の扉には、目次とは別に、その章で取り上げている水面上の問題とその背景にある水面下の問題が列挙されているので、すぐに早引けできる入門書だと思います。親たちの行動からは支援のためのヒントを、専門家の解説からは自閉症というものの特性と支援のための考え方が得られる本だと思います。

「TEACCH入門」と副題にはありますが、これまでの専門書のように視覚支援や構造化、ワークシステムといったいわゆるTEACCHメソッドの手法はあまりでてきません。
家庭の中で、親たちが子どもたちの問題行動を前にして、なんとか助けたいと、自分で工夫して考えた解決方法の体験談だからです。
むしろ、TEACCH的な考え方・・、それぞれの行動を観察して個別の対応策を考える、水面下にある背景の問題を忘れないようにする、そして親が共同治療者として主体性をもって子どもに向かい合う・・そんな意味でのTEACCH入門だと思います。

また、最後の「第9章 地域支援」の章では、一人からはじめて、地域グループを作り、地域資源を活用しいかに支援を行なっていくか、という方法論について述べられています。例では、TEACCHのお膝元、チャペルヒルでのローカルユニット(地域グループ)であったため、得られる支援は私たちより格段に大きかったとは思いますが、その向かおうとする方向は私たちでも同じだと思います。
「自閉症への親の支援」、地域においても、たとえ一人からでも、子どもたちのために親が中心になって活動を始めなければならないのですね。
「自閉症の親への支援」、そうして活動を続けていくなかで、はじめて周囲からの支援も引き出せてくるのでしょう。

「育てる会」がこれまで行なってきた活動も、まさにその通りでした。今、多くの方から援助がいただけるようになりました。
子どもたちの為に、親たちはこれからも支援を続けていきたいと思っています。
親たちへの支援もよろしくお願いします m(__)m

「会報 63号」 2003.7)


  目次

まえがき

謝辞

第1章 はじめに ― 親と専門家が同じ目標をめざす

1 自閉症の定義
2 背景
3 親と専門家の連携
4 療育技法の選択

(1) 精神分析理論
(2) ファシリティテッド・コミュニケーション

5 各章の紹介

第2章 反復行動と興味のかたより

1 強迫的で儀式的な手順
2 奇妙な、あるいは限られた興味
3 常同行動
4 同じことへの固執
5 儀式的な言語

第3章 コミュニケーション

1 言語理解に関する問題

(1) 単語が多すぎることによる混乱
(2) 記憶の問題
(3) 聴覚情報処理の問題を軽減する
(4) 意味を一般化することの失敗

2 表出言語の問題

(1) 代替システムの必要性
(2) コミュニケーションできないことによる欲求不満
(3) さまざまな環境でコミュニケーションすることの困難さ
(4) 社会的なコミュニケーションの欠如
(5) 社会的なルールの理解の欠如
(6) 要約

第4章 遊びと余暇

1 遊びと余暇を好きになる
2 ゲームのやり方を変えて楽しめるようにする
3 構造化を利用する
4 得意なところを伸ばしていく
5 社会性を伸ばして、地域統合を図る

(1) 仲間とかかわり合う
(2) 地域でレクリエーションや余暇施設を上手に利用する

第5章 攻撃的な行動

1 自分自身に向かう攻撃行動(自傷)

(1) 頭突き
(2) 目を突く
(3) 自分の手を噛む
(4) 髪を抜く
(5) こぶしをつぶす
(6) 窓を壊す
(7) 鼻の皮をむく

2 他人に対する攻撃行動

(1) 他人を叩く、蹴る
(2) 噛みつき
(3) 他人をつねる
(4) 唾を吐く

3 物を破壊する

(1) 家の小物を壊されないようにする
(2) 本を破かれないようにする
(3) 家具を壊されないようにする
(4) 服破りをさせない

第6章 トイレの使用と衛生管理

1 トイレの使用

(1) 生理的な要求や機能をコントロールする
(2) 正しい場所にいく
(3) 関連する身辺自立の技能
(4) トイレットトレーニングにおける行動上の問題
(5) 困った事態に対応する
(6) 便をこねる

2 衛生管理

(1) 入浴
(2) 歯磨き
(3) 身だしなみ

第7章 食事と睡眠

1 食事

(1) 異食
(2) 極端な偏食
(3) 過食
(4) 食事中の行動
(5) 反芻と嘔吐

2 睡眠

(1) 入眠障害
(2) 就寝中の徘徊
(3) 朝の睡眠の問題

第8章 行動ヘの対処

1 行動ヘの対処の一般原理

(1) トークンシステム
(2) 分化強化
(3) 消去
(4) レスポンスコスト
(5) 対立行動分化強化
(6) タイムアウト
(7) 社会的不同意
(8) 新しい行動の教示
(9) 環境の修正

2 一般的問題行動

(1) 不服従
(2) 破壊的行動
(3) 攻撃的行動
(4) 薬物療法
(5) 嫌悪療法

第9章 地域支援

1 一人からの出発
2 ローカルユニット(地域グループ)
3 チャペルヒル地域ローカルユニット

(1) 経営
(2) 成果
(3) 会報

4 ローカルユニットの基礎

(1) 支援
(2) 教育
(3) 広報
(4) 擁護
(5) サービス
(6) ガイドライン
(7) さらなる情報のために

5 トライアングル自閉症資源ガイド
6 地域の資源ガイドを作るための手順
7 資源リスト
8 参考図書

(1) 会報と機関紙
(2) 図書

9 TEACCHの図書とビデオ

(1) 図書
(2) ビデオ

監訳者あとがき

参考文献


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