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平成17年6月30日

 

 第86号 

NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会

 「太陽の家」について
 育てる会 夏の一泊旅行 案内
 自閉症支援者養成セミナー
     坂井 聡先生講演会 報告
 坂井 聡先生 特別連続講座 ご紹介
 ボランティア研修会 報告
 支援者養成講座のご案内
 育てる会勉強会 報告&ご案内
 AAO活動のお知らせ
 サッカークラブ・水泳教室・女の子の会 からのお知らせ&ご案内 
 私のお薦め本
    「サポートブックの作り方・使い方」 
 近隣の講演会等のご案内
 掲示板 ・ 面白コラム ・ 事務局だより

暑い日が続きます。今年の梅雨は空梅雨のようで、雨不足が心配されると連日テレビが伝えています。ここ数日やっと通り雨がありましたが、まだお隣の香川県では節水のための夜間断水が続いているようです。太陽の家の周辺にも水田がたくさんありますが、本格的な雨の到来を今も農家の方は待ちわびておられます。心なしか田んぼのかえるの鳴く声も精彩がない今日この頃、皆さん いかがお過ごしでしょうか。
今回は、その事務局のある「太陽の家」について少し書かせていただきます。会員のみなさんからも、太陽の家についてよく聞かれるので、この機会に一度説明したいと思います。
現在の太陽の家には、「育てる会」と「赤磐子どもNPOセンター」という2つのNPO団体の事務局と「太陽の家作業所」があります。私たちは、太陽の家からその2階を借りて、育てる会の事務局業務と、「赤磐ぐんぐん」という児童デイサービスを行っているわけです。
「育てる会」と「太陽の家の親の会」とを混同される方が多いのは、私がそのどちらにも立ち上げの時から所属している為と思われます。
太陽の家(正式には太陽の家運営委員会といいます)は、赤磐地域の知的障害を持つ親たちの会で、その前身は、「かざぐるまの会」といっていました。自閉症だけでなく、いろんな障害を持つ親たちの集まりです。
会ができたのは今から8年余り前、その頃はまだ小さかった子どもたちを持つ親たちが、月に一度集まって、レクリェーションや料理・工作・人形劇鑑賞などをしておりました。最初は親も子どもも楽しい時間を過ごせるように、という集まりでしたが、そのうち子どもが大きくなるに従って、みんなで将来のことを考えるようになっていきました。その頃は、今以上に子供たちの働く場が少なく、親として子どもの将来が不安でした。
そこで自分たちの力で作業所を作りたいというように考えるようになりました。知的にも重度の子を持つ親たちが多かったので、わが子への配慮された働く場、安心して作業に取り組める場は、自分たちの手で作らなければと、強く思いました。
平成13年に廃業された医院跡を、メンバーの親が将来の拠点にと買いとり、みんなで「太陽の家」と名づけました。
そして今年4月、念願だった太陽の家作業所を、開所することができた次第です。二人の通所生(自閉症とダウン症の好青年です)と二人の指導員との小さな小さな作業所は、親たちの将来の夢を乗せて始まりました。
普通の暮らしを地域の中で、当たり前の暮らしを障害のある子達にも、と、親たちの思いのいっぱい詰まった作業所の船出です。
今は、廃品回収が主な仕事です。
ほかには、育てる会が会報発送業務も委託しています。
皆さんのお手元に届く会報は、4月から、太陽の家の作業所メンバーが、発送の手伝いをしてくれているというわけです。まだ少しラベルがゆがんだり、テープのつけ方が、へんだったりするかもしれませんが、ご容赦ください。みんな精一杯がんばっています。
太陽の家の親の会と、育てる会の親は、赤磐地域では私のように両方とも入っている人も多くおりますが、基本的に別の会です。そういう訳で、ちょっとややこしい説明ですが分かっていただけたでしょうか。

さて、いつもの哲平の話題を一ついたしましょう。
6月6日から24日にかけての、3週間の現場実習が無事終わりました。
哲平の通う養護学校は、3年生になると就職希望の子は、前提実習と言って、就労可能な企業へ来年春の就職を前提として実習をさせてもらいます。哲平は、親の願いで企業実習をお願いしました。
進路の先生方は、必死で探してくださって、面談までこぎつけてくださったのですが、残念ながらそのM庵というお菓子メーカーには面談の後、実習を断られてしまいました。
面談の時は、就職してからのお給料のことや、時間のこと、盆や正月休みのことなんかも詳しく説明されて、担任の先生も私もこれはおそらく、就職は無理だとしても実習は大丈夫と思ってしまいました。
自閉症の特性として変更に弱い哲平ですが、それ以上にまだ決まっていないことへの不安が強い哲平です。
実習はどこへ行くのかとしつこく聞く哲平に、根負けした担任のT先生は、哲平に実習の日程を「M庵に行きます。」としっかり紙に書いて伝えてしまわれました。
その結果、実習はM庵へ行けると思い込んでしまった哲平でした。その後しばらくして、M庵から実習の断りの連絡が入りました。哲平も「実習、M庵に行きます」と毎日言っていただけにとっても悲しいことでした。
再び進路の先生ががんばっていただき、なんとか実習開始までに替わりの実習先を探してくださったので、改めて変更をはっきり示すという形で哲平は、ほとんど混乱はしなかったのですが、予定が確定していないことへの脅迫的な不安感、これが哲平の新しいこだわりです。白黒決着が付けばそれでいいのですが、このまだ灰色の状態への不安感というのが彼の今の難しいところです。時間ははっきり決めて欲しいし、日にちも そうです。中途半端がたまらなく嫌いです。
そのため担任の先生にしつこく詰め寄って、ついに「M庵に行きます」というお墨付きをもらって、安定したようです。
哲平が実際に実習させていただいたのは、「炎(ほむら)工房」という障害のある人たちが働く備前焼きの工房でした。現在、人手は足りているところですので、就労に結びつく前提実習というのではなく、実習期間だけの体験実習ということで、今回は無理をお願いして聞いていただけたようでした。
障害のある人たちが働いておられる職場ですから、自閉症への理解もあり、皆さん温かく接してくださったおかげで、実習も無事に終えることができました。
朝5:20に起床して、6:15に家を出て、夕方18:30に帰るという生活でした。結構ハードな勤務なので、3週間本人が続くかどうかと心配しました。仕事は、備前焼の成型の仕上げとわら巻きをさせていただきました。
哲平が3週間の間に仕上げた製品が焼きあがったところを見に行って、何点か記念に買わせていただけたらと思っています。
わが子ながら、同じ仕事をコツコツと良くぞやったなと思いました。毎日持ち帰る作業服とエプロンの汚れを見ながら、涙がこぼれました。障害がなければ、大学でも専門学校でも行かせてやったはずです。青春真っ盛りの17歳です。それがこんなに早くから就労へ向けての実習です。「哲ちゃん、えらい!!」うーーんとほめてあげたいとおもいました。
そんな哲平は、11月から始まる後期の実習が、そろそろ気になり始めました。「後期実習、M庵行く!」と実習最終日に家に帰りながら言いました。先生に早く次の実習先を探してもらわないと、またまた、先生を困らせそうな勢いです。全く困った奴です。
(育てる会代表:鳥羽 美千子)

自閉症 支援者養成セミナー 報告

6月11日(土) 岡山ふれあいセンター 大ホールに於いて
『自閉症の人の社会参加をどう支援しますか?〜視点を変えてみることで見えてくる工夫とアイディア〜』
という演題で、香川大学教育学部障害児教育コースの助教授:坂井 聡先生による講演会が開催されました。
参加した方から感想を頂きましたので掲載させていただきます。

去る6月11日(土)の坂井聡先生による講演会に参加しました。
当日は、300人を超す参加者で会場は超満員でした。
午前は、「自閉症のある人の理解 ―お互いに楽しくかかわるために―」と題して基礎的なお話、午後からは、「社会参加をどう支えますか―具体的な支援と工夫―」のテーマで、先生の経験に基づいた具体的な支援方法についてお話しくださいました。
10:30〜16:30まで途中昼食・休憩を挟んでの長時間の講演会でしたが、時間が非常に短く感じられました。先生は、一つひとつのお話に自分の経験を織り交ぜで話してくださるので、わかりやすくまた、話術が楽しく時間の経つのも忘れるほどでした。

【午前の部】

午前の部で特に心に残っているお話は、
「自閉症は脳の中枢神経系の問題である」ということを決して忘れてはならないということです。
「どうしてそんなことをしてしまうの?」「できるはずでしょう」と子どもを責めてしまわない。脳の障害であることを心にしっかり刻んでいないと、ついつい子どもを責め立ててしまうということです。特に高機能といわれる人たちは、親や周りからも「これ位なら、できるはず」と思われて、誤解を受けやすいということ、常に肝に銘じていたいと思いました。
また、「自閉症であると診断されることは、どんな教え方をすればよいのかを考える出発点になる」というお話しは、「教え方や関わり方を自閉症の特性に応じて工夫していけば、自閉症の子どもは、必ず安定して、彼なりの成長をしていく。希望をもって子育てしていけば、きっとより良い将来が開けるんだ」と思えました。
お話の中に出てきた、自閉症の特性に応じた教え方のヒントのいくつかを紹介します。

【 自閉症の子への関わり方のポイント 】

〇落ち着ける場所を用意する
子どもによって違う。ある子は保健室だったりするが、ある子には、「教室の隅のイス」だけでもいい場合もある。
〇言葉は明確で具体的にする。
「イスに座りましょう。」(行なうべき行動を明確に伝える)
〇目で見てわかるようにする。
〇始まりと終わりをわかりやすくする。
    見てわかる伝え方をする。タイムタイマーを見せながら、減っていく時間を見える形で示すなど。
〇満足感が感じられるような活動の工夫をする。
    特に能力の高い子の場合、達成感がもてるという事が、とても大切。
〇パニックには、冷静に対応すること。
こちらが影響されないように気をつけて、黙って表情を変えず(笑いもせず・・怒りもせず・・)落ち着ける場所へ連れて行く。ただ、パニックには原因があるということを振り返り考えていく。
ある子の例を出して話されました。パニックになるといつも髪の毛を抜いてしまう女の子の話です。
パニックになった時に、「辛いね、悲しいね。」と共感しながらカードに書いて見せながら、辛いとはこんな感情なんだ、悲しいとはこういうことなんだと教えていったところ、自分で「辛い」が言えるようになり、言えると同時に髪を抜くという不適切な行動はなくなったそうです。
〇興味や関心を広げるようにする。
電車を並べるというこだわりのある子の場合、電車の本を見る。電車のプラモデルをする。電車の線路の組立をする。電車のゲームをする。というように電車への興味を様々な方面へ広げていく。

【午後の部】

最初に「教育の目的は社会的自立です」と、先生は言われました。ともすれば完全な自立を目指す余り、自閉症者には社会的自立は無理だと思いがちな私たちですが、自立には色々な形の自立があります。人の力を借りてでも、自立はできるということを丁寧にお話しくださいました。
思えば私たちだって、完全に自立しているといえるでしょうか?クリーニングはクリーニング屋さんにしてもらっているし、散髪は理容室でしてもらいます。ご飯を作ってくれるのは奥さんだったりする訳でみんな誰かに支えられて、また支えあって生活しています。その支援が人により多い少ないはあるかもしれませんが、みんな誰かに助けてもらっているのがこの社会です。彼らも少し多めの支援さえあれば、自己決定権を持って生活できるはずです。
「人的環境と社会的環境を整えることで障害はあっても社会に適応できていければそれは、自立といえる。そうであれば社会的には障害とはいえない。」という風にお話ししてくださいました。
以下に午後のお話の中で気づいたことや、皆様に是非伝えたいと思ったところを記します。
〇TEACCHについて
ノースカロライナ州の自閉症のある人たちの為の社会支援システムなので、「日本でTEACCHをやっています」という言葉は適切ではない。
よく「カードを使うこと=TEACCH」というように思っている人がいますが、それは間違いです。TEACCHは、デパートみたいに色々なサービスがある。例えば個別教育計画を作ってくれるサービス・就労支援・家庭への支援・学校の指導者へ向けての支援サービス・子どもの評価をするサービスなどです。それらを全て含めて、自閉症の人を一生涯サポートし続けようというのが、ノースカロライナのTEACCHであって、もし日本で行っているといいたいのであれば、正確には、「TEACCH的手法を使っています」というべき・・、とのことでした。
そして、確かにTEACCHは自閉症の療育において成功を収めていますが、それはTEACCHが自閉症のある人の中心的な課題に注目をしているからだ言われました。コミュニケーションや対人関係を苦手とする自閉症児には、規則と日課に沿って構造化することで、安心できる環境を作っていくことや、一人一人に合わせた個別教育プログラムを作っていったことなどをあげられました。また、取り組んでみようと誰でも思えるところも、TEACCH的手法の広がりの理由でしょう。
○セルフエスティームを高める子どもとの接し方をこころがける
・当たり前と思えるようなことでも褒めていく。できないところに目を向けるのではなく、できるところを褒めていく。
・「10分しか集中しない」というのではなく、「10分も集中できる」と考えましょう。
・ほめる時は、みんなの前で、注意する時は、一人の時にしましょう。
・分からないから不適切な行動がでる。分かるようにすれば不適切な行動は減る。
(注)セルフエスティーム : 自分が価値ある人間であり、自分を大切に思うことがself-esteemの意味です。正確に意味を伝える日本語訳がないのでこのまま使うか、自己評価と訳されています。これが低いと投げやりになり向上心が薄れていき、これが高いと努力して何かをやり遂げるという自己達成能力が高まります。(NPOえじそんくらぶHPより)
〇見通しをもてない世界にいることを強要することは、心理的虐待です。
〇分かるように伝えるための構造化です。
〇指示待ちの状況を作らないようにすることが大切。
〇分かり易く伝えることは、行動管理するためではなく、自律性を高めるためです。
〇一人一人に会った構造化の方法がある。
など、改めて新しい視点で 自分自身の子どもへの接し方をもう一度考えるきっかけを数多くいただきました。
先生のお話しは、分かりにくいなとか 難しいなと思うようなところがどこにもない明快で楽しい、講演会でした。そして、帰ってすぐに我が子に今日学んだことを試してみたい。そんな思いに駆られながら、帰り道を息子の元へと急ぎました。
(ペンネーム:今あいにいきます ママ)

<保護者アンケートより>

今までは講演会に行くと「○○が困っている」「大変だ」みたいな話しが多く、帰りには暗い気持ちになっていましたが、今日の講演会はとても楽しく、「家に帰ったら○○してみよう!」という意欲が湧きました。これから社会も変わっていくのかもしれない、と少し希望が持てました。
「克服する」から「うまく付き合う」へ、という考え方がいいなぁと思いました。色々失敗をしながらも支援の方法を考えていきたいと思います。このようなセミナーに初めて参加させてもらいました。とても分かりやすく、楽しく自閉症のことが分かりました。少しずつ使えるアイディアを取り入れて生活して行きたいと思います。ありがとうございました
色んな方法で子どもの不安感や態度の説明を適切にしてくださったことが良かった。いつも自分の中に「この言葉は伝わっているだろうか?」「今何を考えているのだろうか?」など、相手の立場に立って考えるということが大切だということを改めて考えさせられました。
坂井先生、最高です!もーファンになりました!!テンポの良い話し方、分かりやすい講演内容はもちろん、こんなに楽しい先生がいらっしゃったのにはびっくりしました。
これからも多くの方に先生の楽しい講演を聞いていただいて、理解ある支援者が自閉症の方の周りにたくさん増えていくことを強く願う時間となりました。ありがとうございました!!

<教育関係者アンケートより>

「克服でなく、うまく付き合っていく」「技術を身につける」「本人の自尊心を大切にセルフエコティームを高めていくこと」「その場を捉えてうまく指導する」坂井先生のおっしゃりたいことがストンと心に落ちてきました。先生の本を帰ってから、またじっくり拝読したいと思います。
自閉症の方の手記などから、少しずつ彼・彼女らの生きにくさ・しんどさが定型発達と言われる私達にも伝わるようになってきましたが、まだまだ教育現場では「頑張れ」「社会はそうなっていないから」という風潮があります。
今一番変わらなければならないのは、教員の考えなのだと改めて思いました。
会場の方とのやりとりや、具体的な話などで私自身も視覚的な面からも分かりやすく良かったと思いました。
コミュニケーションブック・サポートブックや身の回りのことなど、知らなかった情報をたくさん得ることができました。毎日の保育の中で、楽しく上手く子どもと付き合っていこうと考えられるようになりました。ありがとうございました。
自閉症の方がどんなことに困っているのかを具体的に知ることができました。本人は困らせるつもりでやっているわけではなく、むしろ言われたことや分かる範囲のことを一生懸命しようとしているのだなと思いました。それを関わる側が理解し、歩み寄っていくことがいかに大切かを感じました。「これはできない」ではなく「これはできる」という視点に変え、失敗を恐れずに試してみようと思います。
分かりやすいお話で「なるほど・・・」と頷けることや、反省する点が多々ありました。見通しをもてない世界は心理的虐待というところは、心を打ちました。子ども達にいつも心理的虐待をしているのではないかと思うとゾッとしました。明日から安心できる環境・分かるように伝えること・・・まずやってみようと思いました。ありがとうございました。
坂井先生のお話は本当にとても楽しく、それでいてすごく使える具体的な支援をたくさん教えていただけるので、大好きです!
毎回どんどんパワーアップされているようで、これからもぜひ来ていただきたいです。

坂井聡先生 特別講座

先日のセミナーからの興奮も醒めない6月27日(月)、「坂井聡先生 特別講座」(第1回)でお話をお聞きしました。会場には20名を超えるお母さん達の参加があり、先生と間近に接してのお話、そして笑いが絶えない楽しい講座となりました。
少しだけ会報の紙面をお借りして紹介したいと思います。

まず最初に、「お話に入る前に確認しておきましょう」といくつかの確認事項を行いました。それは、

【1】 今回の全5回の講座は、子どもを鍛えるためのものではないこと
【2】 ここにいれば、勝手に答えがもらえる、というものではないこと
【3】 視点を変えたアイディアと工夫は、提案してもらえるということ
【4】 宿題が出ることもあること

ということ。そして

【5】 絶対 損はしないから安心してほしい

とお話しされました。何だかワクワクするスタートでした。


今までの子ども達の支援について、従来は「子どもの持っている力をもっと伸ばしたい」「もっと頑張ってほしい」「自立へと結びつけるためにいっぱい頑張ってほしい」という考え方が主だったのではないでしょうか。
坂井先生は「障害があったら、ずっと頑張り続けないといけないの?」「周りから口や手を出されながら、指導され続けるの?」「それ以外に自立への方法はないの?」と考えられました。
そして「ノーマライゼーション」という「子どもの持っている力」+「周りの人からの援助」があって、自立していけるなら、どんどん手助けがあってもいいのではないか?という考え方が出てきたことで、新しい自立観が生まれたことをお話されました。
周りからの援助を子どもが受けるためには、制度やフォローする人はもちろん、本人のコミュニケーション能力を正しく知り、支援していくことが大切だとお話くださいました。
また地域や学校がこのような思想で子どもへの支援を行うようになるのは、何ヶ月・何年も先のことかもしれません。でも家庭であれば、お母さんがやる気になれば、今日・明日にでも始められるのだ!ということの素晴らしさ、そして全5回の講座で、この部分での援助のきっかけ作りをお手伝いします!とお話くださいました。

コミュニケーションサンプル 

○ コミュニケーション=自発的に明らかに分かる形でのコミュニケーションのみを書く。こちらが「ちょうだい、は?」とか「何て言うの?」とかヒントを出しているものや「どっちにする?」など質問している場合には、数に入れない。
○ このサンプルをグラフにすると、何が得意でどういう力を持っているか、どういう取り組みをしていけばいいかがよく分かる。

表出性のコミュニケーションを育てる

○ とれているようでとれていないのがコミュニケーション
     ・・・片方(大人)のコミュニケーション力が高いとツジツマをあわせてしまう
○ 周囲に受け入れたれないような行動も、見方を変えればコミュニケーションの1つ
   ・・・うまく伝えられるようになれば、行動は改善される
     「嫌」を伝えられるようになれば、行動は激変!!

周囲に受け入れられない行動にも

○ 要求・注目・拒否  というコミュニケーションが隠れている!!
○ 重度な子にも絶対これらのコミュニケーション力はある!

やりとりすることが大切

○ 音声だけのやりとりにこだわっていない?・・・「やりとり」することが大切
○ コミュニケーションする力を伸ばす上で大切なのは、やりとりすることの便利さ・楽しさ・必要性に気がつくようにすること
○ 通じにくい言葉でやりとりを強要するよりも、確実に通じる方法でやりとりを経験する方がコミュニケーションの力を促進することに
(事務局:鳥羽紗代)


ボランティア研修会の報告

6月18日(土)、蕃山町の「ユースプラザ ほっとハート」にて、「自閉症児のためのボランティア研修会」を開催しました。

前回のボランティア研修会(4月30日)でも好評をいただいた「自閉症の子ども達への基礎理解」を県立岡山東養護学校教諭の濱田敏子先生にしていただいたのと合わせて、今回は新たに、「自閉症関係の映画を通して、実際の子どもとの関わりを知る」をテーマに、自閉症の障害を持った人が登場する映画を見ていただいて、濱田先生のお話に照らし合わせながら考えていただく形にしました。


「レインマン」(ダスティ・ホフマン、トム・クルーズ共演、1988年に公開され、アカデミー賞・作品賞などを受賞した大ヒット映画)や「マーキュリー・ライジング」(1998年に放公開された、ブルース・ウィルス主演のアクション映画)の中でのエピソードを紹介しながら自閉症の特性に合わせた説明を行いました。
例えば、「レインマン」では、レイモンドが車の往来の激しい交差点の真ん中で立ち止まってしまうシーンを見ながら、会場の方と一緒に「何故立ち止まってしまったのか」を考えてみました。
「歩け」から「止まれ」の信号の変化。
私たちなら急いで走って渡りきることでも、自閉症の人は「止まれ」以上のことを考えることができず、表示に従って、その場、交差点の真ん中に立ちつくしてしまいます。
日本の信号はまだ「青」「赤」なのですが、向こうの信号はストレートに「Don’t walk(歩くな!)!」というはっきりとした命令形になっているので、その指示に素直に従って歩みを止めて立ち止まったのです。こういう応用が必要なことは何度も体験して、誰かが教えていかなければ身につきませんし、教え方も自閉症の特性に応じた工夫が必要だということを参加者と一緒に学びあいました。
また「マーキュリー・ライジング」では、先生からパズルの本をもらったサイモンが、お礼も言わずに受け取り、指示通り席に座っているシーンで、「お礼を言わなかった」ということへは深く追求していない点を確認しました。儀礼的な対応は自閉症にとって苦手なことの一つなので、先生も「お礼」などは強要していません。
またここで「早くしなさい」「何をしているの」「ちゃんとしなさい」などの曖昧な言葉かけではなく、「○○をしたら、○○をするよ」とやることを具体的に分かりやすく伝えた方が、自閉症児にとっては理解しやすいし、きちんと適切に行動できることなどを見て、実際の子どもとの関わりのヒントを探りました。

参加者からは「自閉症の子どもとは前から関わっていたけど、より具体的に関わり方が分かった」「実際の教育現場で働かれている先生のお話を聞いて、将来教員を目指すものとして、もっと自閉症のことを勉強したいと思った」「ビデオを見ながら、その行動の裏にある意味やどう対応してあげればいいかが分かったのでとても良かった」などの感想が寄せられました。

何より嬉しかったのは「研修を終えて、自閉症の子どもと関わってみたいと思いますか?」という質問に対して、何と全員の方が「関わってみたいと思った」と答えてくださったことです。本当に参加された皆さん、ありがとうございました!

 面白コラム
今日は小学生のYくんのお話を1つ紹介します。Yくんは最近一人でお風呂に入ることができるようになりました。お父さんお母さんは「やっと自立できるようになった」と喜んでいました。初めのうちは一人での入浴ですから時々覗いていましたが、最近は安心して、確認することあまりもありませんでした。
最近水道代がいつもの2倍もかかるのでどうしたことかと思っていたYくんのお母さん。
ある日のこと、いつもひとりでお風呂へ入るYくんのお風呂場から何やら音がします。
「ジャー!ジャー!」・・・「何の音?変だなぁ」と思って覗いてみると、シャワー全開で流しっぱなしのお湯が排水溝へジャージャー流れているのを発見。「すべてはこのせいだったのね!!」
勿論ガス代も高いことに気付きました。

【教訓】

できるようになったと安心するべからず。気をつけよう!時々目配り・再評価!!

 事務局だより
今年の梅雨は雨が降らないですね。事務局もうだるような暑さです(まだ6月なのに)。
私なりに理由を考えてみました。
去年になくて今年にあるもの・・・それは、児童デイサービスのため、風の通り道が見事に構造化されたつい立などで封鎖され、全くの無風状態であること!!(^^;)
学校現場や療育施設などでは、こういう時どうやって対応しているんでしょう??
でも、今回、岡山NPOセンターからの助成金をいただいたお金で、無事クーラーを療育室とお母さん達の控え室には、つけることが出来ました。
本格的な夏の到来の前に早めに付けることができて、本当に良かった★ありがとうございました(__)
(事務局:鳥羽 紗代)

以前は「育てる会会報」はHPにも全文をUPしていましたが、容量等の事情により、現在は一部抜粋にさせていただいています。
会の行事の予定は育てる会の「
今月の予定」に、近隣の講演会等の案内は「近隣の講演会等の案内板」に、また特にみなさんにお伝えしたい記事などは「育てる会ライブラリー」に載せるようにしています。
容量は小さくなりましたが、ご覧いただければ幸いです。
なお会報は正会員・賛助会員の方へは郵送でお届けしています。
もしご希望の方がおられましたら、ぜひ賛助会員に申し込みをお願いします。年会費 3000円です。
応援よろしくお願いします。
申込み方法の詳細は「
育てる会 HP」に記載しています。

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