sorry,Japanese only

自閉症の息子と共に・・・3 お仕事がんばります 』
明石 洋子:著 ぶどう社 定価:2000円+税
SBN4‐89240‐176‐5 C0036 ¥2000E

ありのままの子育て」「自立への子育て」に続く、明石洋子さんの第3巻、完結版です。
題名にもある通り、前作2巻はおもに子育てについての体験談やアドバイスであったの対し、本書はいよいよ徹之さんの就労への挑戦です。
決して軽くない障害を持ちながらも一般就労、それも障害者枠でなく、みんなと同じ土俵で試験を受けて公務員試験にパスした徹之さんは、自閉症児、特に同じカナータイプの子どもを育てる家族にとって希望の星です。
生まれ育った地域で、普通に働いて、普通に楽しんで、普通に暮らす。
それは普通児(・・・なにか普通・普通という言葉が強調されて、障害児は普通でないように聞こえるので、言い換えさせてもらうと・・) “定型発達している子どもたち”にとっては、さほど無理なく選べる道の一つでしょう。
しかし知的障害を伴う自閉症の人にとって、「普通に働く」ということは、この中では最も難しいのではないでしょうか。普通に楽しんだり、普通に暮らす、ということはそれまでの学齢期の延長として、支援さえあれば、できることは一人で、できないところは助けてもらってできると思います。家庭や学校での生活の続きです。
でも、“普通に働く”ということは未体験の分野です。家庭でお手伝いをして、お小遣いをもらう・・・もちろんそれも大切な体験で、その延長には授産施設や作業所などの福祉的就労があると思います。理解のある支援者といっしょに働いて、報酬をえる、おそらく我が家も含めて多くのカナータイプ描く未来像でしょう。
でも、徹之さんは違いました。「お仕事がんばります」徹之さんのイメージするお仕事とは、普通のみんなといっしょに汗を流して働いてお給料をもらい、そのお金で生活するという“普通の生活”でした。
もちろん、生半可なことではかないません。お母さんをはじめ、周りの方の支援、応援があってはじめて可能になった道だと思います。後に続く私たちのために、徹之さん自身と、周りの方が切り開いてくれた道です。
それでも、「公務員は税金から給料が払われているから、給料分働かないと税金泥棒と非難される」というような意見もあったそうです。それには明石さんはこんな風に答えられています。
「もし徹之が入所施設に入ったら、施設では徹之のもらう給料の3倍から5倍の税金が使われるのよ(それがいけないと言っているのではありません)。入所施設で幸せな生活が送れるのならいいけど、徹之は保護されたり管理される生活は嫌で、その何分の一のお金でもいいから自分で働いて稼いで、自分の意思で選べる主体的な生き方をしたいと願っているの。
だから徹之に働いてもらって、給料を払って、そこから税金を払ってもらう方が、有効なお金の使い方だと思わない?」
例えば、50人定員の通所授産施設をつくると年間数億円かかります。それを、中程度の障害の方をゴミ収集や公園緑地の管理、印刷作業、配達作業などのチームをつくって雇用すれば、逆にプラスにできます。
それは公務員に限りませんね。そしてたとえ一般就労はできなかったとしても、本人が主体的に選べる選択肢の多い地域の生活の方が好きな人たちの方が多いのではないでしょうか。明石さんたちはそんな生活を保障するために、今、地域で作業所やグループホームづくりに取り組んでいきます。それは我が子のためでなく、そこに暮らすみんなのためです。明石さんの言う“地域を耕す”というのは、こういうことなのでしょう。
現に、徹之さんはグループホームでは、多少でも管理される生活となるためか、「グループホームを卒業します!」とあっさり卒業して家に帰ったそうです。
でも、それを必要としている人たちのために、明石さんたちはグループホームの運営にあたられています。ご主人も今は社会福祉法人「あおぞら共生会」の理事長として、同じく地域の人々のために活動を続けられていらっしゃるそうです。頭が下がると同時に、「生きがいのある生活だろうな・・」と正直羨ましくもあります。後に続きたいと思える、徹之さんを囲む家族の生き方です。
そして今、徹之さんの目標は「お仕事がんばります!」から「結婚がんばります!」に変わったそうです。障害があろうとなかろうと、人として自立して普通の暮らしを全うできるよう、本人の手助けをしてやるのが親としての(というか、先に生まれて先に死んでいく人生の先輩としての)本来の支援のありようのように思えます。
我が家もそろそろ親離れ、子離れを考える時期になったようです。
(「会報84号」より 2005.5)

  目次

序文 人が幸せになる知恵と勇気と行動が、ここにある ・・・ 戸部 けいこ
はじめに
1章 中学時代から、「働く大人」を目標に
「あずさの会」で親同士、知恵を出し合って
中学校は特殊学級へ
地域の子どもたちと一緒に学齢児活動
PTA広報委員長の仕事を楽しく
私が先回りしないで、徹之が自分で
一人で日帰り旅行へ
「地域で自立する」を目標にしよう!
初めての職場実習
2章 作業所で、お店で、働くことを体験
中学校卒業後の進路を考える
地域作業所「フォーラム幸」で学ぶ
地域作業所「あおぞらハウス」をつくる
「あおぞらハウス」は八百屋さん
立ち退きの危機を乗り越えて
地域に巣立っていくことを願って
「ジョブコーチ」の試み
文房具店の太陽堂でアルバイト
心配していたことが起きた!
仕事のやり方は、目で見てわかる方法で
3章 高校の扉を開いて、楽しい青春を
高校の扉をたたく
弟、政嗣の読書感想文
ドキドキの入学試験
充実した楽しい高校生活
小島吾朗先生との出会いに感謝
周りのみんなを明るくしていく
なぜ数学が大好きになったか
わかりやすくサブノートをつくって復習
川崎高校には、いい思い出がいっぱい!
4章 公務員へチャレンジ!
清掃車に乗ります! 公務員になります!
清掃局のアルバイトにチャレンジ
一緒に仕事できない、辞めてもらいたい
今度は、大師公園でアルバイト
「知的障害者の公務員採用」の道を開きたい
公務員試験を受験
一度で合格! 夢のよう
「公務員合格」をお土産に、沖縄のシンポへ
5章 清掃局で、老人ホームで、働く
採用通知が来ない
清掃局「堤根処理センター」で働く
職場での仕事ぶり
仕事のやり方を覚える
知的障害者の公務員雇用を進めてほしい
特別養護老人ホーム「多摩川の里」で働く
ピエロでパフォーマンスの才能が開花!
「心のバリアフリー」を願って
6章 地域発・当事者発の地域支援をつくる
街中にグループホームをつくろう!
重い自閉症の人のグループホームをつくる
障害の重い人こそグループホームの方がいい
「サポートセンター あおぞらの街」をつくる
支える手が、家族からさぽーとせんたーへ
地域のみんなで支える、本当の「地域福祉」を
おわりに

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