『 我が子 ノア 』
自閉症児を育てた父の手記
ジョシュ・グリーンフェルド:著 米谷ふみ子:訳 文芸春秋
ISBN4−16−363910−1 C0095 P1400E 定価:1359円+税
『 ノアの場所 』
自閉症児に安住の地はあるか
ジョシュ・グリーンフェルド:著 米谷ふみ子:訳 文芸春秋
ISBN4−16−363920−9 C0095 P1800E 定価:1748円+税
『 依頼人 ノア 』
思春期を迎えた自閉症児
ジョシュ・グリーンフェルド:著 米谷ふみ子:訳 文芸春秋
ISBN4−16−363930−6 C0095 P2500E 定価:2427円+税
第一作の副題でおわかりのように、これはジョシュ・グリーンフェルド氏による、自閉症児 「我が子ノア」の三部作です。
ノアくんのフルネームは、ノア・ジロー・グリーンフェルド、そしてノアくんの兄さんは カール・タロー・グリーンフェルド・・そうです、タローくんとジローくんは、作者のアメリカ人、ジョシュ・グリーンフェルド氏と、奥さんの日本人米谷ふみ子さんの間に生まれた兄弟です、
米谷ふみ子さんは、この三部作では米国内で翻訳家をつとめられていらっしゃいますが、日本では作家として「過越しの祭」などを出版されている女流作家です・・・なんと芥川賞も受賞されています。もっともこれらは、ノアくんがいたから、書かれた小説なのです。ノアくんのお母さんです。「ジョシュは日記をつけていましたが、家でなにが起こっていたか全部は知りませんでした。家の仕事を半分も手伝ってはくれませんでした。大変な欲求不満に陥り、それを晴らすためにも、私もノートになぐり書きを始めました。これが私どもの精神安定剤になったのかもしれません。」 (「訳者 あとがき」より)
父のその日記がこのノア三部作になり、母のそのノートが芥川賞の小説となったわけです。
日記を元にして本文は綴られていきますが、日記だともうみなさんも経験しているように、回想文とは違って親の気持ちは大きく揺れ動きます。
希望を持ったり、絶望したり、障害を否定しようとしたり、まわりに攻撃的な気持ちになったり・・人の優しさに感動したり、未来を悲観したり、またがんばる気になったり、と・・・その気持ちが、隠すことなく赤裸々に綴られています。自閉症児はよく異星人にたとえられたり、異文化を持つ人と言われたりします。ノアくんの家庭の場合は、それに加えて、日本とアメリカの文化の違いによる問題にも遭遇して、興味深いものがありました。
ただ、ラストは私達が期待しているハッピーエンドではなくて、
「こちらも年をとるにつれ、私たちが死んでからもノアが住める、生きていけるところとして、理想的ではありませんが、最後の妥協をしたのです。」
この三部作のあとがきの筆を置いたとき、ノアくんは23才、施設を移り州立病院にはいっています。1989年のことです。でも、ノアくんの人生がこれで終わったわけではありませんね。自閉症者を受け入れる環境も次第に整えられるようになってきています。自閉症者も支援をうけながらの自立の道も開けてきました。
ノアくん・・今はもうノア氏ですね・・も今年で36才になったはずですね。
今は病院を出て、地域で充実した人生をおくられているよう願っています。そんな4作目が出版されると、嬉しいですね。題名は 『ノアの新しい出発(たびだち)』 なんてのはいかがでしょうか (^_^;)
(2002.10)