sorry,Japanese only

平成18年9月30日

 

 第101号 

NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会

 101号 目次

 マラソン初挑戦
 自閉症の自立を果たす為の支援者養成セミナー 案内
 すすむっち Report from Lincoln,USA
    
〜いつの日か、日本で生活をする日のために〜
 支援者養成講座 報告
 キッズルーム・AAO・サッカークラブ・水泳教室 の お知らせ
 私のお薦め本コーナー
     『 自閉っ子、自立への道を探る 』
 近隣の講演会等のご案内
 掲示板・事務局だより 

稲穂が黄色く色づき、刈り入れの時を待つ頃となりました。
今月は、まず初めに我が家のビッグニュースの報告から始めさせてください。
哲平が蒜山マラソンに、シドニーオリンピック日本代表(7位入賞)山口衛里さんと一緒に出場することになりました。なんだかビックリ大ニュースなんですが、事の発端は、会社で哲平の支援を行っていただいている元気なIさんが、蒜山マラソンへ誘って下さったことから始まります。
「蒜山マラソンの10kmコースに参加するつもりですが、哲平くんも一緒にいかがですか?」
小学校の6年生の時から、将来就労に向けての体力作りということもあって始めたジョギングの習慣です。社会人になっても、雨が降らない限り毎日、事務局の周りのコースを8周、4.4kmを走り続けている哲平です。韓国映画の「マラソン」を観て感激したこともあって、出場することに決めました。
もちろん哲平にも聞きましたが、マラソン大会に出場するとはどういう事かをわかっていません。なにしろ体験したことのないことを“想像する”ことの難しいのも、自閉症の特性の一つですね。 「出場しますか?」と聞くと「出場します!」と力強く宣言する哲平くん。まあ〜、いいか、出てみりゃわかるか・・・というわけでエントリーを決めました。
ところが、哲平は走らせると結構速いので、Iさんとでは一緒に走っても先に行ってしまいそうです。スタート前の世話役にお父さんも一緒にエントリーしましたが、こちらは体力からして完走すら覚束ないのはミエミエです。何しろ毎日毎日トレーニングを7年間も続けている哲平です。周りには、ちょっとやそっとで彼のスピードについて行ける人はみつかりません。育てる会に登録してくれている若いボランティアさんでも、相当鍛えていなければ無理かもしれません。困ってしまいました。
そこで思い出したのが、スペシャルオリンピクスのボウリングでもお世話になっている、県の体育協会の役員をされている知り合いのNさん。
「陸上競技をされている学生さんか社会人の方で、伴走をしてくれそうな方を紹介していただけませんか?」と、厚かましくもお願いしてみました。すると、「わかった、わかった、探したげるよ」と心よくOKしてくださり、その結果が何と何と山口衛里さんだったのです。
本当に驚きました。けれど、これ以上ない最高の方に伴走していただけることになったわけで、またとないこんな好運・・・せっかくの好運ですので、ありがたくお願いすることにしました。
そんな哲平、山口さんと太陽の家で会って、一緒に走ってみてもらいました。山口さんは、スポーツウーマンらしいキリッとした目のとても美しい方で、お話ししていても話しやすく気取ったところのない素敵な方でした。息子の哲平を理解しようと一生懸命関わってくださって嬉しかったです。自閉症の子どもたちとの付き合いもあるそうですが「まだ、よくわからない」と言われていました。自閉症といっても色々なタイプがあるので無理ないだろうなと思いました。
柔軟体操の後、いよいよ走り始めました。「ヨーイ、スタート!」なんと哲平は、山口さんを置き去りにしてドーンとダッシュ。あっという間に視界から消え去ったそうです。
山口さんは10qを走るペースのスタート、哲平ははりきって一等賞を狙って・・・そんな訳で、波乱の練習の幕開けです。途中で哲平を止めて、2番を走ることを言い含めて、やっと山口さんの後ろを走れるようになりました。山口さんのお話では、今度の蒜山のコースはかなり厳しくて、折り返し点まではずっと登りが続くので、このスピードでは最後までもたないということでした。そこで、ペースは山口さんが作ってくださり、哲平はその後ろを走るということで納得させました。果たして覚えていてくれるでしょうか。先日の凱旋門賞のディープインパクトも、ついつい走りたくてペースオーバーになってしまったように思えましたが、哲平はどうでしょう。これからも、山口さんとの特訓が続きます。
さて、話は変わって赤磐ぐんぐんよりの報告です。
10月1日よりの「障害者自立支援法」の本格的施行を前に、岡山県内でも多くの児童デイサービスが閉鎖の道を選ばれました。
原因の一つには、新たに「サービス管理責任者」を置くことが義務付けられたのですが、その資格が「施設における相談支援業務に5年以上従事」とか、「養護学校における職業教育に10年以上」という厳しいものでした。小さな事業所では人材の確保が難しかったこともあると思います。
そして、もう一つの大きな問題点は、対象者のうち就学前児童の割合を7割以上とするのが原則であり、それを満たせない場合は単価を45%カットするという変更でした。大きな施設は別として、小規模な福祉施設では、現在もなかなか満足できる給料をお支払いすることができず、勤務される指導員の方の熱意と思いに頼って、子どもたちへの支援を行っているところがほとんどだろうと思います。この単価では、もうこれ以上は続けられない・・・そう判断して、止められたのでしょう。
私たち、育てる会が運営する「赤磐ぐんぐん」でも同じでした。正直、「もう無理か」と、思ったこともありました。でも、せっかく灯した自閉症児たちへの療育の灯です。将来の自立を目指して、それぞれの自閉症の特性に配慮した支援です。子どもたちも安定して、どんどん成長しているところです。なんとか、この灯は消したくないと、一生懸命道を探りました。
まずは、クラスを分けて、就学前のみなさんには午前中の療育へ変わっていただくようにお願いをして、午前中だけでも基準を満たす就学前7割以上のクラスを作ることができました。その分、午後からのクラスには無理をお願いすることになりました。なにしろ、その子なりの自立を目指す一貫した療育を目標とする赤磐ぐんぐんでは、逆に7割以上が学齢期の子どもたちだったからです。
結果として、収入は大幅に減ることになりますが、従来の完全マンツーマンの療育は無理でも、3人の子どもたちを2人の指導員で療育、あるいは4人の子どもを3人で・・・という風にして、なんとか子どもたちのために自閉症に配慮した療育を続けて行きたいと思っています。
幸い、サービス管理責任者にも、長年養護学校で指導にあたられてきた橋本美栄子先生が、新たにスタッフとして加わってくださり、無事クリアできることになりました。
厳しくなるのは覚悟の上ですが、この赤磐ぐんぐんという灯を消さないですんだことを喜びとして、これからもスタッフ一同尚一層がんばっていきますので、応援よろしくお願いします。
また、こんな赤磐ぐんぐんへボランティアに来たいと思っていただける方がありましたら、どうかよろしくお願いします。毎週決まった時間に来られる方でしたら、子ども達との交流も可能です。交通費ぐらいしかお支払いできませんが、どうか力をお貸しください。
(育てる会 代表:鳥羽 美千子)

支援者養成講座

9月23日(土)の第3回即実践講座では、「構造化された支援の実際」ということで、講座の中で学んだ構造化による支援を用いて、実際の教室での事例を取り上げてどのような工夫が考えられるかを参加者皆で考えあいました。
小学4年生のAさん(自閉症)が、普通クラスの中で授業に集中できずウロウロしてしまう場合。どのような構造化の工夫ができますか?という演習では、例えば窓の外が丸見えなら目隠しシート(くもりガラス風)をするとか、席を教卓の前にしてAさんが黒板や先生の指示を受け易い場所にするとか、掲示物を整理して必要なものだけにするとか、45分授業ならその中身を分割してどこまで進んでいるかを示したりとか。
どうやったらAさんが負担なく授業に参加できるのかを考えながら、実際先生たちが向き合っているお子さん達にも生かせるヒントがあったのではないでしょうか。
もう一つの演習では、同じく自閉症で認知力は弱い重度のBさんが空き缶プレス工場で働く際のスケジュール(実物提示)を示しますか?というもの。仕事や休憩や食事などはまだ分かりやすいのですが、運動の時間や朝礼など、実物で示すのはどのようにしたらいいか。
一人では思いつかないものも、講座の中でお互いに発表しあうことで、「ああそうか」と大きく頷きながらメモを取る姿が見られました。
常に色々なアイディアのストックを貯めておけば、使える引き出しが増えていきます。色々なアイディア・発想の転換をつかんだような気がした2時間でした。
さて10月の「即実践講座」についてのお知らせです。
日 時 : 平成18年10月21日(日)19:00〜21:00
場 所 : 生涯学習センター 視聴覚室 (岡山市伊島)無料駐車場あり
申込み : 会場設営の関係上、必ず出欠の連絡をお願いします。
       (賛助会員対象:今年度分の新規受付は終了しました)
なお、これまでの講座で欠席したのにビデオの貸出を受けておられない方は、事務局までご連絡ください。また、前回のビデオの返却も、当日お願いいたします。

  掲 示 板

○ セミナーチラシについて

今回の会報と一緒に、会員の方へは12月2日(土)よこはま発達クリニック院長の内山登紀夫先生をお招きして行う「高機能自閉症・アスペルガー症候群への支援」の講演会チラシを入れております。
内山先生は今年「ふしぎだね!?自閉症のおともだち」「ふしぎだね!?アスペルガー症候群(高機能自閉症)のおともだち」(ミネルヴァ書房)という自閉症スペクトラムの子どもとお友達になるための本を監修者として出版されました。この本は、イラスト&ふりがな付きの分かりやすい説明で、どうして困った行動をしているのかの理由とどのようにすればうまくお友達と関わりあえるかを子ども向けに示した書籍で、私たち支援者が読んでも大変勉強になる書籍です。
今回の講演会では、知的な障害がないからこそ見過ごされがちな高機能自閉症・アスペルガー症候群に特にスポットを当てながら、家庭や学校や地域の中で、自閉症を持ちながらも幸せに暮らすにはどのようなサポートが必要かを考えあいたいと思っています。
ぜひお誘いあわせいただいてご参加ください。

○ TVドラマ「僕の歩く道」について

10月10日(火)夜10時から、自閉症者を扱ったドラマ「僕の歩く道」が草なぎ剛主演で放送されます。今回の主人公は10歳程度のIQの、31歳の自閉症の青年。
作品紹介がHPに掲載されていたので、転載します。(http://www.ktv.co.jp/bokumichi/)
彼はまっすぐに純粋に生きています。
彼はまっすぐにまっすぐに生きています。
だから、たくさんの人にまっすぐに純粋に愛されるのです。
ただそれだけです。
ただそれだけのことが、今の世の中ではとてもとても困難です。
そんな現代を生きる私たちは、知らず知らずのうちに身についたたくさんの不純なものを取り去るすべを思い出せなくなっているのです。
でも彼の存在がそのすべてを取り去ってくれます。
そしてその奥にあるはずの、昔私たちが一番大切にしていた純粋を思い出させてくれるのです。
その彼、この物語の主人公は、先天的な障害により、10歳児程度の知能までしか発達しなかった31歳の自閉症の男性です。
彼の言葉、彼の行動、彼の生きる姿がたくさんの周りの人たちを変えていきます。
たくさんの周りの人たちが忘れていた何かを思い出させてくれます。
そして、たくさんの周りの人たちに愛されていきます。
でも彼はそんなことすら知らずに、知ろうともせずに今日もまっすぐ、まっすぐ歩いていきます。自分の生きる道を。
その彼の生きる姿を、淡々と心に染みるように、響くように奏でるそんなドラマです。
ドラマをきっかけに、自閉症児者への社会の理解が進むようなドラマになるといいですね。また感想などをお寄せいただければと思います。

 事務局だより
暑い夏が終わり、随分涼しい毎日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。
育てる会事務局は8月から9月10月にかけて、目が回るような忙しさです。(継続中・・・)
巻頭文で代表も書いていましたように、10月から完全施行となる「障害者自立支援法」への「児童デイサービスセンター赤磐ぐんぐん」の対応が、この大忙しさの原因でした。
県や国は「児童デイサービス」についての「今後は療育型で」という考え方には、赤磐ぐんぐんはバッチリはまっています。(療育がしたくて始めたのですから) 問題は単価。つまり行政で設定されている金額です。

             一日定員10人以下   一日定員11〜20人   一日定員21人以上
児童デイサービスT   754単位           508単位         396単位
児童デイサービスU   407単位           283単位         231単位

「単位」というのは、お母さんに負担していただく1割の額です。残りの9割は行政から事業所(赤磐ぐんぐん)に入ってくるお金です。ここでは簡単に考えるため、1人を1回療育するごとに、「0」を足した金額が入ってくると考えてください。
「児童デイサービスT」は、幼児が全体の7割で、サービス管理責任者がいて、スタッフが10:2でついている状態のこと。
「児童デイサービスU」は、上の要件を一つでも満たしていない場合の基準です。
これまで(9月末迄)は、赤磐ぐんぐんでは幼児でも小学生でも「538単位」でした。
つまり。これまでのように小学生も幼児も混在していて、小学生の方が多い状態では「407単位」(定員10人以下、児童デイサービスU)ですから、一人当たりの収入がこれまでよりも1,310円減ってしまうということです。これは厳しいですね。
県や市町村に何度も電話をして、会議会議を重ねて、なんとかなんとか工夫して続けていける見通しがもてました。
それでも、まだまだ児童デイサービスそのものが難局に立たされていることは変わりありません。
ですが、幼児期・学齢期の療育の必要性や重要性、なにより個別の支援により子どもの力が大きく伸びることを私たちは知っています。だからこそ、この赤磐ぐんぐんの支援を継続していきたいと切に願っています。
どうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします。

話は変わって、10月29日(日)の上郡であるお祭で、11月3日(金)東粟倉村でのお祭りで、4日(土)岡山大学学園祭でそれぞれうらじゃ踊る予定です♪
(事務局:鳥羽 紗代)

以前は「育てる会会報」はHPにも全文をUPしていましたが、容量等の事情により、現在は一部抜粋にさせていただいています。
会の行事の予定は育てる会の「
今月の予定」に、近隣の講演会等の案内は「近隣の講演会等の案内板」に、載せるようにしています。
容量は小さくなりましたが、ご覧いただければ幸いです。
なお会報は正会員・賛助会員の方へは郵送でお届けしています。
もしご希望の方がおられましたら、ぜひ賛助会員に申し込みをお願いします。年会費 3000円です。
応援よろしくお願いします。
申込み方法の詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

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