sorry,Japanese only

 『 光とともに・・・〜自閉症児を抱えて

戸部 けいこ:作 秋田書店 760円 + 税
ISBN4-253-10433-9 C0979 ¥760E (0)

コミック月刊誌「for Mrs.」(秋田書店)の11月号から1月号まで、短期集中連載された作品です。

自閉症を告知されて、不安や周囲の無理解から、絶望の淵に立たされ離婚まで考えた母子の話です。仕事ひとすじの夫が過労で倒れた時の泣きながらの血を吐くような思い、「仕事の代わりをする人はきっといるわ。でも私の夫は・・光の父親はあなたしかいないのよ・・!! いくら出世してすばらしい結果を出しても死んだら何にもなららいじゃない。」

やがて、「親」として生きることに新しい価値を見つけた夫と、家族で“光くん”を育てるようになり、ある朝「ママ」という言葉がその口から紡ぎ出される感動のラストシーン・・。

作者はしっかり、自閉症という障害を取材し、その困難さも認識した上でのハッピーエンドにしあげています。そのエピローグでも「光に“もう1度言って”は通じない。これでいきなり喋れるようになるわけではない。できたこともできなくなったり、かんしゃくを起こしたり・・あいかわらず光の日常は嵐の中に時折り光が射すかんじ・・だからこそこの思い出は宝物なの・・・
  ・・・
一緒に生きて行こうね。光とともに。」

昔を思い出して、思わずホロッとなりました。私もはじめての「おかあさん」の呼びかけに立ち会うことができ、感激した親の一人です。上の子達の場合は、いつのまにか、という感じで残念ながらいつ頃から呼びはじめたのかさっぱり覚えていません。
こんな感動を味わえるのも、障害児の親の醍醐味でしょうか、私にとっても息子がくれた宝物の思い出です。

      ( 2001.7.28より「小学校編」が始まります。)

「会報 33号」 2001.1)


 光とともに・・・ 〜自閉症児を抱えて〜 2
戸部けいこ:作 秋田書店 定価:760円 + 税 
ISBN4-253-10434-7  C0979  ¥760E (0)

今月のお薦め本は、なんといっても、この「光とともに・・・」第2巻につきます。
たかがコミックとあなどることなかれ! 
帯の部分で内山登紀夫先生も絶賛しているように、
「戸部さんが当てた光が、魔法のように自閉症の誤解をとかしてくれる。」

巻は『 小学校低学年編 』です。
「小学生になった自閉症児、光君の物語を見て下さい。世界中の“光君のお友達のために!”」
そう、ここに描かれているのは、我が子達や、友達の姿です。
そして、泣いたり、悩んだり、喜んだり、笑ったりしている、東家のお母さんとお父さんの姿は、まぎれもない私達の歩んでいる姿なのです。

周りの一人でも多くの方に、この物語を読んでいただきたい、自閉症児のことを少しでもわかっていただきたいと願っています。「for Mrs.」に連載中も毎月見ていたのですが、改めて本になって読み返してみますと・・やはり目頭が熱くなります。でも悔し涙よりも、はるかに嬉し涙の方が多くて読後感もさわやかです。救われる思いです。

それと、この本のいいところは、感性に訴えるだけでなく、自閉症児にとって役にたつ、具体的な情報や支援グッズも満載なのです。11ページの欄外に書かれているように、作者の戸部さんといっしょに、専門家や親の方がアイデアを出し合って、光君が安定して暮らせるように、ホント弟を育てるように、コミックと同時進行で知恵を出し合ってきました。

夕霧先生をはじめ、マチートさん、Bright Starさん、ジェリーさん、M先生、KING STONEさん、トミーさん、りんごのたねさん・・親の方でもダダ父さん、ダダ母さん、天狼さん、タコさん、クニさん、メロディさん、オーヤさん、M生さん、RAMさん、ゴンザレスさん、そしてなんといってもあとがきを書かれているREIKOさん・・みんな光くんが大好きです。もちろん、かく言うトチタロも・・

話の中で紹介されているサポートブックやGPSの迷子サービス、チュキを使った写真カードやQHW(クオーターアワーウォッチ)など、親たちが実際に使って役にたったものばかりです。きっと参考になるものがあると思います、

こんな周りの方にも、親の方にもぜひともお薦めの一冊です。事務局に100冊入荷しましたので、2冊でも3冊でもどんどん注文してください。広く県下にも広めていきましょう。

「会報 46号」 2002.02)


 光とともに・・・ 〜自閉症児を抱えて〜 3 』

戸部けいこ:作 秋田書店 定価:760円 + 税 
ISBN4-253-10441-X  C0979  ¥760E (0)

お待たせしました。小学校高学年編、4年生になった光くんです。

光くんは、あたたかい家族や理解ある先生に囲まれて、ゆっくりですが少しずつ成長しています。
でも、大きくなっていくにつれて、また新たな問題も生まれてきます。幼い頃は許されても、小学4年生になると許されないこともでてきます。

・・・それって、考えてみたら普通の子 (イエイエ 自閉症児が普通でないって意味じゃないんですが (^_^;) )でも同じですね。
ただ、違うのは健常児 (この言葉もちょっと気になりますね、自閉症児が健常でないって言われてるみたいで (^_^;)・・)たちが自然に覚えるようなことでも、自閉症児たちは教えていかないと身につかないことが多いってことでしょうか。
よりきめ細かい療育、支援が必要ですね。

その支援のヒントがいっぱいつまった本です。物語にひきこまれて読みすすむうちに、自然にいろいろなヒントや、いまもっとも効果のある視覚支援の方法など情報もイッパイです。

でもなによりまずはコミックですね、ハラハラドキドキ、泣いたり笑ったり、いっっしょに楽しんでください。
ちなみに180ページで、耳かきにふりかけにねりわさびを胸ポケットにいれてでかけようとしている光くんは、我が家のTeppeyです(^o^)

ストーリーはもちろん戸部さんの全くのオリジナルな波乱万丈なんですが、ところどころのエピソードの中にはいろんな家庭での実話からのワンシーンもあります。ア、これ「レイルマン」のダダくんじゃないかな、ア、これは光くんのモデルのRくんのエピソードじゃないかな・・?って
そんな読み方も楽しいですね。

なにしろ、絵空事でない生身の自閉症児たちも、ところどころに特別出演する「光とともに・・・」です。
インパクトも強いです。これからも、光くんの成長を楽しみに見守っていきたいですね。
・・・いつのまにか、光くんがTeppeyの弟のような、生身の存在に思えてきました。
でも、物語なので、いつのまにか追い越されて、光くんがTeppeyのお兄ちゃんになっちゃうかも・・(^_^;)

あとがきは「ありのままの子育て」を書かれた、川崎市の公務員になられた徹之氏のお母さん、明石洋子さんです。
「大きくなったら明るく元気に働く大人になります!」それは徹之氏、光くん、そして自閉症児みんなの思いですね。

(2002.11)


『光とともに・・・4 〜自閉症児を抱えて〜

戸部 けいこ:作 秋田書店 定価:760円+税
ISBN4-253-10442-8 C0979 ¥760E

楽しみに待っていた光くんの4作目です。
みんなの愛情に包まれて、少しずつ少しずつ大きくなってきた光くんです。そんな光くんも小学校5年生になります。

これまで理解あるまわりの方の支援を受けて、安定して暮らせるようになってきました
福祉センターの新井先生や心理指導の大沢先生、保育園のユミ先生、小学校の担任の青木先生や若林先生、・・中でも、自閉症の特性をよく理解し、一人ひとりに合わせていろいろ工夫してくれる青木先生は素晴らしい先生でしたね。

でも、私達の現実を見たとき、そんな青木先生のような先生や、育てる会賛助会員の先生方のように、自閉症児と積極的に関わりを持って理解しようとしてくれる先生はまだまだ少ないですね。
特に普通学校においては、「みんなと同じ」を目指して、「みんなと同じがいい子」になってしまうことが多いです。そんな先生のクラスでは、自閉症児は歓迎されなくなってしまいます。

個別学級でも、障害児教育に情熱を注いでくれる先生ばかりとは限りません。定年後の恩給は、最後の給与を基礎とするため、管理職になっていない先生には、少しながらも手当ての出る個別の担任にしてあげるのが温情ある校長先生の人事とか・・そんな温情はぜひとも子ども達に向けて使ってほしいですね。

ともあれ、光くん達も日本の小学生。こんな現実にも直面しなければなりません。
その中でもなんとか、最善の道を探していこうとするのが親の役目ですね。あきらめてしまったら、不幸になるのは子ども達です。心ある人の力を合わせて、仲間の子ども達の力を借りて・・・そんな第4巻です。みなさんも応援してください。

あとがきは青木先生のモデルの一人でもある、長江先生が書かれています。その子ども達への思いのこもった文章を読んで思わず涙がこぼれました。我ながらとても自然な、すがすがしい涙でした。
出勤途中のバスの中だったので、朝からコミック本を広げて涙している中年男・・少々異様な風景だったかもしれませんね (^_^;)

この4巻も、前の3巻と同じく、自閉症児にとって助けになるいろんなアイデア・工夫が溢れています。マニュアルとしてもとても役にたつ内容になっています。育てる会でも大量に取り寄せていますので、何冊でも注文してください。コミックですので、一般の方にも気軽に読んでいただける、自閉症を理解していただく絶好の本です。みんなで広めていきましょう。

P.S 今回は残念ながら息子・哲平のエピソードは直接的には出てきません。あえて言えば72ページに登場する青木先生の作った個別の指導計画書。これが我が家で作った哲平のための個別指導計画の一部分です。
小学校時代のもので懐かしかったです。

・・というわけで、今回はマンガの背景の大道具係を勤めさせていただきました (^。^)

「会報 60号」 2003.4)


光とともに・・・ 〜自閉症児を抱えて〜 5

戸部 けいこ:作 秋田書店 定価:760円 + 税
ISBN4-253-10443-6 C0979 ¥760E

自閉症と告知を受けてから、もう10年近く・・小学校5年になった光くんです。

「私だって・・・けしてうまくいってるわけじゃないよ。1年生の時の悩みは少しずつなんとかなってきてるけど、5年生には5年生なりの悩みがあるんだよ」

 ハタから見ると、幸せに育っているように見える子育てでも・・なにしろ、我が子は自閉症児です。なまはんかなものでないことは、自閉症児を育てている親同士、言うまでもなくおわかりのことですね。

 
今回の物語の中でも、思春期のこと、きょうだいのこと、嫁姑のこと・・・確かに、健常児でも同じ種類の悩みはあるかも知れませんが、それをはるかに越えるような大きさで事態が次から次へとおこってくるのが、自閉症児の子育てですね。そして、自閉症児の子育て場合には、その障害の特性を理解した支援が欠かせないことになります。

 本書の中にでてくる、コミュニケーションを引き出すためのVOCAや時間を視覚的に表すQHW(クォーターアワーウォッチ)などもそのための支援機器の一つです。
でも、子ども達を育てていて、なにより必要に思うのは、自閉症のことを理解して支えてくれる周りの「人」の存在ではないでしょうか。
もちろん、最初からそんな理解ある人たちに恵まれている人は少ないです。「光とともに・・・」のお母さん幸子さんにしても、最初は一番身近な「夫」から始めて(第1巻の頃、今から思えば懐かしいですね)・・少しずつ少しずつ、その輪を広げてきて、やっとたどりついた小学校高学年です。

 また、その幸子さんにしても・・・

「 光があんなに楽しそうに過ごしている。花音(かのん:妹)が安心しきった目で私を見てる。早くこうしてあげればよかった。
泣いてる花音やかんしゃくおこしてる光を見るたび歯がゆくて切なくてどうしようもなかったよ。
でも方法がわからなかった。・・知ってても使わなかった。
もう少し早く・・・ 家族以外の人に助けてって言えば良かった 」

「何が何でも自分一人でって思わなくていいんだよって。涙 でちゃった。
私も助けてもらうばかりじゃなくて ほんの少しの時間でも何かお手伝いしたいわ」

幸子さんと光くんが ”NPO法人 おひさまハウス”を初めて利用した時の思いです。

この本を手にした方の周りでも、現実にそんな輪が広がっていくのを願っています。


 

 

 

 

 

 本書のあとがきの中で、自閉症児「ポンすけ」くんを育てながら司法試験に合格し、弁護士として障害者支援に携られた阿部真理子さんも書かれています。

「障害ある子供を授からなければ、おそらくその場限りにしか向かなかった目線が、子供の未来を作るため、5年という近い将来、10年というより遠い将来、そして子供たちが成長するもっと先の未来、というふうに広がっていく。

全国各地でそんなふうに活動されている方々を見るたび、どれほど「ポンすけはこれから先も大丈夫」という勇気を持つことができただろうか。」

その、阿部さん、実はこのあとがきを書かれたのは自らの癌との闘病中で、退院と再入院との間のわずかな時間でした。

ポンすけくんは、まだ光くんと同じ小学校の高学年・・母としての思いは切ないまでもあふれながらも、やがてポンすけくんを母に替わる人へと託さなければならなくなるのを・・心の中で覚悟されていたのかも知れません。

ポンすけくんやみんなへの、最後のメッセージを伝えたあとがきの載った本書の出版を見届けるように、先月1月半ば、還らぬ方となってしまわれました。
幼い我が子、しかも自閉症というハンディを持つ子を残して・・その思いを自分に置き換えたとしたら・・、涙が止まりません。

「親がいつまで子供と一緒に生きていられるかはわからない。しかしその時に私がポンすけのそばにいられるなら、ポンすけに向かって、「おかあさんは、盛岡の最高にきれいな景色の中で、あんたを産んだんだよ。あなたは幸せに生きてゆける。産んであげて本当に良かった」と言ってやりたい。

そして私の命を継ぐ者としてのポンすけに、親亡き後も、生きていることの幸せを存分に味わってほしい。

できれば、親に替わる愛する人や支援者に囲まれて・・・・・・・・・・。」

 

ご冥福をお祈りします、心より合掌です・・・・

(「東方見聞録 AUTISM Vol.2」 2004.2 より)
日本自閉症協会岡山県支部 東部地区ニュースレター


   「お薦めの一冊」目次へ