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我が家の近況報告

                          

 早いもので新学期ももう5月半ば。毎日があっという間に過ぎていきます。

我が家の息子も小学校3年生になりました。普通クラスに在籍しているからには日々予習、復習もかかせず、むずかしくなっていく単元に、親が四苦八苦している毎日です。

 4月初めの出来事です。先生を送る会で息子が花束を渡す役をすることになりました。
それを知ったのが前日の先生のお便りでのこと。

「えーーッ・」と思いつつ、翌日、練習するので早く来てほしいということで、様子を見に行くと、案の定、教室から出ようとしません。
 なだめすかして、体育館の入り口まで行きましたが、入らないと大騒ぎ。
担任の先生は手をひっぱり中へ入れようとしたり、友達に応援を頼んだりしますが、「教室帰るー」と泣き叫ぶばかり。

 「3年生なんだから、出来るよ。出来ないなら、おうちに帰ろう。体育館にはいりますか?帰りますか? どっちにする?」
(最近、口調が青山先生に似てきたなーと思う、今日この頃です。)

 すると「入る」と、しぶしぶ入りました。が、花束が遅れていて、実際に渡す練習をしようにも、漠然としていて、とても息子が納得のいくはずもなくて、また大騒ぎです。他の先生方も生徒も顔を見合して「どうしますか? やめますか?」と困惑顔。

 私は一度だけでも歩く練習をさせとかなくては、と、いやがる息子の手を引き、一緒に壇上に上がり、椅子の前で花束を渡すかっこうをさせ、ここで降りること、それで終わりと納得させました。

 時間もなく、一度きりの練習です。

 私は先生に「息子のすわる場所、立つ場所に、ビニールテープでもはって、目印をつけておいて下さい。」とお願いして、学校をあとにしました。

 しばらくして学校に行ってみると式は終わっていました。出てこられた先生方は、口々に「お母さん、バッチリでした。本番では上手に一人で花束を渡して帰ってこれたんですよ。」とほめて下さいました。

 自閉症がどんなに大変かということをことあるごとに口にして言ってきたつもりですが、息子はわりとしゃべれるので、そしてたまにナマイキなことを言ったりするものですから、先生に過大評価されていて、花束を渡すくらいのことは当日の練習でOKと思われたのでしょう。
しゃべれるから、こちらの言ったこともすぐ理解できると、大半の先生方は思われているようです。

 たった一つ、ビニールテープを貼って、自分の居場所を示してやること。どんな風にやるのか、手本を示してやってみせてやること。それだけで無駄に大騒ぎもせず、立派にやれるのです。

 この出来事は、自閉症の正しい理解が如何に必要か、そして環境をととのえてやり、やり方次第でずいぶんスムーズに学校生活が送れるのだということを示すきっかけになったようです。

 幸い息子の通う学校は、とても理解があり、学校への要望なども、校長先生、教頭先生をはじめ、学校全体で対応してくれるなど、とても協力的です。

 

 それから、ここだけの話ですが・・・・。

 学校への相談事には、やはり父親の力が大きいようです。あきらかに母親だけが顔を見せるのと、両親そろっての相談というのでは学校の対応も違いますから・・。

“ 親がかわれば、学校もかわる ”で、しょうか。

 我が家はわりと父親が積極的に行事に参加してくれます。でも小さい頃は全然協力的ではありませんでした
 それが、ある父親の会に入会し、先輩のお父さん方ががんばられている話を聞き、目がさめたようでした。それまでいくら言っても入ろうとしなかったのです。結局、人に言われてはいや。自分で納得してはじめてその気になる、がんこな性格なんですが・・・。

 今では、会という会に頭をつっこみ、子供のことで夫婦が議論しない日はありません。

 父親が参加することは、子供にもとっても良い影響を及ぼすことは確かです。母親1人が子育てするより、2人が関われば2倍人と接することになります。特に男の子にとっては、遊びも体力を使った遊びが増えるのですから、母親だけでは限度があります。男の子らしい遊び、生活を、父親が参加することで経験を増やしていってほしいと思います。

 父親にとっては、仕事から帰ると、「お父さん、帰ってきた」とうれしそうに迎えに出てくれることが、何よりの喜びになっているようです。(たぶん妻が迎えに出ることより・・)

 

  そういえば先日こんなこともありました。電話がなると「もしもし〇〇です。お名前は?」と聞き、「××さんだって」「お母さんに代わるよ」というのがパターンだったのですが、出張先から父親が電話した時、息子が電話に先に出て「もしもし〇〇です」と言ってしばらくすると「あー、お父さん。今どこにいるの?」と聞いているのです。びっくりしました。「やったー、自分でパターンをくずしたー」と夫婦で大喜びでした。

 父親が積極的に参加してくれるようになって、子どもの対応も、母親に対しての時と父親に対しての時が随分違うように感じますし、父親に積極的にアプローチするのは一緒に遊びたい時や、ゲームをしたい時(母親は厳しいのでなかなか許してもらえないのをよく分かっている)、出かけたい時など、本人なりに選択しているようです。とにかく、父親の存在はとても大きく、大切なのではないでしょうか。

 

 今我が家で心がけていることは、「自分のことは自分でする」という習慣をつけさせるため、なるべく手をはなしていこうということです。
就学前は勉強についていけるだろうか、落ちついて座っていられるだろうかということばかりが心配でした。でも3年目にして思うことですが、それよりも色々な物の出し入れ、カバンの中身に出し入れ、フタを開ける、閉める、紐を結ぶ、服のみだしなみ等そういうことが自分で出来るのかが学校生活ではとても大事であるということです。
「自分のことは自分でする」
例えランドセルが重そうだからと家で手を出してしまうと学校でも人の手を借りなければならなくなるのですから。

 これはできないだろうとさせないのではなく、できないだろうけど親がやって見せてみる。
何度か見せているうちにある日突然やっているということもあります。

 最近自らやっていて驚いたことがあります。急に雨が降って慌てて息子に手伝わせて洗濯物を取りこんだことがありました。
数日後のある休日の午後、親が二人共昼寝をしていた時のことです。起きてみたら部屋に洗濯物が。外を見ると小雨が降っていました。高い所に干してある分はそのままでしたが、自分の手の届くところの分を全部入れておいてくれたのでした。
すごーい!!誉めて誉めて誉めちぎったのは言うまでもありません。

 お風呂のお湯が8分目になるとちゃんと止めてくれますし、お米も上手に研いでくれます。(米粒を流さずに水だけというのは集中しないと難しい)
私の電話中に来客があると自分で出て「お客さん」と教えてくれますし、留守番中の電話も誰からあったと伝えてくれるようになりました。

 始めて受診した時、自閉症と言われ「軽くはないですよ」と告げられたこの子が本当によくここまで成長してくれたなと思っています。
 お手伝いの中にも色々な療育の要素はあると思いますのでこれからもどんどんお手伝いさせて、お母さんも楽しよう精神でいこうと思っています。

「会報25号」(2000.6)

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