東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 最終報告書 DL PAGE国会事故調 報告書 DL ページ
2011.12.9〜

セシウム汚染ミルクが市民の手による検査で発覚

ゆるすぎる暫定規制値が、一部業界の怠惰を免責。
赤ちゃんに内部被曝させても、たいしたことはないと開き直る「技術先進国」。

赤ちゃん用粉ミルクの放射能汚染問題
「(粉ミルク)200Bq/kg(セシウム)以下なら回収の必要もない」と放言した「食の安全専門家」
 岩波書店『世界』2月号 「子どもたちの未来を守るために」
 2012年7月26日
京都大学と東京大学の学生からの問題提起
ほんとうに原発から「さようなら」するために、今考えなくてはならない事。→ダウンロード.pdf
赤ちゃんの飲用履歴ノートを
赤ちゃんを守るためには、粉ミルクに限らず念のため、このような記録をつけておくことをお勧めします。異常を感じた場合、問題が指摘された場合はなおさら、早めにレシートや記憶などからさかのぼって記録しておくこともお勧めします。これらは、森永ヒ素ミルク中毒事件の教訓です。消費者が警戒し、賢くならなければ、食の安全が守られないのが、この国の半世紀以上にわたる変わらない現実です。


 2011年12月7日、明治の粉ミルクからセシウムが検出されたという報道が、全国的に波紋をもたらしている。特に乳幼児を子育て中の親御さんにとっては、大変ショックな事態である。森永ヒ素ミルク中毒事件を想起させるとの意見も多く寄せられている。
 この問題を幾つかの角度から考えてみる。

明治-離乳期用ミルク-「ステップ」の汚染
 「株式会社 明治」 が製造・販売する粉ミルク「明治ステップ(850g缶)」から最大 30.8 Bq/kgの放射性セシウムが検出された。福島の市民団体がγ線用微量放射能測定器を購入し、さまざまな食品を検査している過程で発見した。その後、明治に通報し、同社が自社調査して12月6日に発表したという。原発事故後に粉ミルクからセシウムが検出されたのは初めてだと厚生労働省は述べている。
 報道によれば、原因として、福島第一原発事故で外部に拡散された放射性核種が、外気を取り込んで行う乾燥工程で粉ミルクに入り込んだと思われる、とある。
            
 (市民団体の用いたシンチレーション検出器の検出限界値は測定時間1000sで10Bq/kg) 

外気を取り込んで乾燥させる工程(?)は他社でも同じ…。

 当資料館でもすでに震災以降10日間程度までの段階で明らかにしているように【原発震災コーナー】、このたびの福島第一原発事故により自然界へ拡散された放射性物質の量は、チェルノブイリ原発事故に次ぐ、史上まれにみる規模になっている(※)。拡散された放射性物質は、すでに、風、水(降雨・河川・地下水・海洋・海流)、大気循環を通じて、農水産物、工業生産物、サービス、社会インフラなどすべての社会活動にはかり知れない影響を与えている。当然、食品製造工程への影響は真っ先に警戒すべき部分だ。むしろ、本来なら、もっとも事前に警戒でき、警戒すればある程度対策も可能な業界のはずである。逆に食品は、意図的に隠せば、急性
2012.3.19
「プロメテウスの罠」朝日新聞社 刊
3月12日午前9時までの隠された汚染データ

省庁では人命軽視の証拠データがどのように「隠されて公開されて」いるか?

 朝日新聞社から「プロメテウスの罠」が刊行された。同書22ページには、「殺人罪じゃないか」との小見出で、恐るべき事実が明かされている。いや、どれも驚くべきことばかりだが…。
 SPEEDIのデータを、政府の閣僚クラスは知らなかったというが福島県は知っていた。そして、県は、空間放射線量を測定し記録したが、当の住民には隠した。朝日新聞のこの部分を読み逃した人は、東京電力福島第一原発1号機の爆発以前に、すでにある地域が汚染されていた事実を知ることは難しい。同書をお勧めしたい。
 ただ、これを明確に示すデータが実は「こっそり」と公開されている。国民に分からないような形で「書庫の陰に」置かれている。だが、この3月12日になって福島県があわてて実施したデータが公開されたのは、6月3日になってから。つまりこのデータは少なくとも三ヶ月近くは完全に隠蔽されていたことになる。 同書と、『裸のフクシマ原発30km圏内で暮らす』の著者:たくき よしみつ氏のブログ↓http://gabasaku.asablo.jp/blog/ などを参考に隠蔽の手法をトレースしてみる。
経済産業省のサイト http://www.meti.go.jp/ の右列の「報道発表」をクリック →報道発表 http://www.meti.go.jp/press/
最後尾 過去の報道発表
http://www.meti.go.jp/press/index_history.html
  ↓
ここから極端に検索が困難になる。そもそも2011.3.11のデータが6月3日に発表されていることなど普通は知る由もないからだ。さらに同日発表の項目だけで20項目ある。発表しないよりしたほうがいいのは当たり前だが、大量の文書に紛れ込ませるのは、犯罪を隠そうとするときの悪徳企業の手口である。 
  ↓
2011年6月3日 
6月3日分の一番下の
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の計算結果に係る追加公表について
http://www.meti.go.jp/press/
2011/06/20110603001/20110603001.html

  ↓ ここでもまだ出てこない
最後尾の「関連リンク」をクリックすると資料は二つしかない。SPEEDIによる試算結果5件を掲載します、とあるが、いずれも3月12日までの福島のデータではない。この時点で6月3日の発表データには掲載されていないと思い込む。ところが最後に「関連リンク」というものがさりげなく置いてある。
「福島第一原子力発電所について−原子力発電所の現在の状況について−」。6月3日発表のデータかと思いきや…http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/release.html ←
これは、通常の報道発表の枝サイトとしての震災用報道発表ページではなく、震災コーナーの「原子力発電所事故収束に向けた道筋」のページに飛んでいる。トップページの報道発表は一見、省全体の発表一覧という形をとっている。では、このページには、震災の関連情報は含まれていないかというと、有るのだ。ならば多くの人はここで公表されているもので全部と勘違いするだろう。
 では震災専用の報道発表ページが容易に探せるか? まず東日本大震災のコーナーをみてみる。だがここには、震災用の報道発表一覧という分かりやすいバナーは無い。右列には再び、最初の報道発表のバナーがあり、それをクリックしようものなら堂々巡りとなる。全テキストを読むと、後半の「東京電力福島原子力発電所事故の収束および今後の廃止措置に向けて」のコーナーに、「原子力発電所事故収束に向けた道筋  東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋や日々の発表を掲載」とさりげなく牧歌的な文章に変えて紛れ込ませている。(2012.3.19現在)

なんと約3万6千字を費やした膨大な量のインデックスが並んでいる。これが6月3日のデータなのか?いや、違うページに飛んでいる。
トップにひときわ大きい活字のタイトル「原子力発電所事故収束に向けた道筋」という楽観的な見出しがある。
ところがその後半には、再度「記者会見等での配布資料」というタイトルがあり、2011年3月11日以降、2012年3月16日までの(2012.3.16現在)1年以上にわたる記者会見での配布資料が収められている。  ↓
タイトル3本目の「記者会見等での配付資料」コーナーを探って、再度6月3日を選択する。すると
2011年6月3日(金)には5本の発表がある。その一番上に

東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所周辺の緊急時モニタリング調査結果について(3月11日〜15日実施分)
がある。
このページの4番目の「発表資料名」の一番上と二番目に問題の資料が掲載されている。
2番目が↓本命の資料。3ヶ月隠蔽されたデータだ。
「(別添)福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所周辺の緊急時モニタリング調査結果について(3月11日〜15日実施分)(PDF形式:7,017KB)」
 2ページ目を見ていただくと、詳細なデータがある。黄色は無視して、2011年3月12日の午前8時52分浪江町大字高瀬字西原で14マイクロシーベルト、9時01分浪江町大字酒井字堂場では15マイクロシーベルトが観測されている。このデータは6月3日まで公表されなかった。【データのアドレス】
http://www.meti.go.jp/press/
2011/06/20110603019/20110603019-2.pdf
症状が発生し、大事故になるまでなかなか「バレ」にくい…。
 (※ 京都大学原子炉実験所の小出裕章助教によると、福島第一原発事故で環境中に放出された核分裂生成物は広島型原爆の死の灰のおそらく数百発分である”としており、今なお、“残りの数千発分”の核分裂生成物が原子炉周辺に留まっている、と述べている。 『 DAYS JAPAN 2012年1月号より /雑誌 『DAYS JAPAN』 は、このたびの原発事故に関して、注目すべきスクープを発表し続けている。)

品質管理の杜撰と二枚舌的アナウンス
 粉ミルク製造に関して、報道では、外界の空気を乾燥作業に取り入れるような工程を他社も有しているとのことである。そのようなシステムであれば、従来から、空気中の雑菌などへの対策は当然のことながら考えている(はず?)だ。それなら、原発が水素爆発とメルトダウンを起こしたという公知公認の事実からさかのぼって、放射性核種の集中的拡散期に製造した製品をトレースし、徹底検査をしなくてはならないのは素人でも理解できる話である。さらに言えば、少しは理科に詳しい技術者がいれば、震災直後から原発事故の可能性を考え、あらかじめ対処を進めていてもおかしくはない。にもかかわらず、事故から9ヶ月もたって、市民団体からの通報で再度検査したらセシウムが出てきた、という経過自体が、驚くべきことである。この事態から、粉ミルク製造企業の品質管理体制のありかた、製造という業務に対する基本的姿勢の問題点が改めて浮き彫りになっている。ちなみに、乳業業界とは異なる、ある食品大手企業は使用する原料の検査のため、4月の段階からゲルマニウム半導体検出器を自社内に導入し、8月からは同検出器を2台に増やしたと細かく説明している。これに比べると、赤ちゃんの口に入るものをつくる企業の杜撰な実態には、驚くほか無い。一般市民のほうが設備を整えているではないか。


大人も子どもも、いっしょくたの暫定規制値…。
子どもの健康を粗末に扱う姿勢はどこに起源が?
 
 「明治ステップ」はたまたま市民団体が検査・発見した。ではこれは明治だけなのか? 他社はどうなのか? やはり利害関係のない外部団体が、店頭に並んでいる無数の商品を抜き打ち検査しなければいけないのか。だが、膨大な数の検体を集めなければならないはずだ。それをすべき、利害関係のない組織は本来、公的セクターのはずだが…。
 ところが、乳製品200Bq/kg(セシウム)という無神経な暫定規制値を設定している政府によって、公的機関は検査義務を免れてしまっているようだ。乳児用の粉ミルクに対しても、大人も子どもも一緒くたにした「乳製品」全般の規制値を設定したままである。この国の、子どもの健康を粗末に扱う怠惰な姿勢はいったいどこに起源があるのだろうか。一方で、1台500万円近くする検査機器を市民が自腹で購入し、人件費までかけながら、朝から晩まで機械を稼動させ、何から何まで測定しなければならないという現実は、ほとんど世紀末の光景だ。こういった作業を市民に自腹でさせていて当然のように考えている「経済大国」は、間違いなく、他国から、「お笑いぐさ」となる。
 しかも、市民から通報されてバレるまで「安全です」といい続ける。だが理科好きでなくとも、常識をもつ人間なら、そのような工程に背筋を寒くせざるを得ないし、にわかに信じがたい話だ。食品業界全体への信頼を地に落としかねない事態。それでも、暫定規制値200Bq/Kg(セシウム/乳製品)はそんな粉ミルク製造企業の怠惰の全体を免罪してしまっている。

東京の学校給食用牛乳にも…
★1.粉ミルクにセシウム  
    測定なくして安全なし 山崎久隆
 セシウム137と134が合わせて約30ベクレル検出された明治の粉ミルク。「明治ステップ850g(缶)」という製品で、12月3日と4日に検査で発見されたという。ホームページには測定データも公表している。
 明治は、セシウムが検出された製品約40万缶について回収を行うことにした。以前の明治とは大きく違った対応の理由は何だろうか。
 粉ミルクのセシウムは乾燥重量でキログラムあたり最大30.8ベクレルであるから、飲む段階で溶かしていることを考えれば、摂取する段階で濃度は薄まることになる。おおむね30グラムを200ミリリットルのお湯に溶かすというから、この状態では1リットルあたり0.8ベクレル程度になる。大量の放射性物質が混入したとは言えないはずだが、明治は粉ミルクの無償交換を始めた。このこと自体は良いことのはずだが、そうなると9月に同じ明治を舞台に起きた給食の牛乳問題は一体どうなるのかという疑問がわく。
 10月、東洋経済誌に明治乳業の学校給食用牛乳のセシウム汚染問題が取り上げられた。測定をしたのはたんぽぽ舎にある放射能汚染食品測定室、依頼をしたのは町田市議会議員の吉田つとむ氏だ。このとき町田市の学校給食用牛乳からキログラムあたり6ベクレルのセシウムが検出された。吉田市議は直ちに明治に対し公開質問状を出し、町田市には学校給食の放射能測定を要請した。
 明治の回答は「(集荷地域にある)各自治体等の調査結果において、放射性物質は暫定規制値を大きく下回り安定しております。したがいまして、牛乳の安全性は確保できているものと判断しております」という木で鼻をくくる回答。セシウムが入った原因や対応策の説明は全く無かったという。
 町田市もまた、まるで人ごとのような対応だったと吉田市議は語っている。
(10月29日週刊東洋経済)
 一方、今回の粉ミルク問題では、飲む段階では遙かに低くなるはずの粉ミルクを40万缶も回収するという。この対応の違いは一体何だろうか。
 さらに奇妙なのは、今回の粉ミルク問題では汚染原因について説明をし始めていることだ。ではなぜ学校給食用牛乳で説明を拒否し続けたのだろうか。
 考えられることは、このときの対応に対して吉田市議のように厳しく追及する人がいたことが明治の対応を変えさせたということであろう。
 隣の武蔵野市では同様に5ベクレルのセシウム汚染が見つかった牛乳(明治ではない)を給食に出すことを中止している。町田市と同じ明治の牛乳を使っていた世田谷区などでは自主的に区で検査をする体制を取るという。
 すぐに成果が現れないとしても、粘り強く迫り続けることが、企業の態度を変えさせる唯一の道だと言うことを、今回の明治の対応が表しているのではないだろうか。
 たまたま粉ミルクを飲んでしまった子どもたちの健康にはおおきな不安が残るかもしれないが、少なくても発見して取り除くことが出来たことで、この明治については汚染粉ミルクが出回る可能性は無くなったのだとしたら、今後の被曝量を低く出来た(残念ながらゼロには出来ないが)と考えるほかは無い。
 町田市の吉田市議のような取り組みが日本中で出来れば、明治のように対応を変えさせることが可能だろう。文科省の「キログラムあたり40ベクレル基準」などという恐ろしく高い基準を、自らの手で変えさせることも出来る。
NO NUKES PLAZA たんぽぽ舎サイト
◆ 地震と原発事故情報 その262 ◆

30.8 Bq/kgは問題ないのか? 
国土の20%以上が汚染されたベラルーシの規制上限値直近
 このような国が設定した200Bq/kgが、すべてを合理化し、「それ以下の数値でも」 回収するのは、「乳業によるありがたい誠意」であるかのように解釈させる構図も作られている。
 しかし、今回の事態は、日本乳業協会などが、おざなりの姿勢で、安全であるかのように表現してきたことが、事実ではなかったことが「ばれた」ことを示している。加えて、外部空気を取り入れて食品に吹き付けるといったような工程をふくめ、ずさんな工程管理が明るみになっただけではないのか。その後の対応をみても、この工程が原因であったかどうかの詳報も見られない。仮にこのような工程を前提としても、ではなぜ、組織のなかで前述のような常識的危機感が発揮されなかったのかの解明なくして、今後の信頼回復はありえないのではないか。18Bq/kgであろうが31Bq/kgであろうが、乳児にそのような摂取が無いほうがよいのは当たり前だ。消費者は製造者の怠慢によって、余計な有害物の摂取を余儀なくされている。ベラルーシやウクライナでの最近の乳幼児食品の規制値は日本の数分の一から十分の一程度である。国土の20%以上をチェルノブイリ事故の放射性物質降下物で汚染されているベラルーシ共和国の独裁政権-親共産主義-でさえ、現在、乳幼児用食品の制限値は、37Bq/kgである。
 (※このベラルーシの規制値上限に今回の検出数値をあてはめて、「今回はそれ以下です」などと書く、志の見えないのんきな媒体もある。ちなみにベラルーシのルカシェンコ大統領 は、今時珍しい “ソ連の復活を夢見る”「共産党」を母体にする欧州の数少ない独裁者で、チェルノブイリ事故の影響に警鐘を鳴らす良心的医師---例えば下記のユーリ・バンダジェフスキー (pdf) など---を謀略の罠にはめて国外追放し、原発推進を主張している人物である。乳幼児用食品の制限値 37Bq/kgは、そのような国で設定されている規制値である) 

「暫定規制値200Bq/kg以下だから本来回収する必要もない」などとする廉恥心の欠如。
 チェルノブイリ事故の高汚染地域が「仕方なく設定している」ところの限界に近い値が検出されたにも関わらず、そんなことなど露知らずの涼しい顔をして「一応だいじをとっているだけ」と言える感覚…。さらに、あろうことか「わが国は200Bq/kg以下だから、本来粉ミルクは回収する必要さえもないのだ」とコメントしてはばからない一部の「学者」たち…。赤ん坊が高線量を浴びて急性症状でも発症しない限り、このような放言はわが国で収まらないのかもしれない。たがしかし、このような手合いは、たとえ急性症状が発生しても、意志表示ができない赤ちゃんのハンディを逆手にとって、またぞろ別の原因を持ち出すことにためらいを持たない。(森永事件時に第三者委員会として華々しく登場した「5人委員会」が発明した原病説をご参照)。仮に、親が放射線についての知識が乏しく、正確な育児中の飲用記録もなく、国家が赤ちゃんに人権を認めて(驚くなかれ赤ん坊は、保険数理の世界では、軽く考えられている)まじめに検査をしなければ、赤ちゃんの被害は、闇に葬られやすいのである。
 「本来回収の必要もない」とは、粉ミルクが赤ちゃんの主要な栄養源であることなどまったく無視した、驚くべき思考方法である。森永事件当時の御用学者のエゴイズムにまみれた残酷さに通じるものがある。

「ごまかし得」が横行しかねない「食の安全」
科学的真実をごまかす行為は、形を変えて次の災難に直結する。

 「直ちに障害が出なければいいのだ」という思考方法で食の安全を語れば、体内で他の食品と共に消化され、しかも物証はゴミ箱行きとなるような「証拠が残りにくい」食品の安全性は、「隠し得」が横行しかねず、きわめて心もとないことになる。徐々に体内に蓄積される毒物の運び屋を素人が突き止めるのはきわめて困難である。その昔、砒素さえも「相続の毒」と言われ、因果関係の立証には長い歴史的期間を要したため、跡目争いにおける毒殺手段として横行した歴史があった。放射性物質は、少量ずつ浴びると、因果関係の立証が極めて困難な毒物である。そのようなものを、「ここまでならいい」という規制値で、しかもそれを高めに設定して、唯一の栄養源を通じて無理やり赤ちゃんに摂取させてしまっても平然としているこの国の体質はいったい何なのだろう。放射線には「これ以下ならまったく影響がない」という「しきい値」がそもそも存在せず、100msv以下は安全なのではなく、科学的に確認されていない未知の段階でしかないことを逆手に取って、流通と販売を優先させることしか思いつかない「技術立国」の「専門家」とはいったいなんぞや、である。放射線の危険性に警鐘を鳴らす地震学者、原子炉技術者、医学者や作家、ジャーナリスト、市民を無視し排除してきた結果が生み出したことが、原発事故で9ヶ月前に叫ばれた「想定外」という事態と言葉の本質であるにも関わらず、人体への影響に関して、またぞろ同じ「想定する人々を無視することによって除外する行為(=「想定外」という表現の裏にある社会学的真意)」を開始している。低量放射線は積算されても「津波や地震での破壊」のような劇的変化を私たちに見せ付けることはない。じわじわと体を蝕んでいくだけである。さらには、肉体だけではなく、「ごまかし得」という精神性の劣化・腐敗の方がより深刻な影響を人類の未来にもたらすだろう。
原発付近に住む子ども、白血病の発病率が2倍=仏調査
ロイターWeb日本版 2012.1.12 11:44 JST
 [パリ 11日 ロイター] 原子力発電所の近くに住むフランスの子どもたちは、白血病の発病率が通常の2倍であることが、同国の専門家の調査結果で明らかとなった。近くがん専門誌「International Journal of Cancer」に掲載される。
 フランスの国立保健医学研究所(INSERM)が、2002―07年に国内の原発19カ所の5キロ圏内に住む15歳未満の子どもを調査したところ、14人が白血病と診断された。これは他の地域と比べて2倍の発病率だった。
 共同で調査を行ったフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のドミニク・ローリエ氏は、この結果を統計的に重要だとした上で、さらに慎重な分析が必要だと指摘。また同氏は、多国間で大規模な共同調査を行えば、より確かな結果が得られるだろうと述べた。
 フランスはエネルギーの原発依存度が最も高く、58基の原子力発電所を有しており、電力の75%を原発でまかなっている。
 一方、昨年発表された英国の35年に及ぶ調査では、原発の近くに住む子どもにおける白血病の発病率は高いとの証拠は得られていない。


2008年にはドイツ環境省も同様の声明

 人間の現世の権益意識が簡単に科学的真実や良識、警戒感を否定するという、もっとも悪しき状態を1年のうちに何度も見せ付けられている。そのツケは後から、思いもかけない人々が払うことになり、さらに悪いことに、その悪循環は連鎖することとなる。
 今回の検出結果は決して安心できる数値ではない。さらに重大なのは、そのプロセスに存在する隠蔽体質、しかも、単純な隠蔽ではなく、「おざなりな結果を発表しつつ、一見情報公開をしているように装う」カムフラージュ的手法である。それは放射能汚染に限らず、今後の食の安全全般にとって、危機的な体質であることを私たちに教えている。
すでに海外の良心的知識人は、嘲笑の対象とするにはあまりに深刻な領域に達しているため、世界に悪しき前提をつくることになる日本の動向を、自身のことと捉えて、見解を提出し始めている。社会システムが遅れていたソビエトのチェルノブイリ原発事故対応などと比して、決して優れているとはいえない対応を「技術立国」を旗印にしている日本が行っているとなれば、それが今後の世界の思考に与える影響は大きい。過去の教訓から学ばない国、痛みを与えたことへの心からの深い哀悼心を国民意識としてもてない国は、いつまでたっても古典的なエコノミックアニマル止まりであり、諸国民の心の中では真の先進国とは認識されないだろう。
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■ベラルーシ共和国
ゴメリ医科大学初代学長・ユーリ・バンダジェフスキー論文

『チェルノブイリ事故による放射性物質で汚染されたベラルーシの諸地域における非ガン性疾患』 PDF:1.51MB

彼は、「小児の臓器と臓器系統では、50Bq/kg以上の取りこみによって著しい病理学的変化が起きる。10Bq/kg程度の蓄積でも、特に心筋における代謝異常が起きる」と報告している。

■ウクライナ
ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所
ドミトロ・M・グロジンスキー論文
「ウクライナにおける事故影響の概要」 (京大原子炉実験所 NSRG所収)

世界の良識はどう見ているのか?

「真実を知らない者は愚か者でしかない。
だが、真実を知っているにもかかわらず、それを嘘という奴、
そういう奴は犯罪者だ」

(フードウォッチ・レポートより)




 
ドイツの消費者団体フードウォッチ(food watch)とIPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部は、すでに本年9月、以下の論文を発表し、一般食品における制限値及び乳幼児むけの制限値を具体的に提言している。フードウオッチ レポート二者の共同発表レポートによれば、「より安全な制限値というものはない」とした上で、日本からの乳幼児食品と乳製品の輸入品のセシウム制限値を 8 Bq/kgに引き下げるように要求している。このレポートでは、「現在の制限値は経済上の関心によって定められる」とする項で、以下のように指摘している。その一部を紹介する。

「…EUと日本の放射線防護制限値が高すぎるのは、制限値の決定に影響力を持つ欧州原子力共同体(Euratom)と国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力産業と放射線医学界に支配されているからだ。世界保健機関(WHO)は50年以上も前に、国際原子力機関(IAEA)との間で結ばれた協定によって放射線による健康障害を定義する権利をIAEAに引き渡してしまった。IAEAの目的は、原子力エネルギーの普及と促進である。その結果として、チェルノブイリ事故による健康障害の評価はWHOではなく、IAEAによって行われた。フクシマの場合もWHOは、健康に対するリスク評価とリスク回避に当り、指導的な役割を果たさない。…」

 日本の暫定規制値の無謀さはあきらかであろう。このような怠惰な状態が、被曝防止への「できる」努力さえサボらせている。考えれば回避できる対策を、考えずに、だらだらと決断を先延ばしにして「できる」対策を怠る環境を醸成することにつながっている。(IPPNWは1985年にノーベル平和賞を受賞した医師の団体、世界83カ国、約20万人の医師が参加 解説) 以下のリンクは市民放射能測定所  NPO法人 市民科学研究室 などによる。

food watch & IPPNW 
 1. プレスリリース (食品の放射能制限値は十分に健康を保護しない…)
 2. 汚染食品のリスクレポート (あらかじめ計算された放射線による死…) 
     ドイツ発信日本語翻訳版  ドイツ語版
 3. 日本の食品放射能汚染制限値 (経済上の関心に影響されている…低減要求)
 

■米国科学アカデミー研究審議会報告
  「電離放射線の生物学的影響Z」(BEIR Z報告)
↓原文掲載サイト【国立アカデミー出版】
HEALTH RISKS FROM EXPOSURE TO LOW LEVELS OF IONIZING RADIATION
BEIR VII PHASE 2

→ 
【 BEIR Z 報告 一般向けの概要 日本語訳 】 NPO法人市民科学研究室

→ 【 BEIR Z 報告書 行政・専門家向けの概要 日本語訳 】

米国科学アカデミー研究審議会  公式ウエブサイト
「電離放射線の影響に関する委員会:Committee on the Biological Effects of Ionizing Radiation (BEIR)」    
→ 【 BEIR Z 英語要約版 】 PDF:162KB (BEIR VII : HEALTH RISKS FROM EXPOSURE TO LOW LEVELS OF IONIZING RADIATION)-低レベル電離放射線の健康リスク-
以上当資料館サイト【原発震災コーナー】 より転載


■ベルリン放射線通信 by フランツ奈緒子/Naoco Franz
 『 Strahlentelex (放射線テレックス) 』 の 日本語訳 


■米国「社会的責任を負う医師団」 1985年ノーベル平和賞受賞 公式サイト
PSR Statement on the Increase of Allowable Dose of Ionizing Radiation to Children in Fukushima Prefecture (PSR ステートメント 2011.4.29)
 この声明は、静かな憤りをこめて発表されている。
 「…“放射能の安全な濃度” などというものが存在しないことは、米国科学アカデミーの『BEIR Z 報告』で、既にコンセンサスとなっていることである。自然放射線も含めたどんな放射線への暴露でも、発癌リスクを生み出す。さらに放射能を浴びるすべての人々が等しく影響を受けるわけではない。子ども達への放射線の影響は、大人のそれより大きく、子ども達は脆弱である。胎児はさらに脆弱である。…」
 子どもたちを特別に守ることの重要性を、「知らぬふり」 「見て見ぬふり」 をしている者たちに抗議の意味をこめて強く声明している。


他の大手乳業メーカーのアナウンス

 ある乳業メーカーは明治の問題をうけて、ホームページで、震災後に製造したほとんどすべての商品群をばくっと表にまとめて、一言「検出されておりません」と添えている。一見、情報公開をしているように見えるが、このレベルでの一方通行アナウンスでは、消費者は「納得」を強要されているように感じる方も多いと思う。そう感じるのには訳がある。そこには明治で問題になっている「検査日」が記載されていないのである。検査日と検査体制が根本的に問題となったあとにも、検査日不明のデータが出ている。検査検体の抽出方法やその方針など、これだけ問題が明るみになっても、検査システムの詳細な説明も見られない。
 この業界はいったいどうなっているのだろうか? 
 また、別のメーカーではホームページで、製品ごとの噴霧乾燥日(おおよそ製造日に該当するデータか?)と検査日が公開されている。この点は評価できるが、不思議なことに、噴霧乾燥日が3月20日以降のものばかりで、原発事故直後から19日までのデータが見当たらない。もっとも気になる時期だ。検査日の部分には、「震災後の初回生産」という一言があるが、震災後から19日まで乾燥工程は全面停止していたのか、稼動していたのか、稼動していたのなら何か別の商品を製造していたのかどうか、といった細かな説明があってもよいのではないか? 消費者には最小限の情報しか公開されていないような印象をうけるのは、考えすぎだろうか?
以上、2011.12.12現在までの調査による

ある乳業メーカーの顧客窓口の対応
 これが、消費者にしっかり説明責任を果たそうという態度だろうか? 原発事故以降、とくに3月20日頃までの間に製造された製品の詳細について消費者が知りたい情報を、社会的に明示しようとする姿勢とは思えない。
 ある乳業メーカーの顧客対応窓口に、今回の問題について自社製品の安全性への説明をもとめた。そこでは、「当社はロット単位ですべて検査していますから安全です」といった、なんとも漠然かつ抽象的な内容が繰り返され、“取りつくしまがない”という感じだ。そもそも粉ミルク缶の多くには、製造年月日が缶底に刻印されていないから、もっとも危険な時期3月下旬頃までに何の製品が製造されたかどうか、消費者は目隠しされたも同然である。
 
たとえば、賞味期限の十数ヶ月前が製造時期です、という説明を製造側がアナウンスしたとしても、それは、消費者に「自分で全製品をカレンダーで逆算して計算しろ」と指図しているだけとなる。しかも、ラインでは、ある品種に限って製造していたりする。そのような内容は、顧客対応窓口と相当にやりあわないと出てこない。

 今回の事態を受けても、
1.原発事故直後の放射能大量拡散期に製造された製品の
  品種名、該当ロット記号番号、検査方針、検査体制、検査日、検査機器の詳細、
  社内検査か外注検査か、社内外区分の変更時期、検体抽出方法詳細、結果。

これらは品質管理規定で明文化されているのが通例であり、社外秘にしなければならないようなシロモノでもない。なお一番大切なのは検査体制の「内容とレベル」であり、その遵守状況だ。低レベルの検査であれば、いくら明文化し、仮にそれを守ってiいるといっても、それは消費者への効用が少ないだけである。





2.外界と接触する工程の詳細と汚染防止対策。管理チェック体制と
  その監査方法・結果。
  汚染発覚時期前後の対策の本質的な差異。

 この 1. と 2. の両方とも、よくわからない。一方、圧倒的多数のちゃんとした企業は既述のような努力を、目立たず、まじめにコツコツとやっているだろう。加えて、仮に表向きのシステムはいくらそろっていても、それを実行しているかどうかは、監査システムの特徴や、外部への説明責任のやり方、企業活動全般の傾向、組織の外部への全般的な対応のレベルなどをみていれば、素人でもおおよそ想像できるというものである。だから消費者の直感は大切にしたほうが良い。

 どうも、消費者は、赤ちゃん用に関しては、ただ、製造元の「結果オーライ」的なアナウンスを信じるしかない状態のようだ。
本当に顧客に優しい説明は、「お客様のご心配されている○〜○の時期に製造された商品は、○○という商品群の、○○という種類で、○○のロット記号番号のものでございます。それに関しては○○の時期に○○といったやり方で検査を実施し、○○の結果が出ております。ご心配されておられます製造工程の○○の部分は、○○のようになっておりまして、○○の時期から、セシウムなどと取り込まないように、○○のような処置を行っております」と的確に答える姿勢ではないか? それが堂々と出てこないのは、なぜだろうか? 

 (
以上、2011.12.12現在までの調査による


そもそも離乳期用ミルクは必要か?
 ところで、今回問題となった、「ステップ」は、離乳期用のミルクというものである。日本の赤ん坊の離乳期は日本小児科学会によって、先進国の中では、もっとも遅くなるよう指導されているという。
 直接の理由としては「アレルギーがおこる」とか「消化能力が未熟だ」とかいろいろ挙げられているらしいが、その科学的根拠にはほとんど見るべきものはないと指摘する医師がいる。つまり、人工乳を、だらだらと形を変えて、長期間摂取させなくてはならないかのような環境が作られているというのである。
 スイスでは、この類のミルクは「発展途上国には必要だが先進国には必要ない」といわれている。
 もちろん、国にも個人にも差もあるので、このような商品の存在と選択肢を一概に否定しないが、世界的な流れに逆行しているものを積極的に推進していることになる。賢明な消費者は、このような離乳期用ミルクからは早く脱出する努力をしたほうが良いと強調する医師がいる。離乳食は医師の正しい助言にしたがって実践すれば、満6ヶ月から9ヶ月くらいまでに終了するのが世界的には普通である。だが、そういう指導をする医師は極少数派に位置づけられているのが日本の現実のようだ。

 ずさんな品質管理を前提に、小児科学会と厚労省の示す方針にそって、大量に飲まされる人工乳。消費者は森永ヒ素ミルク中毒事件の凄惨な歴史的教訓を片時も忘れることができない。
※ちなみに、一般に哺乳類は、乳児期に母乳を分解する「乳糖分解酵素」が生成されている。そして、乳児期から幼児期へ移行すると、この酵素を作る遺伝子の働きがなくなることが知られている。
一方、子供時代から大人になっても牛乳を飲めない人がいる。そのような人を、なにか病気であるかのようにいう人もいる。だが、世界人口を調べると、牛乳が飲めない人々の割合は農耕民族では高く、牧畜民族では低い。カルシウムは、小魚を食べれば十分補給できる。カルシウムは牛乳にも含まれているが、一方で、小魚より牛乳の方がカルシウムの吸収率が良いというのは、根拠がない。「牛乳嫌い」の人がいるのは自然なことなのである。
その人々は、自分を病気だと思わず、別の食品を選択すればよい。
はやめに離乳をおえれば離乳期のミルクは必要ない。











消費者は証拠物の確保、或いは購買記録ノートで自衛を

 今回のセシウムミルク問題で、一部の食品業界が、アバウトな検査体森永ヒ素ミルク中毒事件資料館 検体ラベル制を組織的に隠蔽するかのような疑いが生まれるなかで、証拠物件を押さえていく必要も生まれそうだ。ただ、個人レベルではそれは難しいかも知れないので、購買・飲用記録ノートをお勧めする。
 その場合は、製品名、容量、缶底記載の賞味期限やロットデータ、購入年月日や購入店のデータだけでも、家計簿をつけるがごとく、ノートなどにデータとして記録することをお勧めする。(本ページトップ掲載)大切な子どもや家族、自分の体を守るためには、この程度の記録作業はやっておきたい。それがまた、市民の警戒感・危機管理意識を成長させることにもつながる。
 なお、検査用にストックする場合、右のような帳票(検体ラベル)を貼りつけて整理している人・組織もある。小型のタックシールなどに様式を印刷して、貼っていく方法もある。もし身近に、事故直後の製造と思われる商品が見つかれば、検体として、各地で開設が相次いでいる「市民放射能測定所」などへ持ち込むことをお勧めする。市民が検査しないと本当のところがわからない状態であるからだ。食品汚染は内部被曝であり、排泄を含んでみても、「薄まる」などという説明を単純に真に受けていてはいけない。数十ベクレルは要注意であり、赤ん坊をとりまく総合的環境を考えながら、可能であれば回避する必要がある。

消費者は協力して検体を確保し、「放射能測定所」等で検査を
 そのためには、消費者が、粉ミルク製造各社から、まず、心配な時期に製造された製品品種(商品名と容器・容量)やロット記号データを聞き出し
(※)、可能であれば、すでに購入済みの手持ち商品、或いは店頭での該当商品を検体サンプルとして「市民放射能測定所」などへ持ち込み検査する方法がある。必要量は一検体あたり1kgと言われているが、詳細は、「市民放射能測定所」などへ問い合わせを。(当資料館リンクページにも掲載)汚染地域で住み続けることを余儀なくされている市民は、それをやっている。だが、数が追いつかない。全国シェアをもつ商品を消費せざるを得ない市民も同じ立場におかれているといえる。市民は、自らの安全確保と他の消費者の安全のためにも、気がついた人々から行動に出る必要があるだろう。
  (※ これを消費者へ積極的に公表しなければ、説明責任を果たしていないという意味で公的セクター窓口への通報に値する)
危機感は、またたくまに現実に…。
事件の実相コーナー 2011年10月頃
 「…【森永ヒ素ミルク中毒事件 重要文献紹介】…加害企業と国、御用学者などが一体となり、20年にわたっておこなった、恐るべき被害者家族圧殺の歴史…。カネと権力を乱用し、心理戦術を駆使した巧みな世論操作ですべてのものを呑み込み、事件の真相を闇に葬った。曰く、“ゼロ歳児が致死量に迫る砒素を摂取したとしても、後遺症など発症することはあり得ない” “責められた森永乳業こそが被害者だ”…などと。医学界の権威たちまでが、そうお墨付きを与え、後遺症の判定を不可能にする非科学的「診断基準」まで作成して、被害児の親たちを病院から追い返した。
 ところが、現在、福島現地で小児被曝を防止するため格闘する医師たちは、少数者を封じ込める構図はより深刻化していると警告。その根源はすでに森永事件に見られる、と公に指摘する。森永事件の愚が新しい形で繰り返されようとしている、とも…(後略)…」 

 そして数ヶ月後に、それは形を変えて繰り返された…。いや原発事故直後からすでに問題は発生し、9ヶ月間、それは潜行していた。その告発は、大学からでもなく、役所からでもなく、検査機関からでもなく、市民からである。制度疲労は著しい。
 過去の凄惨な事実を見据えず、その教訓をいとも簡単に忘れるものは、必要以上の金への執着と傲慢さから、人間性を見失い、同胞を傷つけ、先人が命がけで築きあげてきた透明性・情報公開という民主主義の前提(言論・表現の自由の前提をなす)をなす精神文化までをも、ないがしろにしている。


























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【Link 情報】
以下、黒部信一医師(東京)のブログより転載


http://kurobe-shin.no-blog.jp/bk/
2011/12/12
明治粉ミルク、ステップの放射能検出

明治粉ミルク、ステップから放射能の検出が報道されました。3月11日以降製造されたもののようです。全く消費者、それも乳児のことを考えていない商品です。それを検査せずに出荷するなどと言うことは、森永ヒ素ミルク中毒事件と同じ構造です。

明治乳業の製品は、同じ構造で作られ、出荷されていますから、ボイコットとまではいきませんが、すべて疑惑の目で見て行きましょう、製作日が問題ですし、また商品に放射能検査データを明示しているかが問題です。現代では、いつでも、どこでも、同じ原乳を運ぶことができますから、工場名では信用できません。時代と技術の進歩は恐ろしさを拡大しています。

私が、いわきの友人の木村眼科を訪問し、市民放射能検査所と津波の被災地を案内してもらった時に、聞いた話では、小名浜港では近海の魚が汚染されていて獲れないので、困っているが、魚は豊富でいつでも誰でも獲れるので、密漁して関西方面に持って行って市場出していることが判っているが、取り締まられていないとのことでした。

粉ミルクの原料の牛乳も同じことですから、製造工場はあてになりません。これは、過去に、ベラルーシで行われたことと同じです。測定データ付きの粉ミルクでないと安心できません、

でも私は、早期離乳推進論者ですから、生後2ケ月(体重5kg)から離乳準備食(果汁)を始め、生後3ヶ月(体重7kg)から離乳を始めることを勧めています。ポイントは、赤ちゃんが喜ぶことで、喜べばどんどん進め、喜ばなければゆっくり進めるのが基本です。

そうすると早いと6カ月、遅くても9ケ月で離乳が終わり、ステップミルクなどの離乳期のミルクは必要がなくなります。これは欧米方式で、世界の先進国で唯一離乳期を販売しているのは日本です。発展途上国では、離乳食が手に入らなくて、必要性は残りますが、先進国では必要のないミルクです。離乳食の方が遙かに、少量で濃厚に多種類の栄養分を補給できるからです。これはアメリカの20年前の離乳方式で、日本は20年以上遅れていますし、日本式と称して日本の戦争直後(66年前)の離乳方式に固執しています。なぜなのでしょうか。どうしても、業界と行政と学会の産官学の癒着を疑いたくなります。いつまでもミルクを飲んでいてくれた方がよいですし、少子化と母乳推進でミルクの需要が減っていますから。

ということで明治のステップミルクをはじめ、離乳期のミルクを止めて離乳食をどんどん食べさせましょう。しかし、離乳開始の遅い子は食べてくれません。そこに問題があるのです。離乳の早い子は堅い物も食べますが、遅い子は食べてくれません。この続きは、別にします。

12月17日の講演は川崎市、市労連会館で15時からで、その前の14時から「チェルノブイリハート」という映画を上映します。これも見た方が良いです。参加は自由です。年内の講演予定は、あとパルシステム埼玉(川口市)ですから、組合員しか入れません。
早期離乳のメリットと遅い離乳のデメリットは別の機会に話します。

文春新書刊 小出裕章 黒部信一 共著 「原発・放射能 子どもが危ない」【新刊紹介】
文春新書 刊
小出裕章 黒部信一 共著
「原発・放射能 子どもが危ない」

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高木仁三郎・渡辺美紀子 共著
「食卓にあがった放射能」
七つ森書館
新装版 2011.4.26初版




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福島第一原発事故と食の安全を考えるために…
原発震災コーナー】リンク情報に加筆
石橋克彦氏ブログ
原子力資料情報室(CNIC)
JCO臨界事故総合評価会議報告書
京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ
「NPO法人 市民科学研究室」
■「市民科学研究室」訳出論文多数
  同室レポート「低線量放射線被曝のリスクを見直す」
 
U.S.NRC
U.S.EPA


未来の福島こども基金
市民放射能測定所
子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
チェルノブイリ子ども基金

黒部信一医師のブログ
市民エネルギー研究所
たんぽぽ舎

太陽光・風力発電トラスト

food watch & IPPNW 
1. プレスリリース (食品の放射能制限値は十分に健康を保護しない…)
2. 汚染食品のリスクレポート (あらかじめ計算された放射線による死…)  ドイツ発信日本語翻訳版  ドイツ語版
3. 日本の食品放射能汚染制限値 (経済上の関心に影響されている…低減要求)
 
■米国科学アカデミー研究審議会報告
「電離放射線の生物学的影響Z」(BEIR Z報告)
↓原文掲載サイト【国立アカデミー出版】
HEALTH RISKS FROM EXPOSURE TO LOW LEVELS OF IONIZING RADIATION
BEIR VII PHASE 2

→ 
【 BEIR Z 報告 一般向けの概要 日本語訳 】 NPO法人市民科学研究室

→ 【 BEIR Z 報告書 行政・専門家向けの概要 日本語訳 】

米国科学アカデミー研究審議会  公式ウエブサイト
「電離放射線の影響に関する委員会:Committee on the Biological Effects of Ionizing Radiation (BEIR)」
→ 【 BEIR Z 英語要約版 】 PDF:162KB (BEIR VII : HEALTH RISKS FROM EXPOSURE TO LOW LEVELS OF IONIZING RADIATION)-低レベル電離放射線の健康リスク-
■ベルリン放射線通信 by フランツ奈緒子/Naoco Franz
 『 Strahlentelex (放射線テレックス) 』 の 日本語訳 

■米国「社会的責任を負う医師団」 1985年ノーベル平和賞受賞
 公式サイト
PSR Statement on the Increase of Allowable Dose of Ionizing Radiation to Children in Fukushima Prefecture (PSR ステートメント 2011.4.29)

文科省 環境放射能水準調査結果 [Fallput] -2011.3-
[Fallout] 文科省放射線モニタリング最新
[Fallout] 文科省放射線モニタリング過去データ

Songs
YOU TUBE  岡山県での原発反対デモ

■Books
科学者でありかつ文学者であった、元ソ連最高会議議員によるチェルノブイリ事故・迫真のドキュメント

ユーリー・シチェルバク(著),松岡 信夫(翻訳)
CNIC取扱書籍一覧


【以下
 寄稿&リンク】

以下の情報が森永ヒ素ミルク中毒事件の被害者から寄せられた。
さまざまな見解が含まれているが、このような開かれた自由な言論を紹介することは国民にとって有益と考え、情報提供者の好意に感謝しつつ転載する。(私的な表現は若干割愛させていただいた)

森永事件の悲劇を教訓にしているか?

「明治の粉ミルクからセシウム検出」のニュースについて、
日本の政府・企業の無責任体質の底なしは、またもやあきれています。
身体を休めていられないと、腹の底から怒ってパソコンに向かっています。
小出裕章 さんのたね蒔きジャーナル のお話(ユーチューブ「音声))など2つをご紹介いたします。
私たち国民は政府の、国民をあざむく数値に慣らされてしまっては、おそろしいです。
************************
たね蒔きジャーナル
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章






























▼「明治の粉ミルクからセシウム検出」のニュースは、英、米、豪、韓、中、カナダ、スウェーデン、ニュージーランド…世界中を駆け巡っている。国の暫定基準など論外であり、世界の目は厳しい。国も企業も、騙せるのは正確な情報を得られない平和ボケの日本国民だけだということを胆に命ずるべきだ。


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2011年12月07日
http://alcyone.seesaa.net/article/239077746.html
▼〔セシウム粉ミルク〕「狂信的楽観論」に基づく報道
☆専門家 “製造管理厳しく”
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111206/k10014449881000.html
http://backupurl.com/zrz433
▼放射能の何が分かる? 放射能の専門家ですらよく分かってないのに。
https://twitter.com/#!/resetresetreset/status/144098088842301440
▼薄まるから問題ないと言ってたけど、粉ミルク大さじ1杯で牛乳70〜80ccだよ。お母さん達は騙されないよ。赤ちゃんは通常3時間に1回ミルク(または母乳)を飲むんだから、1リットルなんてすぐだよ。それを分かっててウソついてる専門家たち!
https://twitter.com/#!/kuminchuu/status/144090569872916481

▼農薬とかが専門なんでしょうね、放送でのコメントがどれだけ無垢のママや年寄りを誘導してしまうか判ってない!いい大人が恥を知れと言いたい。社会的な責任もセンスもない!安全談の根拠が知りたい!

https://twitter.com/#!/viva_317/status/144101001752887296
▼粉ミルクから1キログラム当たり最大で30.8ベクレルの放射性セシウムが検出されたことについて、食品の安全に詳しい国立医薬品食品衛生研究所の松田りえ子食品部長は「今回検出された値は国の暫定基準値を下回っているうえ、粉ミルクは7倍くらいに薄めて飲むので、赤ちゃんの健康への影響を心配する必要はないと思う、などと言っている。 
松田えり子さん、しらべてみたら、経産省の委員会に呼ばれて食品安全しゃべったりしてる。   
https://twitter.com/#!/viva_317/status/144096153422663680
▼経産省にも呼ばれて委員会で講演してるし (注:PDF)
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g51220b04j.pdf

【追加寄稿】
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明治粉ミルクに関する私のブログを転載します。皆さんのご批判を仰ぎます。
http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/2531722/
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無責任な粉ミルクメーカーと日本乳業協会
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明治の粉ミルクから放射性セシウムが検出され、業界は大騒ぎだ。
放射性汚染の発覚を受けて、この日の明治HDの株価は、前日比9.7%安の3020円で取引を終了。
粉ミルク同業の森永乳業が3.5%安の275円、雪印メグミルクが3.6%安の1410円と、相次いで下落した。

相次いで下落したのは風評被害でもなんでもない。業界全体が怠慢だったからだ。

日本乳業協会はこんなことを言っている。
=================================
Q1.
牛乳・乳製品の原料となる生乳や牛乳・乳製品は安全なものですか?
A1.
生乳は、自治体が放射性物質の検査を行っており、暫定規制値を超えた地域の生乳は出荷できないことになっています。したがって流通している生乳の安全性は確保されていると考えます。安全が確保された生乳のみが乳業会社に送られ、牛乳・乳製品が製造されることから、市販される製品も安全です。
http://www.nyukyou.jp/topics/20110615.html
=================================
何のことはない、
乳製品の放射能は調べるつもりすらない、と居直っていたのだ。
日本乳業協会は、業界7社のわずか7製品の7月に製造されたものだけを使って、申し訳程度の検査をしたようだ。
http://www.nyukyou.jp/topics/20110826.html

この検査からは、明治の「ステップ」は外されている。
要するに、粉ミルクは殆どなんの監視もなく、殆どチェックもなく、野放しにされていたのだ。

明治の「ステップ」は、原発事故からこのかた、9カ月後の12月3日なって初めて検査されたのだ。おそらく消費者からの通報を受けたからなのだろう。
http://www.meiji.co.jp/notice/2011/detail/20111206_fig2.html

粉ミルクはあたかも治外法権であるかのように、無検査で流通していた
・・・・私たちは、残念ながらこの驚くべき事実をシッカリと噛みしめなければならない。
=================================
追記:
株式会社明治は、某新聞社には毎月検査をしていた、と答えたようですが、それなばらば、検査結果の全てを公表すべきです。
また、なぜ今回の分が漏れていたのかも明確にする必要があるでしょう。

そして、そんなミルクを飲ませてしまった、子どもたち孫たちの顔を思い浮かべなければならない。粉ミルクを飲まされた赤ん坊は、明治に限らず、全て「後の祭り」なのである。

粉ミルクメーカー及び、日本乳業協会は、その代償として何を購うというのだろうか? 失われた信頼を取り戻すことはできるのか? どのような努力をすれば信頼を回復することができるのか?

私は、「森永ヒ素ミルク事件」を振りかえることにしよう。

加害者である森永が、原因物質を認めたのはなんと15年後の1970 年である。それを飲んで死んだ赤ん坊は不運だとはいうものの、それを製造販売した法的責任は、55年たった現在でも、未だに認めていない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E3%83%92%E7%B4%A0%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6

日本乳業協会はその延長線上の組織だ。

日経新聞の記事を添えておこう。
===================================
明治の粉ミルクからセシウム 規制値は下回る
40万缶無償交換へ
2011/12/6 14:41
 食品大手の明治は6日、生後9カ月以降の乳児向け粉ミルク「明治ステップ」(850グラム入り缶)から、最大1キログラム当たり30.8ベクレルの放射性セシウムが検出されたと明らかにした。4月以降、全国のドラッグストアなどで販売しており、同一期間に生産した約40万缶を同日から無償交換する。賞味期限が「2012年10月」と記されている製品が該当する。
 乳製品の国の暫定規制値(1キログラム当たり200ベクレル)は下回っていた。

 同社によると、無償交換する40万缶は、埼玉県春日部市の工場で3月14〜20日に牛乳を乾燥させる工程を経た製品。原料の牛乳には、3月11日以前に加工された北海道産などを使用していた。同社は、大量の空気を当てる過程で、東京電力福島第1原子力発電所事故で放出された大気中の放射性セシウムが混ざったとみている。
 同製品は、生後9〜12カ月の乳児に飲ませる場合、200ミリリットルの湯に粉ミルク約30グラムを溶かして使う。40万缶のうち、既に消費者に販売された数は現在調査中としている。
 同社は東日本大震災以降、月1回のペースで同工場の粉ミルクに放射性物質が含まれていないかを調べており、今回の検査は今月3日に実施。これまでは同社製品から放射性物質が検出されたことはなかったという。
====================================
3月製造の製品を12月に初めて検査して、
「これまでは同社製品から放射性物質が検出されたことはなかった」とは、
まさにガキの言い逃れというべきだろう。日本人の質の低下である。
               (掲載にあたって内容に影響を与えない程度の書式変更をさせて頂いた)
【以上、寄稿情報】


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

子どもたちの未来を守るために

「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」座談会

福島の親たちが伝えたかったこと。福島で進行している理不尽な現実の一部を紹介する。

岩波書店 発行 月刊オピニオン誌 『世界』 2月号 68p-69p より抜粋。


…(前略)

「安全キャンペーン」に抗して

---皆さんは福島県「放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任した山下氏の解任を求めています。経過をお聞かせください。

中手 山下氏は現在は福島県立医大の副学長にまでなりました。当初、福島に来た時の肩書きは長崎大学教授だということでした。言うなれば一研究者で、アドバイザーという助言者でしかない人について、私たちは名指しで解任を知事に求めました。これは一見するとおかしな要求だと思われるかもしれません。

 三月二一日、福島テルサで講演会が行なわれました。実はその前に、私は作家の広瀬隆さんに山下という人がどういう人なのか問い合わせました。彼がチェルノブイリの調査を行ないながら被害を過小評価する報告を行なっていること、事故のたびに長崎や広島の名前を前面に出して被害を少なく見せる役割の人間が出てくること、今回の福島でも同じことを繰り返すだろうと教えていただきました。実際にその講演を聞いて、まったく広瀬さんの言う通りであることを確信しました。もう事故は終わった、空間線量が一〇〇マイクロシーベルトまでなら安全だとまで言うのです。この発言は今でも県のホームページで確認できます。空間線量が一〇〇なら、外部被曝だけで年間に八七〇ミリシーベルト以上もの被曝です。さすがにこの発言は後に修正していますが、それでも「一〇マイクロシーベルトまでは大丈夫」です。しかし、それだけならば、山下さんの個人名をあげて解任を迫るまではしなかったでしょう。どうしても許しがたいのは、私たちの大事な子ども達の被曝量を実際に増やしたことです。「年間で一〇〇ミリシーベルトまでは大丈夫だと私は信じているが、いろんな説があるので大事をとってもらっていい」というのであれば、まだよかったのです。しかし、子どもたちを外で遊ばせていい、今までと同じ暮らしでいい、水も牛乳も店に出まわっているものは全て口にしていいと明言することで、山下氏は実際に子どもの被曝量を増やしてしまったのです。このような人物が、今後長年にわたって福島の子ども達の健康を管理していくなど、とんでもありません。許しがたいことです。しかも彼は過去の研究において、一〇ミリシーベルト以上の被曝は二〇歳以下なら発がんのリスクがあると論文に書いているのです。いったい彼は、どこからどのような使命を帯びて福島に派遣されてきたのか。

吉野 これまでどおりの生活をしてもいい、と言ってほしい心境をみんなが持っています。不安で藁にもすがりたいときに、山下さんの言葉が発されました。そうすると、被爆地の長崎からきた偉い先生が「外で遊んでもいい」と言っているのに、「なぜうちの嫁は逆らうのか」と家庭内で喧嘩になるのです。インターネットの見過ぎだといって実際にパソコンを取り上げられたお母さんもいます。住民、友人、家族のあいだがぼろぼろになってしまっているのです。

陶山 福島の安全キャンペーンは異常です。「リビング福島」という女性向けフリーペーパーの一面で、「年間一〇〇ミリシーベルトは大丈夫」という記事が山下さんの顔写真付きで載っていました。無料で購読者も多い情報誌という媒体を選んで、女性に浸透させようとしたことに憤激しました。こうしたキャンペーンがあって、お母さん達のあいだに温度差が開いてきたのです。

中手 いったいどのような経緯で彼が福島に派遣されてきたのか、いまだに謎なのです。国が派遣したのか、県知事がつれてきたのか、何度も県に対して追及しているのですが、担当部局は最後には「自分で名乗り出てきた」とまで言うのです。それがもう県立医大の副学長になっているのですから、シナリオがあったのではないかと思います。解任を求める

署名の第一次提出はすでに行ないましたが、県は何も対応しようとしません。

(後略)…

---岩波「世界」はただいま書店で発売中---
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森永ヒ素ミルク中毒事件の概要は、以下の文献、及び当サイトの学術論文アーカイブからも、ご覧頂けます。


↓現在の問題点にまで踏み込んだ能瀬英太郎氏のレポート




↓能瀬レポート 英語版  (Nose Report)The Morinaga Milk Arsenic Poisoning Incident  50 Years On   by Eitaro NOSE



表向き「公正中立」を偽装して登場した「第三者委員会」が、被害者を無視して
勝手に作った不正な「診断基準」。その文中に使われた「原病」という表現に
ついての解説つき。↓
能瀬レポート日英対訳版 
まだ解決を見ない日本の戦後初の産業公害 
PDF:136KB 
(著作権Free: 英語教育の教材等ご自由にコピーしてお使い下さい。)

(日本における第三者委員会方式は森永事件以降、常用され、水俣病でも被害の隠蔽に活用されるようになる
という要注意なもの。)

↓救済システムでの問題発生を学術的視点からすでに予期している秀逸な論文。






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