リフォームの時代

これまでの日本の住宅の寿命は27年と短く、アメリカの住宅の寿命の44年、イギリスの75年と比較して、一世代限りの消費型住宅と言えます。しかし、今では次々と建物を建設する高度経済成長の時代が過ぎたことや、住んでいる住宅を約30年の短さで解体廃棄すると、限りある資源のむだ使いや、環境破壊にもつながります。これからは、住んでいる住宅に愛着を持ち、長く住むべきであるという考えが定着しつつあります。

ここ数年、リフォームをした住宅を雑誌やテレビなどでよく見聞きするようになました。なにかブームになっているような印象すらあります。
リフォームとは、いったいどういう事を指しているのでしょうか?
・ 単に家の壊れた部分を直すこと?
・ キッチンやトイレ、照明器具などの設備を新しくすること?
・ ふすまやクロスを全て張り替えること?
そうではないのです。
リフォームとは、住む方のライフスタイルを向上させたり、年齢にともなうライフステージに合わせることや、建物の耐久性を持たすことをリフォームと呼ぶべきではないでしょうか?

リフォームの本当のメリットは?
同じ家に住み続けることによって、その家に住んできた「思い出」を残しつつ、新しい生活を続けられるようにすること。
今まで住んでいた経験を通して「住まい方」を振り返り、そこで生まれた不満や不都合をリフォームによって改善する事ができ、本当の意味での「自分の家」に替える事ができ家に対してさらに愛着が沸いてくる。
子どもができたり、あるいは車イス生活を余儀なくなったりと、ライフスタイルが突然変わった場合、自分のこれからの暮らし方を変えることになり、改修、修復が必要になります。これからの暮らし方を考えるなかで、「家」がどうあるべきであるかを真剣に考えることになり、それが「家」に対する愛着につながっていく。
リフォームとは、よりよい生活を目指して増築したり、改築・改装したりすること、と言えます。ライフスタイルを向上させる、ライフステージに合わせるために行われるリフォームには、単に家の老朽化などを理由とする改築にはない「夢」を持ちたいと思います。

設計者の資質が問われる大規模なリフォーム
通常の住宅のリフォームでは、建設会社やリフォーム業者の設計施工が多いです。実際、模様替えや簡単な修繕程度なら設計は必要ないこともあり、建築士のような資格がなくてもインテリアコーディネーターやリフォームマネージャーなどがプランを立てることでも充分可能です。
しかし、構造が絡むような増改築や改装のレベルになってきたときは、設備だけでなく全体的な機能性を考えられるか、住む人の将来の生活まで考えられるか、木構造について理解しているか。こうした点は、熟練した設計者でないと期待できない部分となります。
もちろん、建築士といってもピンからキリまでいますし、リフォームの経験の有無は重要なポイントとなります。ただ、設計施工ではリフォーム設計の資質を見極めにくく、それと同時に、工事業者では建て主側になって設計施工をすすめることが難しくなるときがあります。

リフォームはまずどこに相談したらいい?
住宅をリフォームしたい希望は、多くの人が潜在的にもっています。長年住んだ家であれ、住みはじめてみると、いろいろと手直ししたい個所が出てくるものです。そのため多くの人が、飛び込みの営業マンや、ポストに入っていたチラシに関心を示し、依頼してしまいます。これには「リフォーム工事の価格はそれほど高くない」「リフォームは手軽だ」「だれにたのんでも同じだ」という意識が手伝っているようにも思えます。
特に、最近テレビなどで報道される、悪徳業者によるリフォーム被害は、建設業者登録の要らない工事金額500万円以内のリフォーム工事に問題が多いようです。
家を手に入れるときには住宅展示場へ行ったり、建築家に話を聞いたりして情報収集していたのに、リフォームではそういう手順を踏まずに簡単に、訪問してきた業者に工事を依頼する……これは賢い方法といえるでしょうか?

建築家のなかにはリフォームを得意としている人も多くいます。依頼者の話をよく聞き、プランを練ってくれる建築家であれば、自分の希望をきっとかなえてくれるはずです。業者選びについても、工事内容に合わせて考えてくれます。

わたしたち建築家としては建築家に依頼するのがベスト、といいたいところなのですが、実際にはリフォームをやりたがらない建築家や、リフォームの経験がほとんどない建築家も多いですから、「いい出会いがあるかどうかがポイントになる」としかいえません。しかし、構造のことまで熟知しているのは、やはり木造住宅の設計経験の豊富な建築家以外にありません。大規模なリフォームになるほど、建築家に相談するメリットは大きいと言えます。