最 初 の 一 歩
ペンネーム まっくろくろすけのママ
まっくろくろすけは6歳です。
保育園の年長組で、広汎性発達障害と診断されています。
今までは、のんびりマイペースの性格からか、大して園で騒動も起こさなかったのですが、年長になってから、突然先生に、「嫌だ!嫌だ!」の攻撃開始。
寝転んで泣くは、廊下を走り回るは、大きな声で怒るは・・・。
最初はお友達も、「どうしたの?」と、びっくりして様子をみていましたが、最近では「あーあ、また始まったー」って感じ。
みんなと一緒にできそうにみえて、できない現実。
お友達の「なぜ?」という疑問に、どう答えていいのかわからず、ためらうことも度々。
とにかく行事は、どうかスムーズに事が運びますように・・・と願い、ヒヤヒヤするばかりです。
そんな母の願いとはうらはらに、まっくろくろすけは、参観日をはじめ色々な行事には落ち着かず、決まった様にぐずるのです。
「嫌だもん!」と泣きながら集団から飛び出したり、一人ふらふら歩き回ったり・・・。
その度に私は、妙な取り繕いをしていたものです。
「今日は、機嫌が悪いようで・・・」とか。
お母さん方の目を気にしていたのですね。
まっくろくろすけに対しては、いつもより無理を強いてしまいます。
余裕もなく、「あっち行くよ!」とか「ほら、みんな○○してるじゃない!」とか、とにかく[普通]を求めるのです。
先生にはサポートを求め、いろいろ頼んで協力を得ておきながら、自分自身は世間体というか、その場の空気、人の目を気にして、[みんなと一緒]を望んでいたのです。
全てではなくても、ある一部の面では・・・。
そんなまっくろくろすけも、来春から小学生です。
随分迷いましたが、地域の小学校を、今は希望しています。以前より、親しいお母さん方にはまっくろくろすけの障害の事をお話して、協力して頂いていたのですが、この先・・・を考えると不安でたまりません。
一人でも多くの人に理解して頂いたら・・・と思う様になりました。
まっくろくろすけは「障害があります」と、言わなければ気付かれない方も多いです。そこに困難さがあるのですよね。
勝手とか、わがままとか、ちょっと変わってるよねーとか思われがち。
先の事を考えて・・・と思っていると、半月後の参観日の案内が園からきたのです。 これはチャンス!と思いました。
お友達用に紙芝居を作り、園で読んでもらう様にしました。(参観日にそれをお母さん方にも見て頂きました。)
お母さん方には、障害の事が書いてある冊子のコピーと、まっくろくろすけからのお願い、まっくろくろすけのQ&Aを作り読んでもらう事にしました。
その当日、まっくろくろすけは案の定落ち着かない状態でした。
けれど、皆さんにお話して手紙を読んで頂いているので、いつもなら絵カードを出すのもためらっていた私ですが、「こうすると、解かり易いんです!」とか反対に、「こういう所困っているんです!」など説明も出来ました。
肩の荷がおりました。まっくろくろすけのありのままの姿を見て頂ける事で、こんなにホッと出来るのかと思いました。
妙な親の見栄で、まっくろくろすけをどれだけ苦しめてきたことか・・・
まだまだ[最初の一歩]って感じです。どんどんまっくろくろすけの事を、地域の方に知ってもらいたいと思っています。
親が良き療育者になる事は、すごく大切だと思います。
でもそれと同じくらい、まっくろくろすけが生活していく地域(環境)の土台を作ってあげたいと思うのです。
親だけで環境は作れませんから・・・。
これからも、私たちで出来る事を探していこうと思っています。
まっくろくろすけの笑顔が大好きだから・・・
まっくろくろすけ君のお母さんは、園のお母さんたちに、初めて彼の障害を語りました。
そうしなければ皆さんの理解や援助がもらえないからです。
思いきって、本当に思いきってみんなにわが子の障害を告げました。そうする事で自分の中でのモヤモヤまでが吹っ飛んでいったというお話をされました。
先生には、みんなと違うサポートの必要性を語りながら、自分自身は、我が子のハンデを知られたくない。
これは矛盾しているし、みんなに話さなければ適切な援助を得ることも出来ません。
これから小学校へ上がっていって、ひとりひとりのサポートも得ていかなければならない――と、思いきって覚悟を決めて、みんなに話をされました。結果は、成果はこれからでしょう。
一番の大きな 収穫はお母さんがみんなにやっと話せたということで、今までの『 障害児 』というレッテルを張られるように感じていた自分の気持ちに決着をつけられたことだと思います。これからのまっくろくろすけ君の生活は、前より覚悟の決まったお母さんがついている訳ですから、きっとよくなる。
「母が変われば 子が変わる。」頑張りましょうね。
ゆりかご講座担当:鳥羽 美千子