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平成17年1月31日

 

 第81号 

                   NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会

春は名のみの・・・
自閉症支援者養成セミナー報告
次回セミナーご案内
  内山登紀夫先生セミナー 3/12(土)
明石洋子さん・徹之さん RSK訪問記
梅永先生 講演会報告
先生からの体験談
AAO活動・キッズルームのお知らせ
サッカークラブ・水泳教室・OHAの会 案内
支援者養成講座 の お知らせ
私のお薦め本 「広汎性発達障害の子どもと医療」
近隣の講演会等のご案内
掲示板・面白コラム・事務局だより



 

「春は名のみの・・・」とはよく言ったもので、風の冷たい毎日が続いております。

皆様いかがお過ごしですか?

 

多くの皆様からのご寄付をいただきまして、事務局に非常階段がつきました。いよいよ、児童デイサービスの準備が整ってきました。月に一度、療育のスーパーバイザーである重松孝治先生からいただくたくさんの宿題に、スタッフは四苦八苦しながら頑張って研修しています。こんな忙しさも、自閉症の子どもや困っておられる家族の方々のためと思うと、力が湧いてくるようです。4月開設のため、準備は急ピッチです。

事務局は今やテンヤワンヤ。今までは広い部屋だったので自由に使っていて、広げっぱなしでも困らなかった教材もキチンキチンと所定の場所にしまわれ、次々と療育スペースへと模様替えです。来年度療育スタッフでもある横内奈穂さんが、現在事務局業務の手伝いに入ってくれています。彼女は整頓をきっちりしてくれる人なので、心強い限りです。

 

さて、4月からいよいよ始まる児童デイサービスの募集を、一般の方に先駆けて、育てる会の会員のみなさんにお知らせします。

 

午前は、身辺自立・コミュニケーション・余暇・子どもとの関わり方・スケジュールなど、今困られていることをしっかりアセスメントや聞き取りにより計画的に療育を行ないます。一年間、週一回継続して通っていただくことを前提に、保護者の方と一緒に年間目標を決め一緒に指導を行っていきます。午前の部は原則的に就学前の子どもさんが対象ですので、お母さんにも一緒に療育室へ入っていただき、家庭での関わりと合わせて関わり方の勉強をします。もし小さいご兄弟がいらっしゃったら、1階にはNPO法人「ファミリーサポート」さんがありますので、療育の間は預かってくださいます(申し訳ありませんが有料です。)

 

午後は、幼稚園児や小学生などが、園や学校が終わってこられることを考えて時間を設定しました。こちらは原則子どもさんだけの入室となります。ご希望があれば、お母さんには別室にてテレビの画面を通してご覧いただけるようにしたいと思っています(※会報後ろ 掲示板)。

 

療育はどちらも、支援費対象となりますので、市町村役場にて児童デイサービスの支援費登録をお願いします。また支援費対象外の方も事務局へお問い合わせください。詳しくは同封のチラシをご覧ください。

 

とにかく育てる会で始める療育です。こんな風にしてほしかった、こんなものがあれば・・・という思いはいっぱいあります。でも育てる会として、初めての自閉症児のためのデイサービスです。おそらく最初は試行錯誤の面もあるかと思いますが、より良い療育のために、会員の皆さんや利用される保護者の方々の暖かな見守りと励ましをどうぞよろしくお願いいたします。そして、どうぞたくさんの方の利用をお願いいたします。


 

先日のセミナー前日、明石洋子さんと徹之さんと半日をご一緒させていただきました。

RSKの見学取材やお食事にも付き合わせていただいて、とても楽しく有意義な時間でした。

徹之さんと一緒にいると、ストレートな気持ちがスーッと入ってきてとても心地よいです。私はこの人の大変さも苦しさも本でしか知らない。きっとお仕事も辛いこともあるだろうに、それを感じることはありませんでした。徹之さんと一緒にいる間中、とても暖かで幸せで楽しい時間でした。

お母様の明石さんはそれこそ目に入れても痛くない、というかんじで いつもニコニコ幸せそうに見守っておられました。

一昨年、徹之さんとお会いして、私は「結婚がんばります」とおっしゃっていた徹之さんのお相手が「障害のある人でなく、一般の方ではどうしていけないんですか?」と明石さんに申しました。星野富弘さんや「五体不満足」を書かれた乙武さんの奥さんは障害のない人です。徹之さんのお嫁さんが何故知的障害者の方でなければならないのだろうと不思議に思い、そう申しました。公務員で立派にお仕事をされる徹之さんをきっと尊敬し、愛し、結婚したいと思う人がおられると思ったのでした。

それを言ったとき、同時に、我が子哲平にも結婚を・・・と思うようになりました。

 

ずーっと昔、自閉症という障害の重さを知ったとき「この子にとって、生涯結婚はあり得ない・・・」そう思った時の不憫さや悲しみは、告知を受けた時の衝撃的な涙でなく、本当に悲しみがあとからじわりとやってくるものでした。

でも、哲平にも人並みに誰かを愛し、子を持つ喜びや、子を育むことの喜びを経験させてやりたい。どうして哲平の結婚を諦めなければならないのでしょう。

「諦めなくていい!」徹之さんが望む事をできる限り叶えてこられた明石さん。その明石さんのように私も諦めないで、哲平の思いを叶えたいと思ったのでした。

 

実は・・・哲平には、好きな人がいるのです。

「誰が好きなの?」と問うと、「やまもとゆきこさん(仮名です)好き」と恥ずかしそうに、はにかみながら言います。学校のクラスメートの彼女は可憐で美しい少女です。哲平の通う養護学校は、高等部になると知的に遅れがある子だけでなく、引っ込み思案でコミュニケーションが苦手で・・・という感じの子も何人も通っています。彼女はそんな人です。

 

「やまもとさん、哲ちゃんのお嫁さんになってくれる?」と聞くと、ポッと赤くなって恥ずかしそうな彼女です。もちろん私は本気ですから、彼女のお母さんにも猛アタックです。すると「鳥羽さんったら、冗談ばっかり〜」とまだ私の本気さはお母さんには届いていません。
哲平の恋が叶うかどうかは、私のアタック次第かな?という感じなのです。

哲平17歳、青春真っ只中、ただ今初恋中です。

 

さて、親バカついでに哲平が参加するアートの展覧会案内をさせてください。

「アートリンク・プロジェクト」とは、15人の障害のある人とプロの方とが、それぞれペアを組み、協働で作りあげた作品の展覧会です。夏休み前から、およそ20回、土日を利用して、佐藤朋子先生(画家・高校美術講師)と制作した作品が約20点。その中からの出品です。

哲平は表町の「すろおが463」で2月23日〜28日(11:00〜20:00)と奉還町商店街「奉還町りぶら」で3月3日〜8日(10:00〜19:00)の展示をします。(作品の入れ替えがありますので、ご注意ください)

育てる会の会員では、もう一人、長谷川海くんも「すろおが463」に出品します。
(海くんは、「すろおが463」には3月2日〜7日の出品予定です)

皆さん、どうぞ見に来てくださいね。

                                       育てる会 代表  鳥羽 美千子

 

 

 

  自閉症 支援者養成セミナー 報告 

   

去る1月23日(日) 岡山ふれあいセンターに於いて 『自閉症児の将来を見据えた支援のあり方と地域生活支援の実際』 という演題で、川崎市「あおぞら共生会」副理事長の明石洋子氏とご子息の明石徹之氏(川崎市公務員) による講演会が開催されました。 

参加された方から報告を頂きましたので掲載させていただきます。


講演会では前半は告知を受けてから就労までをお話くださいました。

実は、レポートとしてまとめようと思うと、何からお伝えすべきか親としての思いが溢れて上手くまとまりません。

明石さんの言葉一つ一つが心に染みてきて、胸が一杯になってきます。
私が子どもの将来として心から願っていることを明石さんは実現しておられるのです。

それは地域の中で普通にありのままに暮らすということです。それを獲得するまでの親子の歴史は、お話をお聞きしながら涙が溢れてきました。
エピソードの一部はコミック「光とともに」(戸部けいこ作・秋田書店)にも描かれていますので明石さんの著書と読み比べてみてください。

 

心に残ったことは「障害」は周りの人がどうみるかで軽くなったり重くなったりするということです。私はここはとても重要だと思いました。
つまり周りの人の理解により、障害という困難な状態ではなくなることも可能です。地域への働きかけの大切さを感じました。

 

もう一つ、子どもの「思い」を育てることです。

人は色々な場面で常に選択しながら生きています。正の葛藤も負の葛藤もあります。けれど肝心の選択は「本人の思い」がなければなりません。自分で決めたことは頑張れるし、パニックになったり問題行動を起こしたりしないで努力できるということ、本当にその通りだと思いました。

 

また本人の「思い」がなければ、たとえ何かができるようになっても応用がきかず自立にはつながらないという事をグサッと受けとめました。母としてはどうしても「できるように」なることに気持ちが向いてしまいます。けれど、使えなければ意味がないのです。

本人を育てる事へ50%、地域への働きかけ50%で奮闘されたお話も自閉症児の子育てとして、両方大切だから同時進行が必至であるということを納得いたしました。

  

こうして徹之さんは公務員として就労されたのですが、こだわりを活かされて楽しく働かれている様子や色々な人との中で関わりを持ちながら働かれているお話の中に徹之さんのポロリと言った言葉が出てきます。

とても面白くて場面を想像すると笑ってしまいました。

 

打ち合わせや控え室などで、徹之さんとお話することがあったのですが、とても面白くて楽しいのです。もっとお話したいと思いました。

これは、お2人に関わりのある人 皆さんが思われていることなのでしょう。明石さんの「プラス思考的子育て」の成果なのではないでしょうか。



 後半は地域への働きかけや事業、特例子会社の設立などを中心に話をお聞きしました。明石さんのしっかりサポートする体制が整っていて素晴らしいと感心いたしました。

しかし、このシステムの要となるのは「人」です。

育てる会で初めてお招きしたのが一昨年12月でしたが、そのときにもお聞きした「人が財産」という言葉、本当にその通りだと思いました

 

地域には日常生活の場にも、暮らしの場にも、24時間365日のサポートの場にも本人の思いに寄り添う事ができる人が集われています。いずれ来る親亡き後、安心してその時が迎えられることを「私がいなくても大丈夫だと思った」と表現されました。

「我が子だけが幸せでは本当の幸せでない」という思いがあるからこそ、明石さんのように地域を耕し、人を育てることができるのではないでしょうか。

これこそ豊かな暮らしなのではないでしょうか。


お話をお聴きしていると、子育ては晴れの日ばかりでないけれど、雨が降ったらそれをチャンスにして成長し、風が吹いたらそれに対抗して強くなる・・・明石さんからは、雨を晴れに変えるパワーすら感じました。とにかく前向きに頑張れる良いお話がお聴き出来たと思います。

 

途中出てきたお話の中に、脳性麻痺の方から言われた言葉がありました。この言葉は明石さんにとってターニングポイントになったと語られました。

「親はきらいだ。子どもの障害を認めないのは親だ」

私の心にもこの言葉はトゲのように刺さって抜けません。私たちは親の勝手で子どもの行動を制限していないでしょうか。

「人にこう思われるから」とか・・。制限は子どもの活動の場を失う事になっていきます。

まずは親から心のバリアフリーをすることを教えていただきました。

いよいよ3月に第3巻「お仕事がんばります」が出版されるそうです。
来年度もぜひ明石さんの講演をお願いできたらと思いました。

お見送りの時、徹之さんが「結婚がんばります」と言われていました。

講演の挨拶でも宣言されていました。私も応援していきたいと思いました。

                             (長谷川 和美)



会場からの質問への回答が、とてもステキでしたので、紹介させていただきます。

 

Q:高等部の保護者からの質問ですが、地域の作業所を作るための保護者の仲間作りについて、どうすれば、うまくいくのでしょうか?

⇒A:養護学校に通っているなら、周りの皆に声をかけて仲間を作っていくことが大切。徹之も、普通の学校へ通っていたので、かなり苦労したんですよ。

 

Q:兄弟児の育て方を聞きたいです。どのようなことに気をつけて兄弟児を育てられたのでしょうか?

⇒A:手の写真を撮って、自分と比べさせて、徹之が弟より大きいことを確認させて、小さい人には優しく接する事を教えました。ついつい私達は「障害のあるお兄ちゃんの方から。弟は我慢しなさい」と言ってしまいがちですが、お菓子も小さい人(弟)からあげるようにしました。

そうすると、一つしかないときには、本人が自分で弟にあげるようになる。大人になって月給をもらった時も弟に「おこづかい」としてずっと分けておりました。

徹之が、パニックを起こしそうになると必ず正嗣(弟)が直前に泣いてしまうので、先に正嗣をしっかり抱きしめて満たしてあげて、それから、徹之にゆっくり付き合ったんです。(それぞれの子どもの性格や特徴に合わせて、一人ずつ大切に育てられた)弟の正嗣も自分の方が学歴が高いからと威張るような人間にならず、努力した人(兄)を尊敬しているんですよ。

 



<保護者アンケートより>

本当の意味での「ありのまま」という言葉の意味が分かったような気がしました。前向きに子育てを頑張ろうと思います。こんなに涙が出た講演会はありません。本当に心に染み入りました。ありがとうございました。

 

人間として最も大切なことは何か、改めて私自身が勉強になり、再度自閉症の我が子を見つめなおし、「自分らしく生きていいんだ!」ということを実感しました。自己選択ということ、小さい時期からしっかり身に付けさせようと決心したところのお話が特に良かったです。地域で生きるということ、皆で守っていこうということ、24時間のサポートセンターの素晴らしさに感動しました。

 

こだわりやできないことを無理に直そうとせずに、できることを伸ばして、地域の人々に知ってもらうこと、どうすればできるかを考えた支援の方に力を入れるという考え方が、自閉症の子を育てる親として、とても楽になりました。つい、親が望むことを強要してしまいがちですが、本人はどうしたらいいのかを一番に忘れずにしていきたいです。そして本人が自己決定したことを、うまくいくように、親や学校でサポートできるように努力していきたいと思います。

 

具体的なエピソードの中から色々参考になる話が聞けて、本当に良かったです。徹之さんにもお会いできて感動しました。色々なことが可能なのだという風に思え、最初は一人でも、そのパワーが周りを巻き込んだとき、すごいことが出来るんだなぁと思えて嬉しかったです。

 

今まで他の団体でいくつもの講演会を聞きましたが、「役人(行政)、何者ぞ」と「行政機関に期待しません」という考えを持っている講師が多いように感じていました。しかし、明石さんは上手く行政・企業・地域と連携を取り合って活動されていると感じました。ノーマライゼーションの実現には、社会全体の連携が不可欠だと考えます。明石さんのこれからのご活躍を願います。

 

我が子は現在小学校6年生。最近広汎性発達障害と診断されました。今までどこか違うと思っていたのですが、やっと道が開けた・・・という感じがします。これから先、まだまだ問題は山積みです。これから先のことについては、迷いがいっぱいあります。今まで子どものSOSに気付かなかった自分を反省しています。明石さんのように「ありのまま」の障害を受け入れて、本人が自立していけるよう、道が開けるよう手助けしていきたいと思いました。

 

子どもの将来を考え、藁にもすがりたい思いの時、書店で「ありのままの子育て」の本に出会い、それ以来迷うたびに繰り返し読み返して参考にしてきました。明日から新たな気持ちで向き合おうと思います。ありがとうございます。



<教職員アンケートより>

 

今後、自閉症の方のサポートをしていけたら・・・と考えているのですが、色々な場面でサポートできることが分かり、私も頑張ってこうと思いました。「待っていても何もならない、飛び込むこと」との言葉、勇気づけられました。

 

地域の中で生きることの大切さが、とっても勉強になりました。そのためには、一人一人の個性を前向きに受け入れて、一緒に暮らしていくことのできる心の土台を作っていくことの重要さを確認することができました。

 

今は当たり前のこと(=ありのままでいいということ、自分らしく生きる、本人の思いを大切に子育てするなど)ができていないように思います。特に本人の思いで子育てをするということをつい忘れて、親や教師・周りの大人のエゴで、何でも行なっていたように思います。今日の講演では書ききれないくらい色んなことを教えていただきました。私は幼稚園教諭で、私のクラスにも自閉症の子どもがいます。いっぱい参考になることを教えていただき、明日から頑張れそうです。ありがとうございました。

 

貴重なお話、ありがとうございました。自閉症児への理解を深めることができたのではないかと思います。ビデオの中での明石さんの言葉「物ではなく、心をください」に感動と共感の思いでいっぱいです。パニックや事件をどうしてもマイナスに考えがちですが、心に寄り添い、プラスに変え、自立につなげていけたらと思います。周りの人の理解と援助でその子どもの一生が大きく変わるので、大切にしていきたいです。ありのまま・自分らしさを大切に、自立した生きる力・思いやりの心を育てていこうという子育て観に感動しました。

 

自閉症児について、初めて講演会に参加させてもらいました。保育者として、「この関わり方でいいのか?」「パニックの時はどう対応するのが自閉症児にとっていいのか?」など、日々手探りの中、保育に当たっていました。またできることを伸ばしていくことが分かっていても、発表会だからできないこと、興味がないこともさせないといけないということについて、もどかしい気持ちを持っていましたが、どんな場合でも、できることを褒め、またたくさんの選択肢を用意する大切さを考え直させられました。ありがとうございました!!また、最後の兄弟の育て方、心にジーンときました。私もお母さんになったとき、明石さんの子育てに近い子育てをしたい!心からそう思いました。今日参加させてもらい、本当に良かったです。ありがとうございました!!

 

 

支援者が勇気を出して、積極的に行動することで、世の中は少しずつ変わっていくんだということを今日のお話を聞いて、今まで以上に感じました。皆が生きていきやすい社会にするために、人任せではなく、自分もできることをどんどんしていきたいと思いました。ありがとうございました。

 

 

<福祉・医療関係者・学生アンケートより>

 

兄弟間での関わり方について、どのように関わっていけばよいかということがよく分かりました。児童養護施設は18歳までですが、その後についても施設だけでなく、地域次第で、自立して生活していけるのだということがよく分かり、良かったです。

 

去年の4月から担当している子が自閉症傾向にあると言われ、インターネットなどで色々と読みましたが、実際生活してみると、本の通りにいかないということばかりで・・・。興味を持っているものは分かっているのに、どのように生かしていけば良いのか考える日が続きました。視線を合わせようとするのではなく、その子はそれが見やすいという話を聞いて、改めて考えさせられました。今日は一日ありがとうございました。



   

明石洋子さん・徹之さん RSK訪問

 

セミナー前日の1月22日(土)、明石洋子さん・徹之さんで RSK山陽放送のテレビ局の見学に伺いました。

 

去年のセミナーに参加された方は覚えていらっしゃるでしょうか?

徹之さんは小さい頃から何故か岡山に思い入れがあって、「自立への子育て」(ぶどう社)のP128では小学5年生で書かかれた日本地図の中で、岡山県に印がついています。何故だか「RSK山陽放送」がとってもお気に入りで、去年のセミナーの日に岡山市内をボランティアさんと観光されたときも閉まっているRSKの玄関前で「RSK見学したいです!」とTV局のガードマンの方にお願いされました。

その日は運悪く、山陽ロードレースマラソンの日で、RSK自体がてんやわんやでした。

 

そんな訳で今回は、1年越しの待望のRSK訪問となりました。

 

今回の訪問では、明石さんのRSKラジオでの取材も兼ねているということで、徹之さんとは違った意味で明石さんはドキドキされていたようです。

 

徹之さんが生まれて、障害が告知されてから、受容できるようになるまでの経過。

「治したい」「普通の人にしたい」という気持ちで関わってこられたところ、本人から嫌われたり嫌がられたりしたこと。
「ありのままの彼」「本人なりの幸せ」を考えてみたとき、家庭だけではなく、地域に飛び出していく必要性を感じたこと。

本人が好きなこと(水や文字)をしている時の明るいキラキラした表情を大切に、個性を大切にしながら、今できることを更に伸ばしていきたいと考えて子育てされたこと。
前を向いて歩いていくことの大切さ。

 

そして地域で生きるため、【1】社会のルールを守る 【2】自立のスキルを伸ばす 【3】挨拶のできる人になるを大切にしたい と考えられ、地域社会という本物の場で、それを実践するための協力をお願いしたこと。今の徹之さんの自立があるのは、家族の苦労があったからだけではなく、地域の支援者が支えてくださったおかげだということ。本人の思いを育て、頑張る気持ちを育てることが、自立のためには必要なことだと話されました。

 

また、今冬成立した「発達障害者支援法」の16人の有識者として成立まで動いてこられたお話の中から、早期発見・早期療育などの早期の関わりがどれだけ自閉症児とその周囲の人にとって必要な支援かを強く訴えられました。

 

放送は1月28日(金)にあり、既に終わったのですが、アナウンサーの方も明石さんと徹之さんに大変好感を抱かれたようで、「ぜひ第3巻(お仕事がんばります)が出版されたら、電話取材でも良いので紹介させてください」とのお約束まで交わしておられました。

 

RSK山陽放送のTV局の中で写真をたくさん撮っておられる徹之さんの様子です。(画像はwebではカットしています)

本当に楽しみにしておられたようで、とっても嬉しそうにしておられました。

  

金谷総務部長さんをはじめ、多くの方にお世話になりました。RSK山陽放送は、土曜日はお休みとのことで、わざわざ休日出勤の収録をしてくださって大変ありがたく思いました。徹之さんの強い思いに皆さんが答えてくださいました。

この場を借りて、感謝いたします。本当にありがとうございました。

 

(事務局:鳥羽 紗代)

 

 



高機能自閉症・アスペルガー症候群の人の就労支援

宇都宮大学 梅永雄二先生(日本自閉症協会岡山県支部:主催)講演会 より

 

昨年12月に行なわれた「第20回 自閉症療育セミナー」で、梅永先生のお話をお聞きしました。
とても分かりやすく参考になる講演でしたので、内容を少しだけ紹介させていただきます。

 

○ 特性に関連する就労上の課題

 【LDの場合】

マニュアルが読めない、メモが取れない、報告書が書けない、情報を整理できない

 【ADHDの場合】

指示が入らない、やることを忘れる、仕事に手をつけてない、問題を要約できない

 【自閉症などコミュニケーションに問題のある場合】

相手にどう伝えたらいいか分からない、不必要なことを喋ってしまう、失敗の原因が分からない

○ サポートの方法について

 【ボトムアップ】・・・底上げ型=抽象的・観念的で分かりにくい
    ・買い物⇒1円の価値や意味、10円・100円・1000円などのシステムを知り、計算が出来るようにならないと買い物には行けない

    ・就労⇒手先が器用でないと、数が100まで数えられないと就労には結びつかない

 

 【トップダウン】・・・目的試行型=指導・支援のための考え方。分かりやすい

  ・買い物⇒計算が出来なくても、500円玉をサイフから出して、お釣りをもらえたら出来る。
    ・就労⇒岡山にどんな企業があって、どんな仕事があるか。
         その仕事の内容をフィードバックして、どういう支援があればこの子が就労できるかを考える

 

○ 医療の側面から

    〜診断と告知〜

 「告知されて良かったと思う」・・・全員一致。早めに告知をしてほしかった。

 【告知をされて良かった理由】

人格のせいではない。自分を卑下しなくていい事が分かった。家族が障害に対して理解してくれるようになったから。特性に応じて前向きに対処できるようになったから

 

○ 就労の側面から

 【必要なサポート】

本人自身ではできない職場とのコーディネーターこそ望まれる!=就労の支援者

 

○ 実践例
   ・ 塾講師(派遣スタイル)・・・歴史に詳しく全部暗記している
   ・ 花屋の花を届ける。生協の配送センター・・・地図に詳しい
   ・ 銀行の振込みの書類整理・・・名前のマッチングが早い
   ・ 書類の打ち込み・・・数字の模写が得意 など

 

○ 職業評価とは

   ・ 何が出来て何が出来ないかを見るのではなく、

どういうサポートをしていけば出来るようになるかを考えるのが仕事!!

・ 就労した場で、サポートすることが必要

・ その人にあった仕事を見つけていくのが仕事

 

○ 就労へと導くために
   ・ 様々な作業体験・・・家庭でのお手伝い、アルバイト、作業、学校での体験
   ・ 地域の情報を掴む・・・どのような産業、自立を目指す機関があるかを調べ、保護者と知識を共有し、一緒に地域を開拓していく

 

○ 高機能自閉症の就労支援対策
   ・ 職場の同僚・上司に自閉症という障害をきちんと説明する
   ・ 自閉症者を雇用するメリットを説明する
   ・ 仕事内容をはっきりさせる
   ・ 適切な監督体制
   ・ 改善すべき点は本人にはっきりと告げる
   ・ 行動のルールをはっきりさせる
   ・ こだわり行動と変化に対する不適応行動への対応
   ・ 他の専門家の力を借りる

(事務局:鳥羽紗代)

 



 先生からの体験談

 

いつも会報楽しみにしています。11月末の会報の面白コラム 「どっちも好き」を読んで、5年ほど前のことを懐かしく思い出しました。

当時私は小学校の特殊学級の担任をしていて、クラスにはTくんがいました。中学年のTくんは給食時間、週1回は交流学級に行き、もう1回は交流学級のお友達5〜6人をTくんのクラスに招いて一緒に給食を食べていました。

 

その時のことです。

交流学級からやって来たYくんがこう話しかけました。

「ねぇ、Tくん。ここで給食食べるのと僕らの教室で食べるのと、どっちが好き?」

私は心の中で『えーっ!?いじわるな質問だなぁ』と思いつつ耳をダンボにして給食を食べていました。するとTくんは余裕(?)で「どっちも好き!」との答え。

『うんうん、いいぞ!』(私の心の声)

すると先ほどのYくんが「あれー、うまく逃げられたぁー」と言いました。

そこで私「うまく逃げたんじゃないと思うよ。Tくん、ここの教室と同じくらい皆の教室が好きなんだよ。どちらか一つに決められない時ってあるよね?」

Yくん「うん」

私「Tくんにとって、ここと同じくらい好きな場所が他にもできたこと、先生はとっても嬉しいわ。皆の教室はとってもいいクラスなんだね、ありがとう」

するとYくんは「うん」とにっこり笑って頷いてくれました。

他にもこんなこともありました。

「どっち?」というと選択肢2つの中から選ぶのですが、選択肢がもっとほしいことってありますよね。ある時Tくんに「○○?△△?どっち?」と聞いてもTくんの返事がありません。そこで「それとも□□?」と選択肢を追加して質問することが重なりました。

 

そんなある日のこと、Tくんに「○○?△△?どっち?」と尋ねたところ、Tくんの方から「それとも?」との言葉が。『ああ、2つの選択肢の中にはTくんの選びたいものがなかったんだ』と了解し、「それとも□□?」と新たな選択肢を示しました。するとTくんはまたもや「それとも?」との返事。『あ、これも違うんだ』・・・こんな具合で私とTくんの間で彼の思う選択肢が出るまで「それとも?」を続けました。

そんなTくんとも担当が変わり 久しくお話ししていません。頑張っているだろうな。応援しているよ。

そして会報で紹介されていた一般就労が決まったKくん(すごい!!)、ぜひ不定期でもいいので「仕事だより」みたいなものを作ってくれると嬉しいです。日々色々なニーズを持っている子ども達と関わりながら暮らしている私達にとっても、小学校後の暮らしや進路、就労などのこと、ぜひ教えてほしいです。

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 支援者養成講座 

 

先月は第9回目として、12月の支援者養成セミナーでもお招きした 大阪府立藤井寺養護学校 教諭の重松孝治先生が「行動管理〜自閉症の人の行動と関わり〜」と題して、問題行動への捉え方についてのお話をしてくださいました。

 

「問題行動」とは、【1】本人の安全を損なう 【2】周囲の安全を損なう 【3】本人の学習や活動を妨げる行動
のことを指すそうです。

 

例として、就労から帰ってくると、食事を食べたいと暴れるAさんへのアプローチを「何故その行動をするのか」「どういう背景があるのか」「それをした結果どうなっているのか」などを冷静に客観的に観察する目の大切さを教えていただきました。

 

 また「氷山モデル」を示しながら、目で見える問題行動をいくら制止しても、原因が解明され解消されなければ、また違う形での問題行動となって表れること。


問題行動を止めるためのその場しのぎの「消火」でなく、いかにその原因を解消するかという「防火」に取り込むことがいかに大切かということを教えていただきました。
 

私達が「防火」をするためには、
【1】 自閉症の特性への十分な理解
【2】 日常的に特性から考える姿勢
【3】 チームでのアプローチや情報の共有(家庭と学校も)
【4】 困っているのは誰かを考える視点
などの点を大切に、子ども達と向かい合わなければならないのです。

「問題行動をなくす」ためのアプローチではなく、「本人が安心して生活できる」ようになるためのアプローチが必要なのではないでしょうか。

 

たくさんの事例の中から、たくさんのヒントをいただきました。

重松先生、お忙しい中 貴重なお話をしてくださり、ありがとうございました。

 


 第10回 支援者養成講座

日  時 : 3月4日(金)19:00〜21:00

          ※日時は変更になる場合がありますのでご注意ください!

場  所 : 太陽の家 2階(育てる会事務局)

講  師 : 笹野 京子 先生(旭川荘児童院 医師)

内  容 : 医療の現場から自閉症支援(仮)

参加資格 : 育てる会賛助会員

年 会 費 : 10,000円  ※年間10回講座(途中入会の方、ビデオあります)

 

なお、今年度は今回が最終ですが、来年度の「支援者養成講座」について、参加してみたいと思われる方はご連絡ください。

 


 

   掲 示 板

○ ビデオカメラ譲ってください 

療育事業で、子ども達とスタッフの関わりを隣室からお母さん達が見るためのビデオカメラが急遽必要となっています。どなたか譲っていただけないですか?
録画はせずに、本当に今の様子を見るためだけのものです。そのため8ミリでもDVC対応でも大丈夫です。

「ちょうど買い換えようと思っていたのよ」というカメラがありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

○ 非常階段(避難階段設置)へのカンパのお礼とお願い 

非常階段へのカンパのご協力本当にありがとうございます。(2005.1現在 357,000円)

★ご協力くださった皆様 (あいうえお順)★

家本様・井上様・江田様・江崎様・岡部様・尾副様・片平様・川澄様・木村様・国定様・小林様・佐藤様・山陽子ども劇場様・塩見様・田口様・田中様・利守様・鳥羽様・豊田様・中岡様・永見様・野田様・法本様・堀地様・堀様・松浦様・三宅様     
その他匿名希望の方々

必要経費まであと一歩となりました。引き続き受け付けております。

一口1,000円で何口でも結構です。どうかよろしくお願いします。

 

郵便局から振り込み・・・記号 27542961  名義:岡山県自閉症児を育てる会

中国銀行から 〃 ・・・普通口座 番号 1369120

名義:特定非営利活動法人 岡山県自閉症児を育てる会

                    ※ご送金の際、名前の最後に「カンパ」とご記名ください。お願いします。

 



 面白コラム

毎度お馴染みのTくんのエピソードです。

Tくんのお家には砂糖と塩の密封容器がそれぞれあります。

砂糖は少し大きめのサイズ、塩は一回り小さいサイズです。
 

ある日、Tくんのお母さんが砂糖を見ると随分と減ってしまって、後わずかとなっていました。「ああ、入れないとなぁ」と思いながら、そのままにしていた午後、ふと見ると砂糖は容器にいっぱい入っています。「まぁ、Tくんが自分で入れてくれたのね?さすが!よく見てる」・・・お母さんはそう信じていました。

その日の晩御飯はブリ大根。魚のブリと大根を一つの鍋で甘辛く煮るTくんのお母さんの得意料理でした。

いつものように長年の勘でサッサと砂糖の容器から入れたTくんお母さんが、ちょっと鍋の横を離れた時、料理が出来上がっていると勘違いしたTくんは、自分の食べる分をお皿に入れて食べ始めたのでした。

 

お母さんが隣室にいると、突然Tくんの叫び声が聞こえました。「あ〜あ!辛い!!辛いよ!!」

「ええ?どうしたの・・」と不思議に思っているとそこへやってきたTくんパパが味見。「うわっ何これ?!」お母さんも味見してみると、何とも塩辛い(本当に食べられないほどの味)のブリ大根。

「えええ??・・・あ!もしかして!!」お母さんが砂糖の容器を開けてぺろりとなめてみると・・、それは塩。

おそらく、Tくんは足りないと思って「入れなきゃ」と気がついたまではいいのですが、とっさにその容器が塩なのか砂糖なのか分からなかったのでしょう。(普段は使い分けています)

何とも残念なことに、その日のメインディッシュは、湯豆腐となりました。

 

後日、Tくんが「甘い辛い」という表現を的確に使っているかどうかでちょっとした話になった時のこと。

お母さんが甘い酎ハイの入った缶を見せて「Tくん、これは甘い?辛い?」と聞いたところ「辛い」と即答。

「えええ?辛いかなぁ??」と話していると、お父さんから一言。「炭酸が入っているからだろ」・・・なるほど、舌がピリピリするから「辛い」なんですね。納得。

     (鳥羽 紗代)

 



事務局だより


いよいよ2月になりますね。寒さも本格的で、雪がチラつく今日この頃、事務局から出るのが辛くて辛くて・・・どうも寒いのは苦手です(毎年言っているような気がしますね^^;)



さて、次回の会報で詳しくお知らせしようと思いますが、先日(29日)行なわれた「おかやまサポート基金 助成先選考 公開プレゼンテーション」にて、私達育てる会の活動が評価され、3年間連続の助成をいただけることになりました
!!

 

自閉症児の発症率や親の大変さ、会ができてからどんな活動をしてきたか、そして私達が何故NPOになろうと思ったのか、限られた時間で一生懸命伝えてきました。

自分の子どもを育てたり、出来ることを増やしたり、仲間作りをしたり・・・とっても良い活動をしていると自負しています。でも、それだけでは私達の目指す「自立した大人」にはなれません。では何が必要なのでしょうか。それは、地域を育てることではないでしょうか。

 

自閉症者がいくら成長して、出来ることが増えても、地域社会がその人を知り、自閉症について理解し、暖かく迎え入れてくれる人たちがいなければ、彼らの生きていける場所はないのです。

 

自閉症セミナーや自閉症のしおり、電話相談や支援者養成講座のようなNPOとしての事業は、まさに「地域を耕す」「社会を変える」活動なのです。

「岡山県自閉症児を育てる会」は、「自閉症児を育てる」だけでなく、「地域を育てる」「人を育てる」「世の中を育てる」会なのだと私は思っています。



さて1月は忙しい毎日でしたが、2月もますます忙しくなりそうです。
カレンダーを見てびっくりですね、閉局日ばっかりみたいでしょう? でも実際は違うのです・・・(><)

7日はキッズの打ち合わせ&佐賀へ前入り、8〜10日は佐賀のNPO法人それいゆへ見学研修(また報告しますね)、13日はキッズルーム、19日は重松先生と療育の研修、20日は水泳教室・・・プラス 土日の普段のお休み m(__)m が重なっているのです。

皆さんにはご迷惑をおかけしますが、ご理解&ご協力をお願いいたします。

事務局に来られる時は、必ず1本電話をくださいね!!



以前は「育てる会会報」はHPにも全文をUPしていましたが、容量等の事情により、現在は一部抜粋にさせていただいています。
会の行事の予定は育てる会の「
今月の予定」に、近隣の講演会等の案内は「近隣の講演会等の案内板」に、また特にみなさんにお伝えしたい記事などは「育てる会ライブラリー」に載せるようにしています。
容量は小さくなりましたが、ご覧いただければ幸いです。
なお会報は正会員・賛助会員の方へは郵送でお届けしています。
もしご希望の方がおられましたら、ぜひ賛助会員に申し込みをお願いします。年会費 3000円です。
応援よろしくお願いします。
申込み方法の詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

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