sorry,Japanese only

『 自閉症ガイドブック シリーズ3 思春期編

社団法人 日本自閉症協会  定価:800円


「乳幼児編」「学齢期編」に続く、日本自閉症協会編のガイドブックシリーズ、第3集です。
内容は、前半が思春期におけるさまざまな課題・問題への専門家からの解説、中盤がQ&Aの形で、医療や教育現場、生活指導の立場から解決策の提言、結びが海外も含めて、思春期における実際の事例の紹介という構成になっています。また、その間には、各地の親の方からの投稿が「コラム」という形で豊富に載せられており、親と専門家の合作でできあがった本という印象です。まさに自閉症協会ならではのガイドブックでしょう。

自閉症児にとって「黄金期」といわれる学童期が終わり、いよいよ波乱の思春期を迎えるわけですが、確かに大変かも知れませんが、自閉症というものの特性を理解し、適切な対応をとっていれば、なんとか乗り切れそうだ・・・というのが、この本を読んでの印象でした。それには、先輩の親の方からの体験報告、短い言葉ですが、思春期に対する肯定的な言葉が多かったためでしょう。

専門家からの意見は、それぞれの立場で大勢の方が各節を分担して書かれているために、「ガイドブック」という名の通り、自閉症に対する最大公約数的な入門編となっています。すでに自閉症児の思春期の問題について、何冊か専門書を読んで、各分野についてもっと詳しく知りたいという方には、総論的で、少し物足りないかも知れません。
でも、思春期を迎える前に、初めて手にする本としては、明るさが感じられる内容でお薦めできる一冊だといえるでしょう。

また、思春期においては、高機能な子と、知的障害を伴うカナータイプの子、それぞれに違った配慮が必要という点を感じました。
特に高機能の子の場合、本人への告知と、それに続くフォローが重要なものになってきますね。それについても、ニキ・リンコ氏や「空の色」氏の体験談は参考になると思います。

それと、あまり本題には関係ないかも知れませんが、今話題の年金問題について、私の気のつかなかった、気になる一文がありましたので紹介します。

私たちの国では、20歳以上のすべての国民が基礎年金に加入し、10桁の番号をもっていることになっています。自閉症の人も同様です。20歳になれば国民年金に加入することになります(平成15年度時点で月13,300円支払う)。

言われてみれば、確かにそうなんでしょうが、どこかの総理大臣と同じで、うっかりすると20歳になっても加入を忘れてしまって、「年金未納」となってしまいそうです。なにしろ、我が家の息子の場合など、本人は絶対気にもしないでしょうから、全ては親の責任となりそうですね。
それにしても、障害基礎年金をもらうことになっても、その中から国民年金は払い続けなければならないのでしょうか? 
・・・考えてみると、障害基礎年金をもらいながら一般就労したとしたら、厚生年金保険料が給料から天引されるのでしょうから、やっぱり国民年金に加入しないといけないのかもしれませんね。

それでも、一般就労ではなく福祉的就労となった場合は、もらえる賃金も少ないでしょうから、月 13,300円の掛け金は少し高すぎるようにも思えます。
減免措置があるかどうか、息子が20歳になるまでには、調べておかなければ・・・ (^_^;) 

(「育てる会会報 74号」 2004.6)


  目次

はじめに

1 自閉症と思春期

   自閉症とは

  コラム これから思春期を迎えます
       いま、思春期のまっただ中です

   思春期における課題と支援の方向

医療的な面で
  コラム 思春期を迎えて成長した面がいろいろありました
教育及び地域生活を送る面で
生活と就労の面で
  コラム 趣味を見つけて楽しい日々
       行動範囲を広げ自信を持ち

福祉支援の面で
  コラム 成人期への準備は幼少期から

2 思春期をうまく乗り越えるための基礎・基本

   人間関係づくりのために

親子関係の再構築
  コラム 親自身が意識的にシフトチェンジする時期
対人関係の構築 − 友だちをつくるために
自分が他の人と違うと感じている本人に向き合うとき
  コラム 子どもの思いを分かってあげたい
告知 − だれが、どのような時期に
子どもから信頼される親になるために
コミュニケーション能力を育てたいとき

   社会性を育てるために

   移行期を乗り切るために

学校の中で − 学部、学年を移行するとき
学校から社会へ移行するとき

   医療や福祉と連携を図るために

医療
  コラム 人に甘えても頼ってもいいのだ
福祉
  コラム 子離れと自立をめざして

   充実した生活を送るために

   就労に向けて準備するために

就労の場を考える
就労のために必要なこと
ジョブコーチからの支援を受けたいとき

   地域生活のために

   各種社会支援を受けるために

  コラム 進学先を選ぶためのセミナーが欲しい
       自閉症という視点に立ったらパズルがはまった
       二つの行動のギャップに驚いて
       子どもの本当の気持ちを分かってあげるのは難しい!

3 Q&A こんなとき、どう対処する?

   行動の面で

Q 最近、怒りっぽくなった
Q 突然のいらだち
Q 過敏さについて
  コラム 音へのこだわりがとれ音楽好きに
       よい経験 − バリアフリーミュージカル、スペシャルオリンピック

Q 強くなったこだわり
Q 自己主張が強くなった
Q 常同行動への対応
Q 落ち着かなくて困っています
  コラム 定時制高校に適応
       記憶の仕方 − 「川岸にネギ」で根岸先生

Q 乱暴な行為について − 医療の面から
Q 乱暴な行為について − 生活指導の面から
Q 自傷について − 医療の面から
Q 自傷について − 生活指導の面から
  コラム 長い時間をかけていろいろなことができるようになった
       上手に支援を受けながら問題と向き合う

Q 不登校と無断外出について − その1
Q 不登校と無断外出について − その2
Q 異性とのつき合い方
  コラム 思春期こそ父親の出番です
Q 肥満への対応
Q 少食への対応
Q フラッシュバックへの対応
Q 睡眠障害への対応
Q うつ状態などへの対応
Q 幻聴・幻覚についての理解
  コラム 子どもの周りにアンテナを立てて

   学校・教育問題

Q 教師の理解がほしい
Q 友だちとの関わり
  コラム 学校で障害の理解が得られなくて
Q 教師と連携したいとき − 教師の立場から
Q 教師と連携したいとき − ケースワ−カーの立場から
Q 友だちの理解がほしい − 教師の立場から
Q 友だちの理解がほしい − ケースワーカーの立場から
Q 長期休暇の過ごし方
Q 学校と他機関との連携
Q 進学先の決め方
Q もっと長い期間学ばせたい
  コラム 高校は普通科、商業科、工業科?

   医療関係

Q 医療機関からの指摘がなく、療育の時期を失した
Q 医療機関にかかるとき
Q 医学的検査について
Q 身体疾患があって医療機関へかかるとき
  コラム 医療の助けをかりる
       周りに助けを求める

Q 関連する障害や病気(てんかん、トゥレット等)

   就労について

Q 作業所に適応できない
Q 高機能の人への就労支援
Q ハローワークでの理解
Q 職場の理解を得るには
Q 正当な労働評価を得るためには
  コラム 将来に続く支援がほしい
  
参考 : 「事業主のための自閉症者雇用ガイド」
  
コラム 会社側の理解が就労の継続を可能にしている!

   地域で生活する上で

Q 地域の理解を得るには
Q 高機能自閉症を理解してもらうには
  コラム 思春期とはこんな時期
       上手に第三者の手助けを
       支援機関や支援者がもっとほしい

   家族関係

Q 父親の役割、母親の役割
Q きょうだい関係について
  コラム 同じ目線の高さで

4 豊かな成人期のために、今考えておきたいこと

   生活の場を考える

   職業の選択に際して − 本人より

5 本人・きょうだい・友だちから見た思春期

   そして思春期は続く

   苦しみを乗り越えて − そして将来のこと

   ぼくが創造した都市 「ユルビーユ」 について − フランスより

   ぼくの仕事・5年間を振りかえって − 韓国より

   たっちゃんへ − もし、順番が違っていたら私があなたでした

  コラム 兄弟姉妹にも十分な配慮を

   バディを組んで

  コラム 親を越えるとき

6 社会資源

   こんなふうに支援しています (見学記)

  愛知 アスペ・エルデの会
  佐賀 朝日山学園
      自閉症・発達障害支援センター 「結」
      NPO法人 「それいゆ」

   支援のための表を作りましょう

付録

   父母からのメッセージ : アンケート自由記述より

   特別寄稿 「青年期の自閉症スペクトラム : 教育の課題
                   − リタ・ジョーダン

   自閉症の関係機関一覧

  自閉症専門の相談・療育機関
  療育手帳について
  日本自閉症協会とは
  日本自閉症協会支部(事務局)名簿
  自閉症関係施設一覧

   執筆者一覧 (平成16年3月現在)

石井 哲夫 (日本自閉症協会会長、白梅学園短期大学)
太田 昌孝 (日本自閉症協会理事、東京学芸大学)
内山 登紀夫 (大妻女子大学、よこはま発達クリニック)
三苫 由紀雄 (東京都立七生養護学校)
久保 義和 (社会福祉法人 けやきの郷 初雁の家)
志賀 利一 (社会福祉法人 電機神奈川福祉センター)
杉山 登志郎 (あいち小児保健医療総合センター)
飯田 順三 (奈良県立医科大学看護学科)
松本 英夫 (東海大学医学部)
武藤 直子 (全国療育相談センター)
斉藤 宇開 (独立行政法人 国立特殊教育総合研究所)
佐久間 栄一 (国立久里浜養護学校)
山内 俊久 (東京都立青鳥養護学校)
梅永 雄二 (宇都宮大学)
小川 浩 (大妻女子大学、社会福祉法人 横浜やまびこの里)
沼倉 実 (社会福祉法人 嬉泉 袖ヶ浦のびろ学園)
西野 公 (社会福祉法人 檜の里 ワークセンターひのき)
新井 利明 (安田生命社会事業団子ども療育相談センター)
高倉 芳文 (東京都板橋区立加賀小学校)
市川 宏伸 (東京都立梅ヶ丘病院)
立松 英子 (東京都立南大沢学園養護学校)
松本 知子 (社会福祉法人 檜の里 あさけ学園)
大屋 滋 (日本自閉症協会理事、旭中央病院)
滝澤 久美子 (横浜市在宅障害者援護協会)
奥村 幸子 (社会福祉法人 嬉泉 子どもの生活研究所)
中山 清司 (社会福祉法人 横浜やまびこの里 仲町台センター)
ニキ・リンコ (翻訳家、本人)
空の色(ペンネーム) (本人)
幡本 建佑 (本人)
ジル・トレアン (本人:フランス)
パク・ユンソ (本人:韓国)
瀬崎 美帆 (きょうだい)
松本 学 (武蔵野東技能高等専修学校)
東京IEP研究会
リタ・ジョーダン (英国バーミンガム大学)
コラム:メールその他で寄せられた全国支部の会員の親たち

あとがき


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