sorry,Japanese only

掃除機なんて怖くない!

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 掃除機が怖くてたまらない、うちの K太郎。

ボラさん宛のプロフィールの注意欄には、「掃除機などの電気製品を大変怖がり・・・」の説明を必ず入れなければなりません。
食卓用のパンくずを吸い取る、手のひらに入るような小さな物でもダメ!

掃除機を見ると、顔面蒼白、体はカチカチ、全てを捨てて逃げていきます。


 でも、世の中、掃除機は、どこにだってあるのです。
どの家庭にも一台は必ず。
学校に行ったって、合宿に行ったって、ディックに行ったって、イトーヨーカドーに行ったって、掃除機はあるのです。必ず。

 掃除を始めると、あわてて外へ出て、窓の外から不安そうな顔をして覗いたり、隠れたりする、K太郎。
掃除機を所定の場所に収納するまでは、安心して家の中にも入れません。

 あんまり怖がっていた時期は、精神安定のためにできるだけK太郎のいない時に掃除をしていましたが、少しずつ、K太郎のいる時にも掃除機をかけるようにしていきました。

「外からでもいいから、見てなさいよ。」って、こっちは平気な顔をして。

 長い長い時間をかけてやっと、止まっている掃除機なら指でチョンとさわって逃げられるようになった頃、使っていた掃除機が壊れてしまいました。

  新しい掃除機と、それからもうひとつ、「電気ほうき」という名のモップのような長い柄のついたコードレスの小型掃除機を買いました。
K太郎が、少しでも親しんで?くれないかなという願いを込めて、色もかわいいピンク色を選びました。

 計画的にピンクの掃除機はリビングに置いて、新しい掃除機は、壊れた掃除機をゴミに出すまでは入らないからということにして、わざと収納庫の前に出しっぱなしにしておきました。始めは「おかたづけ!」と、半泣きだったK太郎も、新しい掃除機に興味があるようで、近いところまで来て眺めたりするようになりました。いい感じになってきました。

 うちの朝食は、K太郎の大好きなパンです。食事の後、食卓の下はパンくずがたくさん落ちています。朝食後すぐに、ピンクの掃除機で吸い取ることにしました。音も静かだし、排気も出なくてとっても便利!ーーーそれを見て、ころがるように逃げていくK太郎。

そんな日が続いた後、逃げ腰ながら、家の中でだんだん近くに寄って、掃除しているところを見ることができるようになりました。

「Kちゃん、掃除機する?」 と、尋ねると、血相変えて逃げていたのに、だんだん逃げなくなっていきました。それから、
「Kちゃん、一緒に掃除機しょう!」 と、誘うと、掃除機の柄を持とうと、手を出しては引っ込める日が続きました。

それから、さらに数日後、ついに、掃除機の柄をにぎり私と一緒に掃除機をかけられるようになりました。緊張していた顔も、だんだんと表情が柔らかくなっていきました。

 その後、一人で掃除機をかけられるようになるまでは、たいして時間はかかりませんでした。

 普通の掃除機を制覇するまでの道のりは、まだまだ先が長そうだけど、なんだか勇気が沸いてくるよね。きっと、大丈夫だよね。

 今では、朝食後、何も言わなくてもピンクの掃除機で、食卓の下を掃除してから、小学校に 登校しています。口元に、「フッ」と、クールな笑みを浮かべながら・・・。

  掃除機なんて怖くない、怖くない、怖くない・・・・・・・・・・・ 

「会報36号」(2001.5)

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