sorry,Japanese only

『 俺ルール !』
    自閉は急に止まれない
ニキ・リンコ:著 花風社 定価: 1600円+税
ISBN4-907725-65-5 C0036 \1600E

またまたニキ・リンコさんの楽しい(?)エッセイです。
前作の藤家寛子さんとの対談集「自閉っ子、こういう風にできてます!」では、定型発達している人たちとはあまりに異なるその身体感覚について笑わせて(失礼)もらいましたが、今度はその考え方の特異さについて、また楽しませていただけます。
本人にとっては切実ですし、現に今、その考え方、捉え方が周りの人とはあまりに違っているためにいじめに遭っている子どもたちもいると思います。その意味でまじめに向き合わなければいけない問題なのですが、ニキさんのあまりに軽妙な語り口に思わず笑ってしまいます。ニキさん自身も、間にマンガをはさんで、そちらの方向を望んでいらっしゃるようなので、楽しませてもらいましょう。
さて、「俺ルール」ですが、まずは「まえがき」に代えてニキさんが「俺ルールの定義」を書かれています。これを読めばこの本のテーマや、雰囲気もよくわかると思うので、その全文を紹介します。
自閉っ子の頭の中で発生しがちなその子(大人も含む)独自のルール。
定型発達の人から見ると「なんじゃそれ」と思われるものも多いが、成り立ちには「一抹の真実」が含まれている。ただそれが本当に「一抹」なので、「なんじゃそれ」になってしまう。仕組みを知ってみると、意外とたわいなかったりする。
発生要因としては、自閉っ子の情報処理の特性が考えられる。すなわち
・ 見逃す情報が多い割には、見るところは深く見ている (自閉式入力)
・ 拾った情報は貴重なので、ハイパーりちぎにそこで得た法則を守ろうとする (自閉式出力)
こうした情報処理のプロセスで多数の「俺ルール」が生じる(ようだ)。
以上の説明をふまえた上でこの本を読むと楽しくなるし自閉のことがよくわかる。
著者前著「自閉っ子、こういう風にできてます!」(藤家寛子との共著)を併せて読むといっそう楽しくよくわかる(それに、両方読んでくれると著者も出版社もうれしい)。
どうです、さっそく買って楽しんでみたくなったのではないでしょうか。
本文にはその「なんじゃそれ」の俺ルールががたっぷり詰まっています。内容を書くとネタバレになって、実際に読んだときの楽しみを減らしてしまうかも知れませんので、ここではこれ以上触れないでおきます。みなさんも手にとって「なんじゃそれ」と楽しんでください。
この本を読むと(ニキさんもお薦めのように、「自閉っ子・・・」とあわせて読むと、よりいっそう)、アスペルガーの子どもたちが、よりいじらしく、より可愛らしく思えること間違いなしの一冊だと思います。
どうぞ、できたらご両親で読んで、いっしょに笑いあっていただけたら・・・・この本に詰まったエピソード、「なんじゃそれ」が、「わかるわかる」と本当に思えるのは、同じ自閉の関係者たちだけのように思います。ふだん専門書はあまり読まないお父さんも、この本なら娯楽書として抵抗なくサッと読んでいただける構成です。なにしろマンガや愉快なカットも豊富で、活字も専門書よりは一回り大きく軽妙で読みやすいです。
そんな家族向けにお薦めの一冊です。
(「会報 88号」 2005.9)

  目次

俺ルールの定義
マンガ 俺ルールな日々〔1〕
マンガ 俺ルールな日々〔2〕
おまわりさん
春になったら
そうじ当番
雨でも水やりの話
ピンクのリボン
自閉都民
ラビオリエラー
音楽教室は4階
無印ファスナー
マンガ 俺ルールな日々〔3〕
東洋陶器
入力欄
アイス
選択
動いたら
小脳説
焼肉
記憶と編集力
六角と砂嵐
テレビっ子ができるわけ
地域限定
期間限定
タイムスリップ
「悪」のいろいろ
マンガ 俺ルールな日々〔4〕
マンガ 俺ルールな日々〔5〕

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