住宅の工事の際に検査をする項目シートです。
監理と管理の違い
私たち建築家が工事を管理することを・・監理と言います
施工会社の監督さんが管理することを・・管理と言います
お客さんが、建設会社やハウスメーカーに訪問した時「うちの現場担当者が管理します。設計事務所に監理してもらうと費用のムダですよ」とよく言われます。本当に大丈夫でしょうか?
建築家の監理
・工事が図面通りであるか、仕様書通りであるか、住宅金融公庫等の仕様書(標準的・一般的な工法仕様の定めたものー非常に大切です)に合致しているか、見積にあっている商品か?などを見ます。そのため工事の利益に係らない立場の人の人(建築家)の監理が望ましい。
施工会社の監督さんの管理
・おもな業務は、図面による工事の手配、工事の進み具合の管理、工事の段取りと手配、そして大切なことは会社の利潤の確保になります。一般的に図面の記載が少なく、監督さんの判断で工事の仕様・内容が決まります。
大切なことは監理者も管理者も、建築基準法による有資格者(1級とか2級建築士)でなければなりません。
建築家が入る建築家賠償保険では、監理指示・報告書作成は建築士有資格者でなければ、保険の対象になりません。無免許運転では交通事故の保険が効かないのと同じです。
欠陥住宅の裁判に関わっている知り合いの弁護士さんの話
平成17-18年 NPO団体が委託された「リフォームトラブル対策事業」で知り合った弁護士さんのお話で、「持ち込まれる欠陥住宅のほとんどが建築家や設計事務所が関与しない、建設会社の設計施工物件である」とのことでした。
この工事検査シートは、工事の進捗状態に応じて検査や確認すべき項目を整理し、まとめています。住宅金融公庫の個人住宅共通仕様書の中で重要な項目や、欠陥住宅を取り扱った書籍の中で、住宅の欠陥として指摘のあった個所とともに、当事務所の経験から工事中確認や検査をすべき項目をまとめています。
このシートのおかげで、現場での工事検査忘れがなくなり、工事の記録も整理しやすくなりました。施主さんにもこのチェックシートをお渡しし、わたしたちと施主さんとのコミュニケーションに役立てています。
監理検査チェック項目は車の12ヶ月点検や車検の時の点検項目のように、工事時期ごとに分かりやすくまとめています。
実際は各工事ごと図面により、より細かく確認・指示が行われます。
例・・基礎のアンカーボルトの取付け位置
- 2.7Mごとに設置
- 土台の端部に設置
- 筋交の取付く柱の土台両端部に設置ーないと地震の際柱・土台が浮き上がりねじれる
- ホールダウン金物の隣接個所に設置
- 土台継ぎ手の上部に設置 などあります。
設計事務所の工事監理はこんなに多くの項目について、検査や立会いをしています。工務店との工事請負契約時には、このシートを提示し、これだけは検査しますと伝えています。
こうした、監理の姿勢が欠陥住宅を防ぐ手だてにも役立ちます。ともすれば、設計より監理を軽視しがちですが、これだけの項目をご覧になると、監理の大切さが理解してもらえます。
通常、私の事務所では、住宅の監理は週1回程度で現場に行きます。
2000年施行の「住宅品質確保促進法」では、専門機関の検査官により工事中の住宅中間検査を3回程度受けることになりますが、3回ほど現場に行き、わずかな滞在時間で充分な検査できるとはとても思えません。すでに施工して隠れてしまっているヶ所やこのシートのように多くの重要な工事項目について、3回程度で確認・検査できたら神業と言わざる得ません。
やはり欠陥住宅をなくするには、しっかりした技術者(建築士)のいる、安心できる工務店さんで施工してもらい、できれば専門家によりしっかり工事監理してもらうのが一番です。
専門家に工事監理を依頼出来ない場合は、このシートを印刷して契約工務店にお渡しください。
そして、工事工程ごとに検査や確認日・確認者を記入し、提出してもらって説明を受けてください。このように検査日や担当者の記入欄があると検査せざるえません。
後から、紛争が生じた場合も重要な記録になります。
建て主さんは専門知識なくても記入(日時・確認担当者・項目)だけでも確認して下さい。高い確率で欠陥や食い違いが防げます。
多少嫌がられると思いますが、誠実な工務店さんならしていただけるはずです。私の事務所では工事を担当した工務店から逆にこのシートのコピーをくださいと言われることもあります。こんな建設会社は安心できます。
工事検査項目
一般事項
仮設工事
土工事・基礎工事−1
基礎工事−2
木工事−1
木工事−2
外部建具工事・設備工事
左官工事
造作工事
内外装工事
木製建具工事
塗装工事
設備工事
完了検査